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白衣と眼鏡と落ちこぼれ教師

あと一週間後にテストか。

理科準備室から教室へ帰る途中、一週間後に迫ったテストのことを考えると、妙に胸の辺りがきゅ、と痛んだ。


……このテストが終われば、理科準備室にも行かなくてもいいんだよな。


ほっと、するはずなのに。
胸の中は、もやもやしている。

俺はあまり考えないようにして、教室に入った。

クラスメートは大半が昼休みから戻って来ており、がやがやと騒がしい。

席に着こうとすると、「明人」という表示で携帯が震えた。

仕方なく廊下に出て通話ボタンを押す。


『…兄ちゃん?』

もしもし、と言う前に明人の遠慮がちな声がした。

「なんだ?」

『えっと、今日バイトない日だよな?……家に早く帰って来れない?』

「…なんで」

『今日父さんも母さんも家にいないんだ。だから、晩ご飯一緒に食べない?』

答えようとしてチャイムが鳴る。

『あっ、鳴ったね。ごめん。じゃあそういうことで。』

「あ、明人っ」

通話は切れてツーツーという虚しい音が響く。

俺ははあ、と溜め息を吐いて、教室に戻った。


————————



仕方なく俺はまっすぐ家に帰って来ていた。鍵を開けると、玄関には明人のナイキの赤いハイカットが揃えて置いてある。

…もう帰ってんのか。

ローファーを隣に並べると、階段を上がる。肉が焼けるいい匂いが漂ってくる。

「あ、兄ちゃん!帰って来たんだ!」

リビングに入ると、エプロンをした明人が台所に立って料理をしていた。

「お前が帰って来いって言ったんだろ。」

自分で言ってきたくせにほっとした顔をしている明人にそう返しながら、ソファに座りネクタイを外す。

「いや。もしかしたら兄ちゃん帰って来ないのかもって思ってたからさ。」

明人は、はは、と乾いた笑いを浮かべる。

「お前塾は?」

「ん?行かないよ」

思わず振り返って明人を見る。

「行かないって。さぼんのか。」

「いいだろ?たまには。いっつも勉強してるし。」

なんでもない、といった雰囲気の明人に閉口する。
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