このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

白衣と眼鏡と落ちこぼれ教師

「そう」

中河は嬉しそうに答える。

「え!?まじであの高校の生徒さんなの?」

中河と女の後ろから声が上がる。

今にも、こんな見た目で?と声が上がりそうだったので

「お席にご案内します。」

と素っ気なく言って、俺はすたすたとテーブル席に向かった。
後ろで他愛のない話をしながら中河と女が着いてくる気配がして、背中が緊張する。

全員が席に着いたのを確認すると、伝票とボールペンを取り出す。

「お飲み物いかがなさいますか。」

女は当たり前のように中河の隣に座って「全員ナマでいいよね?」と確認し、「生ビール5つ」とピンクの唇を緩ませて言った。

「かしこまりました。」

つい、いつもより無愛想になってしまう。
固い俺に気付いたのか、中河がぽん、と俺の二の腕を叩いた。

・・・そんなことされても困る。

俺は「すぐお持ち致します」とまた無愛想に中河に返すと、調理場に引っ込んだ。

「どしたんすか?圭介さん。」

赤津がすぐに声をかけてくるが、答えようもない。

「ナマ5つ」

「はーい。つーか、学校のセンセイっすか?」

ビールジョッキに生ビールを注ぎながら赤津が聞いてくる。

「まあ」

「へえ~。圭介さんの知り合いとか俺初めて見る。」

「いらねえこと言うなよ。」

「なんすか、いらない事って。」

へらへらしながら言う赤津の手からビールジョッキを奪うと、俺はテーブル席に向かった。

「お待たせしました。生ビールです。」

「あ、ありがとねえ」

女の甘ったるいその声に胸がもやもやする。

何か言いたいのかちらちらと中河からの視線を感じるが、絶対見ないように目を逸らした。

どうしてこんなにむかむかするんだろう。
22/65ページ
スキ