紅麗の館
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『やめて!』
おぞましい空気を打ち払うように、切迫した声が鳴り響く。
紅麗は仮面の下で大きく目を見開いた。
聞き覚えのあるその声は
愛して止まなかった
一番大切な人の声――
腕を下ろし出入り口の方へ振り返ると、まさに長年探し求めていた彼女が、痛みに耐えるような表情で立っていた。
覚悟していたとはいえ、実際に紅麗の姿を目にした◯◯は込み上げる感情を押さえ込むのに必死だった。だが地面にひれ伏す烈火達を見やり、きっと前を向く。
『佐古下柳を外に連れ出してもらうよう薫に命じたわ。返してもらえれば戦う理由はない。みんなにはこれ以上、手出ししないで』
"命じた"と伝えたのは、小金井に
紅麗からの返答はなく、仮面の下の表情も伺えない。緊迫した沈黙の中、紅麗は◯◯の方へ一歩踏み出した。
◯◯は体を強張らせるが、紅麗は構わずして足を止めない。
「ま、待て! オイ、止まれ!!」
烈火が叫びながら体を引きずる。倒れている他の皆も逃げるよう叫ぶが、◯◯は紅麗から視線を逸らす事も動く事もできなかった。
烈火は最後の手段である腕の鉄鋼を外した。それは今まで強すぎる力を封印していたもの。
「う、ぐぉぉあああぁ!!」
解放された力は凄まじい勢いで燃え盛り、烈火の断末魔とともに八頭の炎の竜が流れ出た。
ゴオオォォオオ
弱者には視線すら向けなかった紅麗がここで初めて振り返る。
烈火の制御を振り切った一匹が、紅麗に向かって襲いかかった。紅麗はすかさず紅で対抗したが、容易く打ち抜かれ激しく壁へ衝突する。
◯◯が咄嗟に呼んだ紅麗の名は、崩れる瓦礫の音に掻き消された。
一匹の竜でこの破壊力。それが八匹も生み出されており、全員が愕然とする。
絶叫のような咆哮に耳を塞ぎたくなる中、次は◯◯と竜の視線が交差した。先程紅麗を一撃で仕留めた竜だ。
咄嗟に水鏡が叫ぶ。
「逃げろ◯◯!!」
大口を開けた竜が彼女に突進した。
逃げ場はない。◯◯は即座に背負っていた武器――己の身長ほどの長い刀を取り、迎え撃つ姿勢を取る。
勝てるとは思えない、だけどせめて生き延びなければ
きっと大きな代償がつくだろう
それでも、こんなところで私は――
泣き叫ぶような風子の悲鳴を最後に、凄まじい威力の炎が◯◯と衝突した。
ドオオォォオォン
みんなは爆風に飛ばされないよう頭を抱える。
先程よりも強い衝撃が壁を突き抜け、大きな穴を開けていた。ガラガラと破片が落ち、濃い砂埃が視界を遮った。
だがその中に、二つの影があった。
◯◯は、紅麗の腕の中に包まれていたのだ。