私の最愛
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今日はかなりの人数をこの手で殺めた
殺すことに躊躇はないが
部屋に帰って仮面を取るたび
血生臭い体に吐き気がした
深夜、帰還して早々に黒衣を脱ぎ捨て、シャワーにうたれながら掌を見つめる。
何度流しても、この手の汚れは決して落ちないと知っている。
簡易な服に着替えリビングへ戻ると、いつの間にか来ていた◯◯が温かいお茶を用意して待っていた。
『おかえりなさい』
時々、息の仕方を忘れそうになる。そのたびに彼女を見て思い出すのだ。私は彼女に会うために生きて帰るのだと。
「その格好でバルコニーから来たのか? 何か羽織るようにといつも……」
彼女に触れようと伸ばした手が、真っ赤に染まっていると錯覚し、身体が強張った。
『紅麗……?』
「……あぁ、なんでもない」
紅麗はクローゼットへと向きを変え、◯◯に羽織らせるガウンを探した。後味の悪い仕事の後はいつも、彼女に触れる事が躊躇われる。
ガウンを見つけて手に取ると、背中に軽い感触が当たり、華奢な細腕が腰に巻きついていた。彼女なりに何かを感じ取っているのだろう。こうして温もりを分け合おうとするのだから。
ガウンを広げて◯◯の肩にかけてやり、愛おしい存在を抱きしめた。
秘密の逢瀬を続けて数年。このとき紅麗は17歳、◯◯は15歳へ。
子供から大人へと成長するにつれ、友人から恋人へと移り変わり、こうして会える隙間を見つけては、ひっそりと愛を育んだ。
二人でベットに移動してから、開け放たれた大きな窓から月夜を眺める。
◯◯は紅麗の胸に頭を預け、紅麗は彼女の指通りの良い髪を撫でた。
「……そろそろ、こうして周りの目を盗んで会うのが難しくなってきたな」
子供の頃は、しばらく姿を見せなくてもとぼければそれで済んでいた。だがそれも徐々に明確な理由が必要となって、特に◯◯の周りには使用人や護衛が付いており、彼女の行動は常に誰かが把握している状態だった。
だから二人で会う時は皆が寝静まった夜が多い。
『今よりも会えなくなるの?』
こちらを見上げる不満気な瞳に紅麗は微笑み、淡い栗色の髪をひと撫でする。
「信頼できる者を見張りに付けようと思う。……雷覇は、口には出さないが、私達の関係にうすうす気付いてる。力関係も申し分なく、忠義に厚い男だ」
『なら私にも信頼できる付き人が欲しいわ! 誰か女の人で……音遠はどお?』
「雷覇だけで充分だと思うが」
『雷覇だけ昼夜働かせるのは可哀想よ。それに音遠なら侍女として私のそばにいてもらえるし、女同士の方が気兼ねなく相談できる事もあるでしょう? あ、それから、薫もいいわよね?』
「……最小限にしないと、リスクが増えるだけだ」
『でもいざとなったとき、味方は多い方がいいと思うの』
小さく息を吐いた紅麗の、観念した優しい眼差しに◯◯は頬を緩めた。
紅麗を心配し支えようとしてくれる者達がいても、紅麗は孤独に戦う事を選ぶ。線を引いて必要以上に踏み込んでくる事を拒んでいるのだ。
そんな彼も、長い時間をかけて信頼できる家臣を受け入れようとしている。人に絶望した彼が、人との繋がりを再び手にしてみようと。
『力になってくれる人が増えたら心強いと思う。寂しくなる事も減るかもしれない。傷ついた時には共に寄り添い、支えてくれる。きっと助けてくれる。そんな優しい人達との繋がりを、もっと紅麗の周りで溢れたらいいと思う』
「同じ言葉を、お前に返そう。私が変われたのだとしたら全て◯◯のおかげだ。だから必ず叶えてみせる。共に、自由になれる日を……」
共に生きる事を
かけがえのない
唯一のあなたと