トミ子あばあちゃんも無休で働くわけにはいかず、おじさまも帰れない日曜日は真太郎くんと二人きりで過ごすこともある。(緑間邸におばさまは基本居るが物音一つ聞こえないのでノーカンだ)

真太郎くんは結構負けず嫌いなところがあって、まさきくんがこの間補助輪なしで園内を走っているのを見てから、緑間邸の庭でめちゃめちゃ練習している。

私は自転車の乗り方を知っているはずだが、幼女の身体に引っ張られて補助輪アリでも怖くてのれないので真太郎くんが転ぶ以外で怪我をしないように近くで見守る。


「なんで進まないの！！」

「真太郎くん、いっかいこっちで休みましょう？きっと疲れているから倒れちゃうの。」


可愛い頬をふくらませて自転車を置いた真太郎くんはこちらに走った。

このままだと真太郎くんはあそこの芋虫を踏んづけるので慌てて横に移動する。


汗だくの彼を用意していたタオルで拭いてあげると体重をかけてのしかかってくる。

そのままふたりできれいに敷かれた芝生に倒れ込んだ。


「お休みしたら、明日にはのれるとおもうの。」

「今乗りたい！なのだよ！」

「真太郎くんは足も速いしジャングルジムも上まで登れるから。今日は戻ろうよ。ね？」


真太郎くんはまだ納得していないように、私にすがりついて足止めしてくる。

二人でくっついているととても暖かくて、まだ日もでているのでうっかりこのまま寝てしまいそう。


「夢子、僕も乗れるのだよ。…まさきくんは、すごくない…だよ」


そう言って真太郎くんは身体から力を抜いてしまった。

呼びかけても反応がなく、やわらかくて暖かい子供が半身乗っているため私も動けなくなってしまった。

こんなとき、せめて昔の老体であれば彼を家まで運んであげられたのだが、いまの身体では一人で起き上がることもできそうにない。

結局、このあと私も睡魔に誘われてしまった。