白衣と眼鏡と落ちこぼれ教師
一時間目が終わりトイレに行こうと教室を出て、ばったりと原田と出くわした。
俺の姿を見て、ぱあ、と表情を輝かせる。俺は原田の横を素通りしようとしたがその前に声を掛けられて思わず足を止めた。
「圭介っ!おはよう」
「……はよ…」
早く立ち去りたかった俺は適当に返し、もう一度横を通ろうとして腕をがし、と掴まれる。
「なあな、滋いる?ちょっと用があってさ~、てか最近圭介理科準備室で見ないよな?教えて貰ってるんじゃないの?何かあった?てか腹減った~。俺今日朝メシ食ってねえの。まじ二時間目待たずに早弁しちゃおっかなあー。ていうのはさ、いつも二時間目中に早弁しちゃうんだ、俺。いや、昼休みは食堂行くんだよ。やっぱ足りねえよな~。育ち盛りの男子たるもの、」
……キーンコーンカーンコーン。
「あ、チャイム鳴った。くっそー。しゃあねえから昼休みに来るわ!じゃあな、圭介。」
そう言うと原田は走って行ってしまった。
……何だったんだ……。
俺はトイレを諦め幾らかげっそりして教室に戻る。
最近知ったのだが、原田はテンションが高いと弾丸のように喋る。早瀬と話している時は普通なのに、俺と出くわすと、毎回一方的に馬鹿みたいに話す。本当に勘弁して欲しい。
こんな状態じゃ、仲良くなるものもならない、と思う。全くその気はないが。
「あれ?卓也来てなかった?」
早瀬が不思議そうな顔で俺を見る。
俺は早瀬の返事に「ああ」と答えると机に突っ伏した。
「あれ?大丈夫か、金剛。」
心配そうな早瀬の声に顔を上げる。
「大丈夫じゃねえよ。どうにかしてくれよ、あの馬鹿」
思わず俺は頭を手で押さえる。
「あはは、またあの弾丸トークだったのか?卓也は本当に金剛のことが好きだから。」
その言葉にきっ、と早瀬を睨む。
「妙な言い方すんなよ。全然笑い話じゃねえし。」
「悪い」
そう言いつつも顔は笑っている早瀬に苛立つ。
他人ごとだからって楽しそうにしやがって。
俺は小さく溜め息を吐き、窓の外を見やる。
あーあ、そろそろ中河に会いたい。実際は三、四日しか経っていないのに、一週間も二週間も会っていないような気がする。
最近本当に俺の周りは忙しい。バイト、学校に勉強、原田……。
中河のことを考えられるのも、こういう授業中のちょっとした時間だけだ。
こんな調子で一ヶ月、二ヶ月と経ってしまったら、流石に無かったことにされるんじゃないだろうかという考えがよぎる。
「……大丈夫、だよな。」
小さく呟いた声は、思ったよりか弱々しくなってしまった。
少しでいいから、中河に会いたい。
今一番の願いだった。
俺の姿を見て、ぱあ、と表情を輝かせる。俺は原田の横を素通りしようとしたがその前に声を掛けられて思わず足を止めた。
「圭介っ!おはよう」
「……はよ…」
早く立ち去りたかった俺は適当に返し、もう一度横を通ろうとして腕をがし、と掴まれる。
「なあな、滋いる?ちょっと用があってさ~、てか最近圭介理科準備室で見ないよな?教えて貰ってるんじゃないの?何かあった?てか腹減った~。俺今日朝メシ食ってねえの。まじ二時間目待たずに早弁しちゃおっかなあー。ていうのはさ、いつも二時間目中に早弁しちゃうんだ、俺。いや、昼休みは食堂行くんだよ。やっぱ足りねえよな~。育ち盛りの男子たるもの、」
……キーンコーンカーンコーン。
「あ、チャイム鳴った。くっそー。しゃあねえから昼休みに来るわ!じゃあな、圭介。」
そう言うと原田は走って行ってしまった。
……何だったんだ……。
俺はトイレを諦め幾らかげっそりして教室に戻る。
最近知ったのだが、原田はテンションが高いと弾丸のように喋る。早瀬と話している時は普通なのに、俺と出くわすと、毎回一方的に馬鹿みたいに話す。本当に勘弁して欲しい。
こんな状態じゃ、仲良くなるものもならない、と思う。全くその気はないが。
「あれ?卓也来てなかった?」
早瀬が不思議そうな顔で俺を見る。
俺は早瀬の返事に「ああ」と答えると机に突っ伏した。
「あれ?大丈夫か、金剛。」
心配そうな早瀬の声に顔を上げる。
「大丈夫じゃねえよ。どうにかしてくれよ、あの馬鹿」
思わず俺は頭を手で押さえる。
「あはは、またあの弾丸トークだったのか?卓也は本当に金剛のことが好きだから。」
その言葉にきっ、と早瀬を睨む。
「妙な言い方すんなよ。全然笑い話じゃねえし。」
「悪い」
そう言いつつも顔は笑っている早瀬に苛立つ。
他人ごとだからって楽しそうにしやがって。
俺は小さく溜め息を吐き、窓の外を見やる。
あーあ、そろそろ中河に会いたい。実際は三、四日しか経っていないのに、一週間も二週間も会っていないような気がする。
最近本当に俺の周りは忙しい。バイト、学校に勉強、原田……。
中河のことを考えられるのも、こういう授業中のちょっとした時間だけだ。
こんな調子で一ヶ月、二ヶ月と経ってしまったら、流石に無かったことにされるんじゃないだろうかという考えがよぎる。
「……大丈夫、だよな。」
小さく呟いた声は、思ったよりか弱々しくなってしまった。
少しでいいから、中河に会いたい。
今一番の願いだった。