動き出した歯車
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「おっそーーい!! ◯◯どこ寄り道してたのよ! まさかまたナンパされてたとかじゃないでしょーね!」
『ごめんね
「烈火、お前◯◯に何もしていないだろうな?」
「するわけねぇだろ! というか
そう烈火が怒鳴る横で、
「小せえことは気にすんなよ! 早く◯◯も食え食え! 大量に菓子あるからよ!」
『ありがとう。柳ちゃん、となり座っていい?』
「うんいいよ! 花火楽しみだね、◯◯ちゃん!」
花菱家ではすでにいつものメンバーが揃っていた。◯◯がこれまで築いてきた中で最も信頼できる仲間達であり、時にはライバルとして互いを高め合う存在でもある。賑やかで明るく、何よりも得体の知れない自分を受け入れてくれた彼らが◯◯は大好きだった。
夜になり、烈火が張り切って裏山へ向かう後ろで、風子が柳のお尻を軽く叩いた。烈火には聞こえないよう何やら耳打ちをしている。
「そんじゃ柳、頑張ってくるんだよ」
「え?」
「あいつはオクテだからね。あんたが行動しな! 恋人達の邪魔者は消えるわ」
手を振りながら離れる風子に、土門もニヤけながら後に続く。察した◯◯も立ち止まり、水鏡もやれやれと呟きながら踵を返した。元より烈火と柳を残して皆は帰るつもりだったようだ。
「わ、私は別に恋人を望んでるわけじゃないのにっ……今のままでも充分幸せだもん……」
後ろ手に聞こえた柳の言葉は、不意に胸を締め付けた。
だが振り返る事はせず、◯◯は足早にその場から離れた。
無意識に、左手の指輪に触れる。
わかるよ、私もそうだった
今のままでも幸せだと
あの頃はそれだけだった
風子らとも別れ、独りになった所で夜空を見上げる。
こんな澄んだ夜はとくに思い出す。月を眺めながら待っていた日々を。考えない日はないけれど、私達と鏡映しのような二人を見ていると無性に泣きたくなるのだ。
ごめんね
置き去りにしたのは私なのに、毎晩謝ってばかりいる
こうしている間にもあなたは苦しんでいるというのに
ごめんなさい
見上げた先、一筋の光が打ち上がる。大きな音と共に色とりどりに飛散し、暗闇を鮮やかに照らした。
そして◯◯の瞳からも涙がこぼれ落ちた。
会いたい
会いたいよ