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白衣と眼鏡と落ちこぼれ教師

ひとしきり川遊びを楽しんだ後、少し疲れた俺たちは今日泊まる予定のコテージへと一旦向かうことにした。


荷物をトランクに積み込み、車に乗り込む。助手席には佐伯、後ろの席に俺、早瀬、原田の順だ。運転席に座った中河が「全員乗ったか?」と後ろの席を確認し、出発した。


「中河先生とゆっくり話せた?」

隣に座った早瀬が少し嬉しそうに、前の中河に聞こえないようにこっそり俺に耳打ちする。


「あ、ああ」


久しぶりに話せた、のは良かった。
……けど、内容は良かったのか正直わからない。中河は俺に過去に起きた、生徒との事件を語った。それは何とも今の俺の状況とかぶるような話で。


そして、俺の手を握った中河の、

「…もう、無視できねぇんだ。」

という一言と切ない表情。


どう捉えたらいいのか………


あまり芳しくない俺の表情と受け答えに、隣の早瀬が心配そうに見ていることに気づいて、俺はまとわりつく思考を振り払った。


________



数十分後、コテージへのチェックインが済み、皆どこのベッドに寝るのかという話になった。

コテージは2階建てになっており、1階部分は浴室、トイレとリビング兼ダイニングルーム。2階に寝室が2部屋。2つのベッドがある部屋と3つのベッドがある部屋だ。

2つのベッドがある部屋のうち1つのベッドは他のベッドより少し大きいセミダブルサイズになっていて、最年長者であり運転で疲れているであろう中河がそこを取ることは決まった。




———つまり、誰が中河と“二人きりで”寝るのかという話だ——。



「けーすけ、一緒に寝ようぜ!俺、クラスも違うしさ、こんな時しかいっぱい話せないしさ!滋はいーじゃん、いっつも圭介と話してんだからさ!」


と、強引に原田が話を進めてくる。しかも早瀬に対抗してか、少しぶすくれた表情だ。こんな調子の原田に捕まって一晩中話を聞かされるようなことになれば、疲れも取れない気がする。
だけど、3人部屋を取れば昼間気まずい雰囲気になった中河と同じ部屋か………

ちらりと中河の方を見ると、勝手にお前らで決めてくれ、という素知らぬ顔でリビングのソファーに座ってテレビのチャンネルを回していた。


「俺3人部屋でいいからさ~、3人でどうするか決めてよ~」

佐伯はのんびりした口調でそう言うと、自分の荷物の整理をしに行ってしまった。


「うーん、俺はどっちでもいいんだけど、金剛が、ねぇ?」

と早瀬。

……どういう意味だよ、と少し早瀬を睨む。

俺の視線に早瀬は苦笑すると、思案するように天井のシーリングがくるくる回るのを見ている。

何かと俺と中河のことを心配してくれている早瀬のことだ。さしずめ俺を中河と二人きりにすべきか、離すべきか、どちらがいいのかを考えているのだろう。

目の前の原田は俺が首を縦に振るのを待っているかのように、じっと見つめてくる。
ハァ、と一息吐き、俺はこの煮え切らない状況に終止符を打つことにした。

「俺、2人部屋行くわ。」

「えーーーっ!!!」

不満そうな原田の声が吹き抜けの天井に響いた。
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