[麗音]音遠戦
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いよいよ敗北だけでは済まされない状況に陽炎が叫ぶ。
「まずいわ! このままではショック死をしてしまう!」
風子も烈火も必死に声を張り上げた。
「起きろ土門! あんた死んじゃうよ!?」
「土門、騙されんな!! 早く起きろ!!」
しかしどの声も土門には届かない。
音遠は口角を上げる。たとえ◯◯の仲間であろうと、弱く下品な男など排除しても構わないと思っていた。せめて楽に死ねるよう、亜希にとどめをさすよう指示を出す。
しかし、カツン、とヒールブーツを鳴らした
◯◯が前へ出た。
『起きなさい土門くん! 風子のキスが欲しくないの!?』
皆がぎょっとして◯◯に注目する。
名指しされた風子も目を剥いた。
「ちょ、ちょ、ちょっと◯◯さん? 急に何を言ってんだい?」
『だめだった? ご褒美があった方がいいと思って。それにほら、効果があったみたい』
指をさすその先で、あれほど熱い苦しいともがいていた土門が思考停止していた。キスという単語に刺激され、かかっていた幻術が途切れたのだ。
効果ありと踏んだ風子も猫撫で声を出した。
「起・き・ろ、土門! そしたらキスしたげる」
すると土門は雄叫びを上げて覚醒し、驚く亜希へ向かって炎の幻影を返して投げた。
ドン……ッ!!
幻影を返されても己には効かないと油断したばかりに、亜希は
土門は幻覚の中に本物の武器を紛れさせて投げたのだ。
血を吹いて倒れた亜希はKOとなり、審判により土門の勝利が高らかに宣言された。
***
待機場にて風子は盛大に顔を引きつらせる。
目の前に頬を赤らめて今か今かとご褒美のキスを待つ土門の顔面が迫っていたからだ。
すがるように◯◯へ視線をやれば、彼女はすでに水鏡の後ろに隠れている。
「ど、土門、あれはさぁ……わかるだろ? そんな本気にする事じゃ」
「ウソじゃねえよな!? オレは信じてるぞ!!」
哀れなほど必死に詰め寄る土門に、烈火が半開きの目を風子に向けた。
「いいじゃんキスくらい」
「てんめーっ!! 他人事だと思って! そもそも言い出しっぺは◯◯なのに!?」
『そ、そうね。それは本当に申し訳ないわ。ごめんなさい、風子。ええと……頬でよければ、私も協力するけど……』
途端に土門の目がきらんと光る。風子だけでなく◯◯からもご褒美が貰えるのだと想像し、鼻息がより荒くなった。
「◯◯姉ちゃんオレやだよ! おねがいやめて!!」
即座に小金井が◯◯の脚にしがみつく。
そしてなぜか観客達もよしとせず、怒号が飛び交った。
「てめえコノヤローー!! 女いじめてんなよゴリラ!!」
「大した勝ち方してねえくせに調子乗ってんじゃねーぞ!!」
だがのぼせた土門の耳には入らないようで、鼻の下を大いに伸ばしながら風子と◯◯の間にひざまずき、いつでもどうぞ、と目を閉じて待っている。
どうしたものかと◯◯は頭を悩ませた。
土門が風子を慕っているのは一目瞭然。その熱烈なアプローチに風子もまんざらではないと感じてはいた。キスは口に限定した言い方をしたつもりはなかったが、それでもまだ荷が重かったと思い直す。
実際、唇をすぼめて待つ彼を、恐ろしいものを見るような目で風子はどん引いている。
(この責任は私がとらないと……)
◯◯は意を決し、顔を上げた。
『風子、よく見ていて。土門くん、恥ずかしいからそのまま目を閉じていてね。…………水鏡くん、ごめんなさい』
ゆるく首をかしげた水鏡の、その胸ぐらを掴んで思いきり引き寄せ、土門の頬へ彼の唇を押し付けた。
「「――――ッッ!?」」
声にならない悲鳴が周囲を覆い尽くす。
度肝を抜かれた風子もすぐにはっとして、隣にいた小金井を引っ掴むと、土門の額へ同じく押し付けた。
稲妻のような戦慄が水鏡と小金井の体を突き抜け、即座に後ろへ引き下げられる。
そんな事を知らない土門は、魂をとろかしたような恍惚とした顔で瞳を開いた。
「◯◯と風子のクチビルーーっ、なんて柔らかいんだ!!」
歓喜に飛び上がるその後ろで、顔面蒼白の水鏡と小金井が膝を崩すのは同時だった。
「う……っ」
「うっ、うあ……うわあああん……」
そうしてしばらく、水鏡は立ち上がれず、小金井の泣き声が響き渡った。
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