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白衣と眼鏡と落ちこぼれ教師

夏休みに入って数週間が過ぎ、日を追うごとに文化祭準備参加者は減っていき、残念ながら文化祭の準備はあまり進んでいなかった。


が、そんなことも吹き飛ぶような目の前の大自然に俺は小さく「おぉ...」と感嘆の声を上げた。


目の前には透明に近い程透き通った川、その奥にひんやりとした冷気が流れてくる森林、山。夏を謳歌するのに最高のシチュエーションだ。


「川、すごい綺麗だな…」

遅れて車から降りてきた早瀬が俺の隣に立つ。

「さいっこーうじゃん!!」と原田が言えば、「いい写真とれそう~」と佐伯が後に続く。


「おーい、お前ら自分の荷物持ってけよー」


そう車から叫ぶのは中河だ。



ーーそう、何を隠そう俺たちは写真部の夏合宿に来ていたーーー。



川沿いにはもう既に多くの人がバーベキューや川遊びを楽しんでいた。その一角の空いたスペースに俺、早瀬、原田、佐伯、そして中河は各々の荷物を抱えて降りて行った。


写真部の夏合宿、というのは殆ど名目上で、普通にレジャーも楽しむことになっている。カメラを持っていない俺は何もできないが、明日の朝は森林散策、カメラ撮影の予定である。


「俺、いっちばんっ乗り~~!!」

と原田が走って行く。既に海パン一丁になり、右手には浮き輪だ。その背を追いかけて佐伯も「負けるか~」と走っていく。


「っ原田、コケるぞ!」

と普段よりも幾分かテンションの高い早瀬も二人の後を追った。


「………」


中河と二人取り残され、一人気まずさを感じていた。

ちら、と後ろでレジャーシートを敷いている中河に目をやる。
いつも白衣にスーツ姿だからか、私服の中河は新鮮だ。黒いタンクトップの上からさらっと羽織ったリネンの白シャツに、ジーンズというカジュアルな中河の出で立ちに、胸がキュッと少し締め付けられるような感じがしたーーー。



……あ、俺やべーかも。好き、かも。ていうか、いつもより中河がキラキラして見えるのは、気のせいか…?


そうときめいてからすぐに、最後に会った時のことが脳内で反すうされ、

…そうだ……、中河は俺を避けてるんだった……

すぐに俺は現実へと引き戻された。鉛をのみ込んだように胸が重たい。それでも、いつもよりかっこよく見える中河から目が離せずにいると、俺の視線に気づいた中河が顔を上げ、視線が絡み合う。


中河の目に少し動揺が走ったような気がした。俺は目を離すことも何か言葉にすることもできずに、じっと中河を見つめ返す。


ぐっと拳を握りしめ、決心した俺は口を開く。

「なかが、」
「圭介」

二人同時に発せられた言葉に、お互い目を見合わせ、

「「ふっ」」


二人の間にあった緊張感と気まずさが解けた瞬間だった。
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