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白衣と眼鏡と落ちこぼれ教師

俺は中河の腕を引っ張って店の裏口のある路地に入った。

「なんだよ。酔ってねえって。」

中河は酔ってないと言い張るが、完全に酔っている。もういつもの中河の原型を留めていない。

俺は中河に向き直り、じ、と睨む。

顔色が変わっていないだけに分かりづらいが、結構呑んだらしい。

「酔ってるだろ。落ち着くまでここ居ろ。」

中河を無理やり裏口の下の段差に座らせる。

「うるせえよ。酔ってねえって。ううう」

と言いつつもだるいのか大人しく座っている。

「気持ち悪ぃのかよ?」

呻き出した中河の背中をさすりながら顔を覗くと、中河はばっと顔を両手で覆った。

「どうした?気持ち悪い?吐く?」

「……何でお前ここに連れて来たの。」

急に冷静になった様子で中河が聞いてくる。

「………酔ってるから、だろ。」

「酔ってねえって。」

苛々したように繰り返す中河にだんだん腹が立ってくる。

「うるせえな。酔ってんだろうが。」

「酔ってねえって!」

急にキレて立ち上がった中河に驚く。

「俺、もうあいつらとこ戻るわ。今日は悪かったな。」

女のピンクの唇……それが頭に浮かんだ瞬間、頭の中の何かが切れた。

「行くな」

とっさに中河の手首を掴む。

「何?俺、行かねえと、金剛」

諭(さと)すような中河の声に逆に苛々してくる。こいつ、逃げようとしてねえか?

「あの女のとこには行くな。」

「女?ああ、ミユちゃん?がどしたの?」

どしたのじゃねえよ!と叫びたくなったが抑える。
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