青く深き王国

【序 昔語り】
   ~ Deep Blue ~
[青く深き王国]



 天が裂かれる。

 一瞬にして昇った雷光が閃き、雷鳴が轟く。

 風は天地を再び1つにするかのように逆巻き、荒れ狂う波は深い海底までもさらっていくような勢いで襲い掛かる。

 海が割れ、巨大な一角の獣は姿を現す。

 その咆哮に、天も海も従った。

 何もかもが獣の前にひれ伏し、等しく無に帰そうとしている。

 だが、僅かに残った岩場に一組の男女が寄り添い、獣の声に臆することなく立っていた。

 互いに握り締めた手には、まばゆく光り輝く剣があった。

 嵐の中、恐ろしい獣を前に、彼らは怯むことなくその剣を天に掲げる。

 一際大きく、獣は吼えた。

 抗うように。

 しかし、その声は漣の歌声によってかき消される。

 空は晴れ、海は凪ぎ、風はただ吹きすぎてゆく。

 青く澄み切った静かな海。

 そこにもはや獣の姿はない。

 獣に立ち向かった二人の影も……。
 


 【続く】
‡蛙女屋蛙姑。@iscreamman‡
WRITE:2005/09/08
UP DATE:2005/09/15(PC)
   2008/12/30(mobile)
RE UP DATE:2024/08/09
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