いまの状況については悩まないことにしている。

もしかして心残りが会ったから幽霊になってしまったのかとか、気がつかない内に重い罪を重ねてしまっていてだから成仏してないんじゃないのかとか考えたけれど、今がつらいかと聞かれれば迷いなく首を横に振れる。

だれかの気まぐれか運命か、新しい居場所をもらってこんなにかわいい子供と過ごすことができる。

この生まれ変わりの意味が分かるまでは、私のできるように過ごしていくしかない。


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私の母は元気になってからほぼ私と過ごすことがなくなり私を身ごもる前から働いていた研究所で日夜犯罪者の痕跡を探している。

すぐ近くに住む緑間邸では週7日ぐらいお世話になっているのだけれどこちらの家庭環境も正直私の中では違和感が拭えない。

真太郎くんのお母様(おばさま)は音楽関係のお仕事のようでしょっちゅう防音室にこもってしまうので、幼稚園から帰ってきて次の日まで会わないことがざらにあった。

お父様(おじさま)はお医者様らしく論文に手術に学会に講義にと大変忙しくされている。

おじさまは緑間邸に帰ってくると真太郎くんと私に本を読んでくれたり、キャッチボールを真太郎くんとしてくれたりおばさまに人間的な生活を促したりと私たちの周りの大人の中でもっともまともな大人だ。

そんな環境で私たちが無事に過ごせているのは彼らが雇った家政婦のトミ子おばあちゃんのおかげ。

トミ子おばあちゃんは炊事洗濯そして育児と緑間＆夢宮家のほぼすべてをこなす実の母親より近い存在だ。


「真太郎くん、鬼ごっこ速かったね。すごいわ。」

「ふつうなのだよ！明日は夢子も一緒に逃げるのだよ」


真太郎くんは最近おじさまの真似をして「なのだよ」をよく言っている。
おじさまはおばさまといるときしかそのようなしゃべり方をしないが、それをみていた彼にはなにか刺さったらしい。

真太郎くんのかわいい口癖にトミ子おばあちゃんと一緒にニコニコしてしまう。