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白衣と眼鏡と落ちこぼれ教師

教室に戻ると、待ってました、という顔で教室の窓側に集まった企画班の奴らが顔を上げた。

羽生と目が合い、にこりと柔らかく笑いかけられる。

「金剛くんこっちこっち」

さっきの相沢のことがあってかなり苛々していたが羽生の笑顔にちょっと癒される。自分を落ち着かせて皆の集まっている机に近付いた。

「悪い。待たせた」

ガガッと音を立てて椅子を引き、どかっと豪快に座ると、輪になって座っている全員の視線が俺に向く。何だろう、と顔を上げたまま固まった。

「…金剛くん怒ってる?」
「金剛何かあった?」
「どうした?」
「…金剛くんどうしたの…?」

と心配そうな顔で皆に一斉に聞かれ苦笑してしまう。
そんなに苛々が出てしまっていたのだろうか。

「本当何もねえって。」

極力優しくそう言えば、皆渋々ながら視線を逸らす。

俺の動作、行動、一つ一つに反応して、声を掛けてくれるということが、何だか嬉しかった。
今までは俺にビビって関わらないようにする奴ばかりだったから。

「え、とじゃあほとんど案は固まってきたからおさらいね。」

羽生が話を始める。

「録音の簡単な機械は学校に貸して貰えることになったんで、ほぼ出来上がってる台本を元に来週から進めていくからね。で、新しい案に変わってかなり企画班の仕事が増えて大変だろうけど、このメンバーで頑張って行きたいと思います。皆大変だけどお願いします。」

最後に羽生がふわりと笑って、皆が「おー!」と掛け声を返した。

羽生を中心に企画班は皆気持ちが一つになっている。

本当に企画班はどの班よりも、台本作りに始まり、現場監督的な事にいたるまで仕事が多く、部活や委員会をやってたりする奴は更に大変だ。

だけど皆が弱音も文句も言わずに頑張ってるのは、同じ目標があるからなんだろう、一つのものを完成させたいという。

それと早瀬に羽生、矢倉といった、個性的だけど統率力のある奴らのおかげだと思う。


俺は今まで馴れ合いってことを自分から避けて、人と深く関わることを、自分が傷付くことを怖がっていたけれど、
こういうのも、いいかもしれない、何て。


「金剛くん、掛け持ちで大変だけど頑張ろうね!」

羽生が隣で優しく笑いかけてくる。

「おう」

相沢の件はかなりむかつくが、皆のおかげでちょっと怒りが和らいだ。

視線を上げると教室の前で皆に指示を出したり、声を掛けられたり、忙しく働いている早瀬が目に入る。

そんな早瀬を見ていたら、何だか俺ももっと頑張ろうと思えてきた。

「皆頑張ろうな」

にこっと笑って企画班の奴らに声を掛ければ、唖然とした表情で凝視された。

何だよ、と皆を見返していると、企画班の一人がいきなり「金剛って何かイケメンだよな。」と言い出した。

「はあ?」

思わず素で聞き返すと、周りもうん、うんと頷いている。

何がどうイケメンと繋がるのか訳が解らず戸惑ってしまう。

「何か見た目もそうだけど性格がイケメンなんだよね、金剛くんは。」

羽生にそう言われて嬉しいようなむず痒いような。

気恥ずかしくて俺は横を向いて「さんきゅ」と素っ気なく返した。
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