「真太郎ちゃん～、夢子ちゃん～、お迎えのバスが来ているわよ。」

「うん、行こう夢子」

「真太郎くん、お帽子忘れているわ。」


ベビーベッドからずっと隣にいる彼の名前は緑間真太郎くん。

真太郎くんはあの緑色の男性と同じ色彩を持っている女の子もかくやといわんばかりの紅顔の美少年だ。

そうそう、はじめに驚いたこの緑色あたまは、じつはそんなに珍しいものではないみたい。

ここは前にすんでいた日本とよく似ているが、赤色や青色の髪や眼をもつ日本人がたくさん過ごしていて、一番有名なファストフードのハンバーガーが「マジバ」バーガーという名前だったり、ブランコや滑り台がある公園と同じくらいバスケットゴールが目に付いた。

バスケットゴールがたくさんあるのは、この近所だけなのかも知れないけれど。

私も私の母も違和感を抱かない黒髪でとても馴染みがあるし、櫛を通すだけで絹糸のようにまっすぐ流れるこの髪をわたしはすごく気に入っている。

ちなみに真太郎くんのお父さんが緑色でお母さんは黄色(金髪ではなく黄色だ)だったので真太郎くんはお父さん似のよう。


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真太郎くんとずっと一緒にいるのは母が忙しいからとか遠いけど親戚だとか家庭の事情もあるけれど、一番の理由は目を離すと死んでしまうのではないかと思うほど危なっかしいからだ。

べつに真太郎くんは特別やんちゃというわけでもないのに(むしろ周囲の子や前の子供達と比べたらお利口さん過ぎるくらい)、なぜか彼らよりも泥だらけになったり傷だらけになったり危ない大人に追いかけられたり。
不運という星の元に生まれてきたかのようだ。

だからできるだけ外にお散歩に行くときは手を繋いで、鳥が止まっている場所を迂回したり、落ち葉で滑りそうな坂道を避けたり、引率する保母さんの近くで行動することにしている。

これで少しは彼の擦り傷汚れを防げているといいのだけれど…。