白衣と眼鏡と落ちこぼれ教師
「ん?何だこれ。」
渡されたプリントには「夏合宿参加申込書」と書いてある。
「わー!めっちゃ楽しみだよなー!今年は山だぜ!川だぜー!圭介いっぱい遊ぼーな!」
隣で原田が騒いでいる。どういうことだ……
ちらりと早瀬を見れば、満面の笑みを浮かべていた。
すっげー楽しそうだな…おい。
「これ、俺から金剛へのサプライズプレゼントだよ。文化祭準備、参加したらいいことあるって言っただろ?」
いつも無表情だが、今日は楽しそうに子供みたいな顔でにこにこ笑っている。
……そういうことだったのか…。
「サンキュ、けど、俺部員でもないのに大丈夫なのか?写真とか撮れねーし……」
心配になってそう聞く俺に、
「全然おっけーだし!つーかむしろ来て欲しい!なー、滋!」
始終はしゃいでいる原田が嬉しそうに言う。
「毎年自由参加で、部員数少ないから、全然集まらないんだよ。だから今日、先生に聞いてみるけど、多分大丈夫だよ。」
早瀬はにっこりと笑う。
「そっか…ありがとな。本当嬉しいわ。」
早瀬につられて笑顔でそう言えば、耳元で
「中河先生も同行するんだよ。だから、プレゼント。」
そう返された。
「は?ちょ、早瀬っ、お前そういう意味で、」
焦る俺に早瀬はニヤリと口許で笑う。
そこでガラリと部室の扉が開いて白衣を着た中河が入ってくる。
「あ……」
そう言えば中河と会うのすごく久しぶりだ……
相変わらず神経質そうなその顔が俺を目に止めた瞬間、一瞬固まったように見えた。
「お前…何してんだ?」
冷静な中河には珍しく困惑した表情で俺から視線をすっと離し、問うように早瀬を見る。
「あ、先生。お願いしたいことがあるんです。」
「なんだ…?」
中河は訝しげに早瀬を見下ろす。
「金剛くんを夏合宿に参加させて欲しいんです。」
「…は?」
驚いた顔で中河は眉をひそめる。
「金剛くんは、夏合宿の間、うちの部を手伝いたいそうです。」
そう言う早瀬に腕を引っ張られ、原田にも背中を押されて、中河の前に出る。
「…お、お願いします。」
上目遣いに中河の顔を伺えば、つい、と視線を逸らされた。一瞬合って離れていったその瞳を追うが、もう一度目が合うことはなかった。
「まあいいけど…今年、参加者どのくらいだ?」
中河は早瀬に向き直り、さらりと俺の話を、了承するという形で流してしまった。
「えーと…佐伯と原田と……」
そのまま中河と早瀬は何やら合宿のことについて話し出したので、俺は話に付いて行けず、原田と佐伯の座る机に戻った。
「よかったな!圭介!おっけーだって!」
子供みたいにはしゃぎながら原田が言う。
「…ああ…みたいだな…」
「これで夏休みの楽しみが一つ増えたねー」
佐伯が緩く笑う。
……何で中河と目が合わねえんだろう……。
早瀬と話す中河の横顔にチリチリと胸の奥が痛む。
何かあったのかな、中河。長い間会わなかったことで、まるで距離が出来たみたいだ……
俺はくしゃりと前髪を掴んで、びっくりするぐらい中河の動作一つに左右されている自分を鼻で笑った。
渡されたプリントには「夏合宿参加申込書」と書いてある。
「わー!めっちゃ楽しみだよなー!今年は山だぜ!川だぜー!圭介いっぱい遊ぼーな!」
隣で原田が騒いでいる。どういうことだ……
ちらりと早瀬を見れば、満面の笑みを浮かべていた。
すっげー楽しそうだな…おい。
「これ、俺から金剛へのサプライズプレゼントだよ。文化祭準備、参加したらいいことあるって言っただろ?」
いつも無表情だが、今日は楽しそうに子供みたいな顔でにこにこ笑っている。
……そういうことだったのか…。
「サンキュ、けど、俺部員でもないのに大丈夫なのか?写真とか撮れねーし……」
心配になってそう聞く俺に、
「全然おっけーだし!つーかむしろ来て欲しい!なー、滋!」
始終はしゃいでいる原田が嬉しそうに言う。
「毎年自由参加で、部員数少ないから、全然集まらないんだよ。だから今日、先生に聞いてみるけど、多分大丈夫だよ。」
早瀬はにっこりと笑う。
「そっか…ありがとな。本当嬉しいわ。」
早瀬につられて笑顔でそう言えば、耳元で
「中河先生も同行するんだよ。だから、プレゼント。」
そう返された。
「は?ちょ、早瀬っ、お前そういう意味で、」
焦る俺に早瀬はニヤリと口許で笑う。
そこでガラリと部室の扉が開いて白衣を着た中河が入ってくる。
「あ……」
そう言えば中河と会うのすごく久しぶりだ……
相変わらず神経質そうなその顔が俺を目に止めた瞬間、一瞬固まったように見えた。
「お前…何してんだ?」
冷静な中河には珍しく困惑した表情で俺から視線をすっと離し、問うように早瀬を見る。
「あ、先生。お願いしたいことがあるんです。」
「なんだ…?」
中河は訝しげに早瀬を見下ろす。
「金剛くんを夏合宿に参加させて欲しいんです。」
「…は?」
驚いた顔で中河は眉をひそめる。
「金剛くんは、夏合宿の間、うちの部を手伝いたいそうです。」
そう言う早瀬に腕を引っ張られ、原田にも背中を押されて、中河の前に出る。
「…お、お願いします。」
上目遣いに中河の顔を伺えば、つい、と視線を逸らされた。一瞬合って離れていったその瞳を追うが、もう一度目が合うことはなかった。
「まあいいけど…今年、参加者どのくらいだ?」
中河は早瀬に向き直り、さらりと俺の話を、了承するという形で流してしまった。
「えーと…佐伯と原田と……」
そのまま中河と早瀬は何やら合宿のことについて話し出したので、俺は話に付いて行けず、原田と佐伯の座る机に戻った。
「よかったな!圭介!おっけーだって!」
子供みたいにはしゃぎながら原田が言う。
「…ああ…みたいだな…」
「これで夏休みの楽しみが一つ増えたねー」
佐伯が緩く笑う。
……何で中河と目が合わねえんだろう……。
早瀬と話す中河の横顔にチリチリと胸の奥が痛む。
何かあったのかな、中河。長い間会わなかったことで、まるで距離が出来たみたいだ……
俺はくしゃりと前髪を掴んで、びっくりするぐらい中河の動作一つに左右されている自分を鼻で笑った。