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白衣と眼鏡と落ちこぼれ教師

チャイムが鳴る音がして、俺達は教室に戻った。

席に着く早瀬にじゃあな、と一声かけて俺は教室を出る。六限目を受ける事なく、俺は帰る事にした。
早瀬はちらりと視線を上げて「ああ」と短く返した。


今日一緒に煙草を吸った事で、俺の中で早瀬の存在は少し変わった。

この閉鎖的な学校で唯一俺と同じ匂いのする奴。少し嬉しくなって俺は軽い足取りで廊下を進む。

ふと、何の気なしに視線を上げる。

通り過ぎようとした教室の出入り口に目が止まる。
一人の生徒が扉にもたれかかって立っていた。

何の変哲もない、真面目そうな生徒。黒髪で、ひょろりと背が高く、うっすらと日焼けしている。

あ、

その顔に見覚えがあって思わず足を止める。

きり、としたつり目に一重まぶた。黒目が大きくて幼く見える顔。



あいつ……

そいつの名前が頭に浮かんだ瞬間目がばちりと合う。


そいつは一瞬目を見開き、すぐにはっとして視線を逸らした。


「卓也(たくや)~」

教室内から掛かった声に、何事もなかったかのように出入り口から離れていった。


――原田 卓也(はらだ たくや)。

頭に浮かんだ名前に俺は顔をしかめる。忘れよう。


俺はその教室を通り過ぎ、階段に向かった。
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