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白衣と眼鏡と落ちこぼれ教師

まともに話しちまったな……

授業が終わり、廊下を一人歩きながら原田卓也と話した朝のことを思い出す。

話してしまえば、今までの気まずさや、確執などは、どこへ行ってしまったのだろうという程呆気なく消えてしまう気がした。全てを、なかったことにされてしまったなら、自分の中のもやもやと渦巻く気持ちは行き場を失ってしまうだろう。


原田卓也は俺が入学して一番に友達になり、中学の三年間仲良くしていた奴だ。
親友……だったのかもしれない。

でもその親友は、俺が高校に入って素行が悪くなると、すぐに離れていった。

一人、馬鹿な奴が居て、「お前と居ると内申点が下がるから」と教えてくれたっけ。

そんなことはどうでもいい。
せっかく中河と会えるというのに暗く沈んだ気持ちのままで会いたくない。


理科準備室の前に着き、扉を開こうとしたら先に内側から開く。

ガラ、と開いた先に立っていたのは原田卓也だった。

またか……と溜め息を吐きたくなる。

「…あ、けい、すけ……」

原田は戸惑いながら後ろ手に扉を閉める。

その動作に苛、とする。

「俺、入りたいんだけど。」

「…話したい。俺、ちゃんとお前と、」

「俺は何もねえな。」

はっきりと返した俺に、原田はおどおどしながらも、引き下がらない。

「謝りたいんだ。ちゃんと。」

「お前の言い訳を延々と聞けって?」

目の前に中河と繋がる扉があるというのに、なんだこのじれったさ。朝の中河の授業も、遅刻して受けられなかったというのに。

「ちがっ、って、そうなんだけど……俺、圭介とまた、仲良くしたいんだ……」


その言葉にかあっと頭に血が登る。

「なあ。お前はさあ、謝ってすっきりしていいよな。俺はお前と仲良くしようって気はねえよ。今更何なんだよ。ほっとけよ!こっちは、お前が勝手に離れてって、周りも離れてって………自分の気持ちが落ち着いたからって、今更近付いてくんじゃねえよ!!」

どん、と原田の背後の扉を蹴れば扉がガタガタと激しく揺れた。

原田は怯えながらも、全く引く気はないらしい。
こっちが泣きたい位だというのにぼろぼろ泣き出した。

「う、ごめ、悪かった。俺、俺、怖かったんだよっ、変わってく圭介が……。置いてかれるって、俺なんか必要なくなったんじゃないかって、う、うぅ…」

もう収集付かなくなってきたな、と盛大に溜め息を吐いた。


その時にタイミング良く原田の背後の扉が開き、不機嫌そうな中河が顔を出した。
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