このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

白衣と眼鏡と落ちこぼれ教師

「ふーん。そうなんですか。圭介、頭いいでしょ?」

「ああ」

あ、また目尻垂れてる。些細な変化だけど、やっぱり部活で面倒見ている原田と、この間知ったばかりの俺じゃ、全然違うよな。それは、当たり前のことだ、と自分に言い聞かす。


「そろそろ俺、行きます。」

そう言って原田は立ち上がり、俺の顔をじっと見つめる。

「まだ、諦めてないから俺。話しもちゃんと出来てないし。俺、馬鹿だけど諦めは悪いから。」

原田はにか、と笑うと、理科準備室を出て行った。


「…やれやれ、って感じだな。」

中河は言いながら白衣のポケットから煙草を取り出し火を付ける。独特の香りが立ち上る。

「中河、煙草吸うんだ。」

「たまに…な。」

俺も吸いたくなったが、流石に我慢した。

「話し、しに来たんだろ?」

中河はぼうっとあらぬところを凝視したまま、聞いてくる。

「あ、ああ。」

何だかここに来るまでの意気込みを根こそぎ原田に持っていかれた感じだ。

「中河に、聞きたいことが。」

「俺もお前に聞きたいことがある。」

意外な返しに戸惑う。

「……なんだよ?」

中河はキィと音を立てて椅子を回転させ俺の方を向く。じっと見つめてくる瞳は真っ直ぐに俺の目を貫く。

「お前、俺のことが好きなのか?」

自分から切り出そうと思っていたことを先に言われてしまい、驚いた。……でも、本当のことだから。逃げないと腹をくくったから。


「ああ。……好きだ。」

真っ直ぐに見つめ返し言った瞬間中河は、はあああと溜め息を吐きながら、机に突っ伏してしまった。

「中河?」

「……金曜日は、逃げて悪かった。でも、酒入ってて、まともな対応できねえって思ったし。」

うつ伏せのまま、もごもごと話す中河は、いつもと違って弱気で、教師らしくなくて、可愛いと思ってしまった。

「何か、悩ませちまってる?俺」

「めちゃくちゃ……」

俺が告白したことで、中河は悩んでしまっていたようだ。悪いなと思う反面、いつかは言ってしまってた気持ちだから、仕方ないとも思った。


「俺の聞きたいこと。あの女と付き合ってんの?」

「あの女?って……ミユちゃん?」

「…そう」

「付き合ってねえよ。ただの大学の同期。」

その言葉を聞いて取りあえず安心する。
何も進展はしていないけれども。
34/65ページ
スキ