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白衣と眼鏡と落ちこぼれ教師

「……前に、言ってくれたよな。向き合うから、って。だからお前も学校から逃げるな、って。」


中河は俺の言葉にグッと下唇を噛み締めると、意を決したようにこちらを向く。


「向き合うってことは、教師としてお前のことから逃げない、ってことだよ。お願いだ、わかってくれ」

駄々をこねる子供をあやすような言葉に、頭にガツンと殴られたような衝撃が走る。


………つまりそういうこと……。


中河にとって、俺はどう足掻いても一生徒でしかなく、それ以上にもそれ以下にもなれないってこと。

答えは要らない、と綺麗事を言ったところで、中河を悩ませていた、ということ。


分かり切っていたことだ。それでも中河は俺の気持ちを尊重しようと、向き合おうとしてくれた——先生として。


——俺が中河にとって大切な“生徒”だから。



悪い空気を切り裂くように、ガチャリと車の扉が開かれ、早瀬、原田、佐伯が慌てて入ってくる。

「すみません、遅くなりました!」

「卓也がトイレしてて、遅くなりました、すみません!」

「っちょ、佐伯!嘘言うなよ!」


騒々しい三人に俺は反応することも出来ずに前を向いていたが、中河はいつもの調子で

「おー、全員揃ったな、行くぞー」

と明るく言い、車を発進させた。

その温度差に俺は自分の気持ちが、じわじわと落ち込んでいくのを感じていた………。


________


車は近くのレストランの駐車場に着き、ぞろぞろと全員が車から降りていく。
流れるままにレストランに入ろうとした時に、ぐいっと背後から二の腕を掴まれ立ち止まる。

「金剛、ちょっとだけ、いい?」

心配そうに俺の顔を覗き込んできたのは、早瀬だ。

「…え、あ、ああ」

できる限り平静を装い答える。他の三人は俺達を一瞥し、「先行ってるぞ」とレストランに入っていく。

「……大丈夫?」

「っえ、何がだよ?」

俺の返事に早瀬はわずかに眉間に皺を寄せる。

「金剛、さっき俺達が来る前に、中河先生と何かあったんでしょ?」

察しの良過ぎる早瀬に何も言えなくなってしまう。

さっきあったことは、まだ言葉にできるほどに自分の中で消化されていなくて………

「……ごめん。今まだ話せない。後でもいいか?」

「……そっか……わかった。」

早瀬は腑に落ちない様子だったが、話したくない俺を理解してくれたようで、

「行こっか」

とレストランの入り口へ向かう。

俺は消化し切れない感情を持て余したまま、早瀬の背を追った。
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