白衣と眼鏡と落ちこぼれ教師
週明けの朝―――
気怠げにパジャマ姿のまま階段を降りて行くと、もう9時過ぎだというのに、制服姿の明人がいた。
「お前……何してんの。」
まだ眠いのと、寝不足なのと相まって、不機嫌になってしまう。
「あ…兄ちゃん!え?俺?はは、えーと……」
明らかにうろたえている明人に苛立ちが募る。
「さぼったのかよ。」
これって八つ当たりかもしれねえ、とか頭で考えながらも出る言葉は刺々しい。
「たまには、ね。兄ちゃんも休むの?」
バレてしまえば仕方ない、と開き直った様子の明人。
「あー…わかんねえ。だるいのはだるい。」
ずき、ずきと痛む頭を手で押さえつつ、テーブルの椅子に座る。
「水、飲む?」
「別に二日酔いとかじゃねえよ……」
聞いていないのかそれでも明人はコップに水を入れて持ってくる。正直だる過ぎたので有り難く飲ませてもらう。
「頭痛薬、いる?学校にお休みの電話しようか?」
母親みたいに世話を焼いてくる明人をうっとうしく思いながらも、小学生に戻ったみたいでどこか嬉しく感じている自分もいる。
「ああ…頼む。」
学校に休むという電話なんてしたことないが、なんとなく頼んでみる。
「うん、はい、バファリン。えーと兄ちゃんの学校の番号、番号……」
パタパタとスリッパを鳴らして明人は走って行く。
薬を飲んで立ち上がり、ばふん、とソファーに飛び込む。
ああ…休むのって久しぶりかも。
そういや今日……物理あったよな…ま、いっか。
中河、心配するかな、なんてくだらないこと思ったりして。
パタパタ音を鳴らして明人がリビングに戻ってくる。
「あった、兄ちゃんの高校のパンフレット。えーと、番号、2の4の…」
ピ、ピ、とボタンを押す音が聞こえる。
なんで家にパンフレットなんかあんだろ。まあ一つくらいあってもおかしくないか。
「もしもし、金剛圭介の家族の者ですが。今日休ませようと思いまして……ああ、はい、え?あ、少々お待ち下さい。」
何があったのか保留を押してこちらに向く明人。受話器を、ん、と差し出してくる。
「え、担任とか出ねえよ。熱で出れないとか言っとけ。」
明人は腑に落ちないという表情で、唇を尖らせている。
「なんか、担任じゃなくて、物理の先生だって。」
その言葉にばく、ばく、と心臓がうるさく脈打つ。
「中河…」
「そう、中河先生って言ってたよ。」
何の電話なんだ?
仕方なくソファーから立ち上がる。
担任には出ないと言ったくせに、中河と聞くと大人しく寄って来た俺に明人は不思議そうな顔をしながらも、受話器を渡して台所にパタパタと歩いていった。
気怠げにパジャマ姿のまま階段を降りて行くと、もう9時過ぎだというのに、制服姿の明人がいた。
「お前……何してんの。」
まだ眠いのと、寝不足なのと相まって、不機嫌になってしまう。
「あ…兄ちゃん!え?俺?はは、えーと……」
明らかにうろたえている明人に苛立ちが募る。
「さぼったのかよ。」
これって八つ当たりかもしれねえ、とか頭で考えながらも出る言葉は刺々しい。
「たまには、ね。兄ちゃんも休むの?」
バレてしまえば仕方ない、と開き直った様子の明人。
「あー…わかんねえ。だるいのはだるい。」
ずき、ずきと痛む頭を手で押さえつつ、テーブルの椅子に座る。
「水、飲む?」
「別に二日酔いとかじゃねえよ……」
聞いていないのかそれでも明人はコップに水を入れて持ってくる。正直だる過ぎたので有り難く飲ませてもらう。
「頭痛薬、いる?学校にお休みの電話しようか?」
母親みたいに世話を焼いてくる明人をうっとうしく思いながらも、小学生に戻ったみたいでどこか嬉しく感じている自分もいる。
「ああ…頼む。」
学校に休むという電話なんてしたことないが、なんとなく頼んでみる。
「うん、はい、バファリン。えーと兄ちゃんの学校の番号、番号……」
パタパタとスリッパを鳴らして明人は走って行く。
薬を飲んで立ち上がり、ばふん、とソファーに飛び込む。
ああ…休むのって久しぶりかも。
そういや今日……物理あったよな…ま、いっか。
中河、心配するかな、なんてくだらないこと思ったりして。
パタパタ音を鳴らして明人がリビングに戻ってくる。
「あった、兄ちゃんの高校のパンフレット。えーと、番号、2の4の…」
ピ、ピ、とボタンを押す音が聞こえる。
なんで家にパンフレットなんかあんだろ。まあ一つくらいあってもおかしくないか。
「もしもし、金剛圭介の家族の者ですが。今日休ませようと思いまして……ああ、はい、え?あ、少々お待ち下さい。」
何があったのか保留を押してこちらに向く明人。受話器を、ん、と差し出してくる。
「え、担任とか出ねえよ。熱で出れないとか言っとけ。」
明人は腑に落ちないという表情で、唇を尖らせている。
「なんか、担任じゃなくて、物理の先生だって。」
その言葉にばく、ばく、と心臓がうるさく脈打つ。
「中河…」
「そう、中河先生って言ってたよ。」
何の電話なんだ?
仕方なくソファーから立ち上がる。
担任には出ないと言ったくせに、中河と聞くと大人しく寄って来た俺に明人は不思議そうな顔をしながらも、受話器を渡して台所にパタパタと歩いていった。