捧げ物
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「ビルス様、これ凄く美味しいですよ。」
「そう?……じゃあ、後で食べるよ。」
普段なら、恋人のその言葉を聞くとウキウキと飛びつくビルスが夢主を一瞥するだけに留め、他の料理を黙々と食べ進める。
(やっぱり、ちょっと避けられてる…?)
ある日を境にビルスの夢主への接し方が少し変わった。
ブルマ達の前ではもちろん、星に帰った後も夢主と必要以上の接触をしない。
以前から人前でベタベタする方では無かったが、最近は同じ空間にいる事も極力避けているようだった。
(いつからだったかな…。あぁ…あの時からか…。)
『ねぇ、ビルス様はあなたの事凄く大切にしてるでしょ?雰囲気とか"宝物"って感じで。もしかして、恋人同士だったりするの?』
『あ、えっと、』
『そんなんじゃない。第一、お前には関係無いだろ。』
『あら、そうなの。』
『……ビルス様…?』
『…………。』
心当たりであるブルマとのやり取りを振り返り、不機嫌さを隠しもしなかったビルスの態度を思い出し、気分が重くなる。
(あの時は照れ隠しかと思ったけど、星に戻ってからの態度も考えると違うよね…。)
今日も地球に赴き、夢主から離れた所で食事を楽しんでいるビルスをぼんやり眺めため息をつく。
(恋人が私だと不都合なのかな…。それとも飽きた…とか…。…そういう事なのかな…。)
「なあ、あんたさ。もしかしてビルス様のこと好きだったりするのか?」
考えを巡らせていた所に声をかけられ、視線を向ける。
「あなたは…えっと、…ヤムチャさん。」
「ああ。」と隣に立ったヤムチャが人好きのする笑顔を浮かべ頭をかいた。
「悪いな。こういう事聞くの不躾かなと思ったんだが、さっきからずっとビルス様の事見てるしよ。前に会った時も随分親しげだったから、恋人同士だったりするのかと気になっててな。」
"恋人同士"
その言葉が夢主の中に波紋を生む。
無理やり笑顔を貼り付けて、ゆっくりと首を左右に振った。
「まさか…私とビルス様はそんな関係じゃありませんよ。ビルス様の事は好きですが、恋愛感情としてではないです。」
「へえ…それについてはボクも詳しく聞きたいんだけど。」
いつのまにか側に立ち、冷淡な面持ちで口を挟んだ声の主を見て、「うげっ!」っとヤムチャが悲鳴を漏らした。
「ビルス様…?」
「………。」
「あの…。」
「ちょっと、」と夢主の腕を掴んで引きずるように連れ去るビルスに、ヤムチャは「ごゆっくり…。」と声をかける事しか出来なかった。
「で?さっきのはどういう事?」
「さっき…?」
惚けているのかと、ビルスが苛立たしげに言葉を続ける。
「恋愛感情じゃないって。」
「あれは…どういう事もなにも…。」
「……ボクの恋人は飽きたのか?」
「え…?」
弾かれるように顔をあげた夢主の目に仏頂面のビルスが映る。
「生憎だけど、ボクはお前を手離すつもりなんてーー」
「……ビルス様が、そう言ったんじゃないですか…。」
掠れた声で呟く夢主にビルスが言葉を切り怪訝な表情を浮かべる。
「ブルマさんに自分達はそんなんじゃないって…。あれって、私が恋人だと不都合だったから…ですよね?…そのあとだってずっと私の事避けてるみたいでしたし…ビルス様こそ私とはもう…。」
言葉にした事で押し殺していた感情が溢れ、目頭が熱くなっていく感覚に夢主は慌てて下を向く。
ギョッとして言葉を失っているビルスの手をやんわり振り解き、足早に脇を通り過ぎる。
「ごめんなさい…。少し頭を冷やしてきます。」
カプセルコーポレーションの敷地内、池のほとりまで逃げてきた夢主は膝を抱えて座り込み、大きく深呼吸をする。
(ビルス様からすると、きっとこんなのも面倒だと思うんだろうな…。)
離れればいくらかマシになると思っていた気持ちは落ち着く兆しがなく、頭を占めるのはビルスの事ばかりだった。
(きっと今、うんざりしてるだろうな……。)
また滲んでくる涙にぐっと口を引き結んで身を縮こませる。
ーー背後で草を踏みしめながら近づいてくる足音が夢主のそばで立ち止まった。
その気配を感じながらも顔を上げる事が出来ない。
そんな夢主に声をかけるでもなく、うずくまっているその背に自分の背を合わせ、ビルスも座り込んだ。
「……合ってたんだよ。ブルマが言ってた事。」
拗ねている様とも、子供に言い聞かせている様とも取れる口調。
「大切だ、とか、宝物だ、とか…そういう…。ボクは神さまなんだ。笑えないだろ?最近知り合った人間に、言い当てられるくらい心情がバレバレだなんて。…だからまあ…ついね。」
「…その後、よそよそしかったのも…ですか?」
「まあね。」
「…でも、星に戻った後も…。」
「関わりの少ないあいつで"さえ"そこまで見抜いたんだ。それこそ、…ウイスなんて考えたくもないだろ。」
「…悪かったね。泣かせて。」
夢主は少し黙り込んだ後、埋めていた顔を少し上げて頷いた。
それに気付いたビルスがコツンと後ろ頭を押し当てて、静かに息を吐き肩の力を抜く。
その仕草に、夢主はビルスが人知れず気を張っていた事を感じ取った。
「でね、誤解が解けたついでに1つ言っておこうと思うんだけど、」
くっついた背中が少し揺れる。
背を離し、夢主の方に向き直ったビルスがそっと覆い被さった。
「多分、ボクはこれからも自分の気まぐれやプライドで夢主を傷つけるかも知れないけど…………ちゃんとさ、想ってるから。」
夢主にしか聞こえない程の小さな声。
それでもしっかりと耳に届いた本音にじんわりと胸が暖かくなり、体の力を抜いてビルスに体重を預けた。
「…私、超能力持ってないんです。だからこれからも、たまには言葉にしてほしいです。」
「考えとくよ。」
頭上で小さく安堵のため息を漏らすビルスに、想像よりも大事に想われているのだと夢主は口元を綻ばせる。
「もう少しここにいるか。今2人で戻ったら、今度は何を悟られるか。」
「でしたら、別々に戻りましょうか。…ビルス様?」
夢主は立ち上がろうとしたがビルスは離す様子がない。
「…まあ、いいじゃないか。もう少しだけこのままでも。」
偏屈な言い回しとは裏腹に、素直な尻尾がシュルッと巻き付いた。
ーーー
相互記念に苺果様に捧げます(^^)
何となくビルス様は好きな人の涙に慣れてなさそうだなぁ、と。
ウイスさんと違って。
そういう時、結構いっぱいいっぱいだったりするかなぁ、と…。
触れたいけど、触れるのを躊躇して背中合わせに落ち着くビルス様。
本音を喋らせれば少しは甘くなるだろうと頑張ったのですが、甘くなりませんでしたorz
せ、精一杯の素直を書いたつもりです(汗)
心と愛だけは沢山込めさせていただきました!(>_<)
これからも仲良くしてやってください!
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