白衣と眼鏡と落ちこぼれ教師
たん、たん、たん、たん
一人静かに階段を降りて、早道になる渡り廊下を渡る。渡り廊下からは窓越しに少し理科準備室が見える。俺は少しだけ、ゆっくり歩く。でも結局はあっという間に通り過ぎてしまう。
自覚してしまってからは、全ての見え方が変わる。
それは古い校舎だったり、教室だったり、制服だったり。
俺がこの学校で接するもの全て。
何かがどこかで、中河と繋がっているような気がして。
————————
「はよっす、圭介さん。」
更衣室に入ると赤津が居た。今来たところらしく、携帯をいじっている。
「はよ」
俺もロッカーにかばんを入れ、制服を脱ぎ出す。いつもジーンズとスニーカーをロッカーに入れたままにしておいて、店指定の黒いTシャツだけ鞄に入れている。
「今日予約入ってるらしいっすよ。言っても5人っすけど。」
まあこの時は珍しいな、と思っただけだったのだが。
「いらっしゃいませー。ご予約の方になりま…すね」
「ちゃんと働いてるか、金剛」
センター分けの前髪にノンフレームの眼鏡。にや、と笑う顔はいたずらっ子みたいだ。予約の客は中河だったらしい。
仕事終わりにそのまま来たのかスーツ姿だ。学校と違ってリラックスした雰囲気なのは、どうやら友人と飲みに来たかららしい。
中河と他に男が三人。一人だけ女だ。パンツスーツに高い位置で長い髪をくくったポニーテールがよく似合っている美人だった。思わず見てしまう。
中河の隣に立った女は、中河に視線を向ける。
綺麗なピンク色のリップを塗った唇が緩く弧を描き、薄く開く。
「歩(あゆむ)くんの生徒さん?」
胸が、何か刺さったみたいに、急に痛んだ。
一人静かに階段を降りて、早道になる渡り廊下を渡る。渡り廊下からは窓越しに少し理科準備室が見える。俺は少しだけ、ゆっくり歩く。でも結局はあっという間に通り過ぎてしまう。
自覚してしまってからは、全ての見え方が変わる。
それは古い校舎だったり、教室だったり、制服だったり。
俺がこの学校で接するもの全て。
何かがどこかで、中河と繋がっているような気がして。
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「はよっす、圭介さん。」
更衣室に入ると赤津が居た。今来たところらしく、携帯をいじっている。
「はよ」
俺もロッカーにかばんを入れ、制服を脱ぎ出す。いつもジーンズとスニーカーをロッカーに入れたままにしておいて、店指定の黒いTシャツだけ鞄に入れている。
「今日予約入ってるらしいっすよ。言っても5人っすけど。」
まあこの時は珍しいな、と思っただけだったのだが。
「いらっしゃいませー。ご予約の方になりま…すね」
「ちゃんと働いてるか、金剛」
センター分けの前髪にノンフレームの眼鏡。にや、と笑う顔はいたずらっ子みたいだ。予約の客は中河だったらしい。
仕事終わりにそのまま来たのかスーツ姿だ。学校と違ってリラックスした雰囲気なのは、どうやら友人と飲みに来たかららしい。
中河と他に男が三人。一人だけ女だ。パンツスーツに高い位置で長い髪をくくったポニーテールがよく似合っている美人だった。思わず見てしまう。
中河の隣に立った女は、中河に視線を向ける。
綺麗なピンク色のリップを塗った唇が緩く弧を描き、薄く開く。
「歩(あゆむ)くんの生徒さん?」
胸が、何か刺さったみたいに、急に痛んだ。