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白衣と眼鏡と落ちこぼれ教師

青く晴れ渡った空、太陽は段々と日差しを強めていく。

次の日俺は朝から学校に来ていた。

なんとなく来てみる気になった俺は、授業開始5分前から理科室に着き、教科書まで出している。ちなみに一限は休んだ。


そんな俺の真面目な様子に周りは怪訝な顔をしている。


チャイムが鳴り、中河が入ってくる。

ちら、と上げた視線がぶつかって、一瞬だけ中河がふ、と笑った。

俺はいつも不機嫌そうな中河の穏やかな笑顔にどきっとして、すぐにふいと視線を逸らした。

……なんだ、どきって。自分で思って自分自身に鳥肌が立つ。

教壇に中河が立ち、口を開いた。

「えー、今日から新しい単元に入るぞ。じゃあ53ページを開いて……」


初めて中河の授業を受けるからか、遠くで聞こえる声が不思議な感じだ。

いつもは、真ん前で、近くで、中河は俺に教えるからだろう。


中河は背中を向け、黒板にチョークで白い文字を書いていく。
中河らしい、綺麗に整った字だ。俺のぐちゃっとした汚い字とは全然違う。

かちかち、とシャーペンの芯を出し、ノートを取る。

中河の綺麗な字を見つめ、書き写す。

白い白衣に包まれた広い背中。遠くから見ると中河は線は細いが背が高い。チョークを握る手は骨張って大きく、まだ成長過程の俺とは違う、大人の男なんだと改めて思った。

じっと見つめていたら、黒板に書き終わった中河が振り向いたので心臓がドクドクとせわしなく音を立て始める。

ばちん、と視線が合う。


ノンフレームの眼鏡の奥の黒く澄んだ瞳、センター分けの黒い髪。なに、という感じにきょとんとした表情に、目を離すこともできず、より心臓が速まる。


ふいと視線を逸らし、シャーペンを走らせる。


ちら、と視線を戻すと、教科書に目線を落としている中河の姿が目に入った。

心音を抑えるようにぎゅっと胸の辺りを握りしめ、頭を軽く振ると、ノートを取る作業に集中した。

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