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白衣と眼鏡と落ちこぼれ教師

放課後、チャイムが鳴り廊下を走る。授業終わりのホームルームをすっ飛ばして、理科準備室に向かっていた。

「はあ…はあ…」

廊下を走りながら上がる息に運動不足を実感する。

昔は、体を動かすことが大好きだったし、何でもそれなりにやれば出来たから、体力があった。

でも最近はバイトと学校での体育ぐらいでしか身体を動かさないので随分運動不足だ。


ランニングとかしようかな、なんて腕を回しながら廊下を歩いていると、ふと廊下の隅の人影に気付く。

背の高い男性教師と、体格と上靴からして、一学年下の見知らぬ生徒。

生徒の方が教師に何か言われているらしい。うつむいた生徒の背中が見えた。

男性教師は厳しい表情で何かまくし立てている。

「……わかってるのか?このまま行くと二年に上がれないぞ?何のためにうちに来たんだ。」

……酷い言われ様だな。

思わず足が止まる。じっと二人を睨み付けるように見つめた。

何も言わない男子生徒に教師は続ける。

「いいか?勉強しない奴はうちには要らないんだからな。やる気がないんなら、辞めろ。」


かあっと頭に血が登り、教師を殴ってやりたくなる。ぎゅう、と拳を握りしめて耐えた。

うつむいたままの生徒からすすり泣きのようなものが聞こえて来る。

「……辞めたく、ありません。」

絞り出すような声に胸が締め付けられた。

…俺にもあんな時があったっけ。


勉強に対してやる気が出なくて、担任や教師には怒鳴られて。

――お前なんか世の中に出てもなんの役にも立たないだろうな――

中三の時の担任に言われた言葉。

中三の途中から勉強がイマイチ上手くいかなくて、やる気もなくなっていて、全く勉強をしなくなっていた。

うちの学校は簡単な試験だけで高校に上がれるエスカレーター式のため、部活もぎりぎりまで引退しないのだが、その頃には部活にも出ていなかった。


担任に呼び出され、注意された。最初はきついけど、教師としては当たり前のことを言っていた。

でも、段々俺の生意気な態度に苛々し出した担任は、俺の「うるせえ」という言葉に怒り、ああいう言葉を返して来たのだ。

まあ、俺も悪いと思う。生意気だったしな。

でもそれから俺は、教師というものが苦手になった。忌み嫌っていたと言ってもいい。
何も分かっていないのに、知ったような顔で理不尽に怒鳴る教師。勉強しない、ということで、少し制服を着崩している、というだけで、理不尽に怒鳴られたり、反省文を書かされたり、そういうことが全く理解できなかった。

だから高校に上がって髪を金色に染めた。服装を着崩して学校に行った。遅刻も平気になった。屋上で授業をさぼった。煙草も吸ったし、バイトも始めた。

どうでも良かったから。
どうでも、どうでも良かった。

叱られようが、殴られようが、俺はこんな奴らの言いなりにはならない、と。
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