白衣と眼鏡と落ちこぼれ教師
やがて話し合いが終わったのか、固い表情をした矢倉と、心なしか不安げな無表情の早瀬が近寄って来る。
皆が心配そうな表情をしている中、矢倉は俺の真ん前に立ち俺をじっと見つめて口を開く。
「悪いが金剛にも着いて来て貰う。」
それだけ言って矢倉は俺に背を向け教室を出て行く。苦笑いを浮かべた早瀬が俺の肩を叩いて、二人で歩き出す。
廊下には数メートル離れた先にガタイの良い矢倉の背中が見える。俺と早瀬はのんびりと並んで廊下を進む。湿度の高い空気が身体を覆う。
「悪いな。矢倉が金剛にも来て貰った方がいいって。」
「仕方ねえよ。俺が発案した訳だし。」
お化け役の奴らも自分達の衣装はどうするかとか、こんな事をしたい、とか色々考えていたはずだ。
それが急に学校に来だした、それ程知りもしないクラスメートに急に変えられたとなったら、事後報告だけでは納得しないだろう。
被服室に着くと、矢倉が先に入って行く。それに着いて俺と早瀬も中に入った。
中では大きなテーブルに生地が広げられていて、わいわいがやがやと楽しそうに話し合いが行われていた。
まだ初日ということもあり、それ程作業が進んでいる感じはない。
「あれ?矢倉、どうした?」
「早瀬……と、」
金剛、誰かがそう小さく呟いた。楽しそうだった空気が一転して皆異色の三人に戸惑っている。この雰囲気に加えて、これから言わなければいけない内容に、俺は居たたまれなくなった。
「…企画班の奴らと俺らで話し合った結果、迷路形式のお化け屋敷を止めることにした。」
冷静沈着な矢倉の、感情の見えない声が被服室に響く。
「え……」
「……は?」
「どういうこと?」
「なに……」
そりゃそうなるよな……。
“発案したのは俺です”なんて言い出せるような雰囲気ではない。
矢倉のあまりにも説明不足な説明に早瀬が慌てて口を挟む。
「実はさ、企画の方から、やっぱ迷路形式にすんのは教室じゃ狭いよな、って話が出て。俺らも前からそこはちょっと心配してたんだ。で、どうしようってなってたら、丁度金剛が録音した怖いテープを聞かせたらどうだって案出してくれて。皆賛成してそうなったんだ。」
早瀬の説明に理解したらしく皆ざわめき出す。
徐々に頭が理解すると、怒りが生まれる。怒りが生まれるとその矛先は勿論俺に向かう訳で………
「んだよそれ。」
「ちょっと勝手過ぎねえ?」
「生地とかどうすんだよ。」
「え、じゃあ俺ら何すんの。」
つーか何で金剛、誰かが小さく呟くと、その思いはさざ波のように広がっていく。
俺がヤンキーだと思ってびびっているのと、本人が目の前に居る手前はっきりと口には出せないものの、明らかに不満そうな眼差しが俺に向けられる。
皆が心配そうな表情をしている中、矢倉は俺の真ん前に立ち俺をじっと見つめて口を開く。
「悪いが金剛にも着いて来て貰う。」
それだけ言って矢倉は俺に背を向け教室を出て行く。苦笑いを浮かべた早瀬が俺の肩を叩いて、二人で歩き出す。
廊下には数メートル離れた先にガタイの良い矢倉の背中が見える。俺と早瀬はのんびりと並んで廊下を進む。湿度の高い空気が身体を覆う。
「悪いな。矢倉が金剛にも来て貰った方がいいって。」
「仕方ねえよ。俺が発案した訳だし。」
お化け役の奴らも自分達の衣装はどうするかとか、こんな事をしたい、とか色々考えていたはずだ。
それが急に学校に来だした、それ程知りもしないクラスメートに急に変えられたとなったら、事後報告だけでは納得しないだろう。
被服室に着くと、矢倉が先に入って行く。それに着いて俺と早瀬も中に入った。
中では大きなテーブルに生地が広げられていて、わいわいがやがやと楽しそうに話し合いが行われていた。
まだ初日ということもあり、それ程作業が進んでいる感じはない。
「あれ?矢倉、どうした?」
「早瀬……と、」
金剛、誰かがそう小さく呟いた。楽しそうだった空気が一転して皆異色の三人に戸惑っている。この雰囲気に加えて、これから言わなければいけない内容に、俺は居たたまれなくなった。
「…企画班の奴らと俺らで話し合った結果、迷路形式のお化け屋敷を止めることにした。」
冷静沈着な矢倉の、感情の見えない声が被服室に響く。
「え……」
「……は?」
「どういうこと?」
「なに……」
そりゃそうなるよな……。
“発案したのは俺です”なんて言い出せるような雰囲気ではない。
矢倉のあまりにも説明不足な説明に早瀬が慌てて口を挟む。
「実はさ、企画の方から、やっぱ迷路形式にすんのは教室じゃ狭いよな、って話が出て。俺らも前からそこはちょっと心配してたんだ。で、どうしようってなってたら、丁度金剛が録音した怖いテープを聞かせたらどうだって案出してくれて。皆賛成してそうなったんだ。」
早瀬の説明に理解したらしく皆ざわめき出す。
徐々に頭が理解すると、怒りが生まれる。怒りが生まれるとその矛先は勿論俺に向かう訳で………
「んだよそれ。」
「ちょっと勝手過ぎねえ?」
「生地とかどうすんだよ。」
「え、じゃあ俺ら何すんの。」
つーか何で金剛、誰かが小さく呟くと、その思いはさざ波のように広がっていく。
俺がヤンキーだと思ってびびっているのと、本人が目の前に居る手前はっきりと口には出せないものの、明らかに不満そうな眼差しが俺に向けられる。