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風は吹く、暖かく柔らかく。
光は注ぐ、高く優しく。
夢主は空を仰ぎ、暖かな気温と心地よい風に思わずあくびが出そうになって息を飲んだ。
傍らには予言魚。
目の前にはお茶とクッキーを添え座って読書をしているウイス。
園庭の花の香りが届く
ビルス様が寝て数週間、いつ起きてくるか分からないこの星の主。
正直退屈である。
夢主は地球生まれの地球人。
3年程前、ビルス様の命令で、強引にウイスに連れてこられビルス様の世話係になった。
「おい、夢主
夢主が作るこれ美味しいな。
お茶いれて欲しい。」
『ふふ、ありがとう。
お茶のお代わりね。作らないとないかも』
ポットの蓋を取り覗く夢主。
予言魚にはちょっと大きいクッキーを頬張りながら言う予言魚がんーと小さく呟き、ウイスおやと言って本を閉じた。
『…?』
「またお前等だけで食ってるな…」
ペタペタと足音をさせ現れたのはビルス。
『あ、ビルス様…』
「珍しいですね、目覚まし爆弾の前に起きて来られるなんて。しかも寝て数週間で…」
「煩いよ、ウイス。
ちょっと眠れなくてね。」
大きなあくびをしてビルスはクッキーをつまみ、口に入れた。
『おはようございます。眠れないなんて大丈夫ですか?ビルス様…』
「………。」
『…?ビルス様?』
そんな中割って入るはウイス。
「やれやれ…ビルス様、つまみ食いなんてはしたないですよ。
先ずはお風呂に入って下さい。」
そのやり取りに夢主がクスリと笑って。穏やかでいて、なんとも言えない笑顔。
ビルスはフンっと鼻を鳴らしてそっぽを向いてから空と仰ぐ。
『あっ、と。
私はお食事の用意をしてきますね』
「夢主、ボクあれが食べたいな。
ぐしゃぐしゃってしてふわふわしたヤツ。」
『スクランブルエッグですね。
ビルス様の好きなケチャップとハムも付けます…!』
ふんわり笑って夢主はかけて行った。
「ビルス様…」
「分かってる、風呂だろ。」
ビルスが言い、主君は反論はせずに口を閉じて。
未だに空を見上げているビルスを背に風呂の用意に向かった。
夢主は台所へ着くと主であるスクランブルエッグの他にサラダとスープも良いなと野菜や材料を集め料理に取り掛かる。
(スープ…ビルス様、喜んでくれると良いな。)
平凡な手料理だが腕は確か。
それが気に入られたらしく、連れてこられた訳で。
夢主は手際よく作っていく。
この星に来て三年余り、手馴れたモノ。
風呂から上がって、ビルスは全て平らげ満足気にお腹をさすった。
「美味しかった様ですね…」
『あ、ウイスさん。私が…』
皿を片付けようとしたウイスに手を伸ばした夢主。
その手をビルスは掴み、制止させた。
「後はウイスにさせとけ。
夢主、ちょっと来い。」
『えっ、ビルス様、
わっ』
夢主の声が裏返る、ビルスは夢主を抱え、抱き上げる。
荷物を持つ様な感じだがしっかりと。
「夢主さん、ごゆっくり。」
『ウイスさん?
あ、あのビルス様何処へ…』
焦る夢主の声が遠のいてウイスは皿を積み上げた。
連れてこられた先は…
夢主の部屋。
『ビルス、様?』
「相変わらず騒がしいな、夢主は。
お前…」
部屋へ連れてこられた意図が分からず、夢主はハテナを浮かべていた。
そんな夢主へビルスはため息をついて抱き上げていた夢主を備え付けられているベッドへと下ろす。
「お前…さ、
ウイスから聞いたけど…
最近あまり寝てないんだって?」
『えっ、あの…大した事では…
ビルス様がいつ起きて来られるか分からないので…』
「何?
なんだい、ボクのせいにする気?」
『まさか、そんな。
ごめんなさい。
違います…』
慌てて否定する夢主にビルスは毛布を引っ張り夢主の目の前へ出した。
「今日はボクが見ててやるから、寝ろ」
『あの…でも…
お洗濯もしてないし…』
しどろもどろ話す夢主をビルスは睨んだ。
それに敵うはずも無くて。
夢主はベッドへ腰掛けるビルスに邪魔にならない様に寝転ぶと毛布をかぶる。
なんとなく重いのに、優しい気がする沈黙。
「子守唄でも唄おうか?」
髪に手を当て“冗談”を言うビルス。
三年もいたら分かって来た事の一つで。
頭に届く温もりが柔らかく、優しい。
本当は優しい…。
これも分かって来た事の一つ。
『ビルス様の子守唄ですか?
ん、
あったかい…ですね、手…』
夢主は睡魔がきて目を閉じた。
「破壊神を目の前に
本当に寝ちゃうなんて、ね。
夢主位だ。」
ビルスが呟いた時は夢主は夢の中。
ビルスは夢主の髪を掬って下ろして覗く。
スヤスヤと寝息を立てて眠る夢主が飛び込んで。
ビルスが寝る数週間前、夢主が言った言葉が耳へ掠める。
そう、眠る前に食事をしていた時だ。
二人っきりになった時、料理の味について話していたビルスへ、夢主はビルス様に料理やお世話を出来るのは数十年と言った。
破壊神であるビルスは何億年も生きていて、まだ何千年か、ずっと永い時を生きていくだろう。
地球人である夢主。
地球人の寿命はせいぜい80位。
寿命の長さが違うビルスと夢主。
先に居なくなるからとはにかんだ彼女。
悪気のない言葉だったが、ビルスには気になっていた。
だから数週間で起きて来たのだ。
ビルスなりに出したモノ…
ビルスは空を見つめ、クッと笑う。
そして夢主を見下ろし、ベッドへ乗り出した。
ギシっと音を立てて、ベッドが沈むが夢主は相変わらず寝息を立てている。
「危機感のないヤツ…
このまま…」
ビルスは夢主の首へ手を回す。
その振動に夢主はんっと、小さく声を漏らしたが、また規則正しい寝息を立ててベッドへ頭を預けた。
手元に触れた頬が温かい。
指先にトクトク伝わる心音。
夢主が生きている証。
このまま…時を止めて。
奪ってしまえばいい。
そう、破壊をする様に、夢主の時を止めて…
短い時を心音を。
止めて、閉じ込めて。
破壊をする様に、キミをこのまま
この時を綺麗に閉じ込めて。
残酷に奪って…
「破壊神は、
破壊神であるボクは…
私利私欲に破壊をして奪ってはダメなんだ。」
分かるかい、夢主。
夢の中、最後の言葉。
ビルス様の声が聞こえた気がして。
夢主は小さく声を上げた。
ビルスは目を閉じて、そっと手を離すとゆっくり息を吐き、夢主の頭を撫で、小さな温もりを残して部屋を後にする。
残された夢主は眠ったまま。
ビルスが去って行く事に気付く事は無く。
温もりが感じ無くて目を覚ました夢主の目に飛び込んだのはビルス様では無く、ウイス。
「目が覚めましたか?夢主。」
『あれ、ビルス様……
えっと、ウイスさん…おはようございます、でしょうか』
目をこすりながら完全に目が覚めてないのか、眠そうに言う夢主。
「おはようございます、夢主。
今から貴女を地球へ送りますね」
『あっ、はい。買い物ですか?
今…用意を…』
起き上がった夢主に、ウイスは小さく違いますと言う。
「夢主。
貴女を地球に帰します。ビルス様からの言いつけです。」
『地球に、帰すって…?
一体…』
聞き違いかと思って聞くもウイスは首を振る。
「ビルスから言われました。
お世話係は終わり…だそうです。
貴女は今日から地球で過ごすんですよ」
ウイスは淡々と言って、そして優しく笑い頭を撫でた。
「三年間ご苦労さまでした…」
風が少し冷たい…
夢主は頬を撫でる風に呟くと小さなくしゃみをして震える。
戻って来た以前の時は穏やかでいて、何もないが、それなりに幸せで。
今は以前と少し違う平凡な毎日。
幸せとは言えない気がする。
ビルス様の星から地球へ帰って来て半年以上が過ぎた。
春と、暑かった時が過ぎ、秋が訪れ季節は冬に入ろうとしている。
地球へ戻った夢主はブルマの元、料理係の下で働いていて。
忙しい毎日の中、足りない何かが増えていって。
眠れない夜を幾つも過ごした。
眠れないのは疲れと夢のせいと言い聞かせて。
残酷であたたかな甘い夢は覚めたら消えて冷めて。
ただ確かな事は、温もりがない空虚でいて平凡な以前とは違う日々。
数ヶ月前にビルスがウイスと共に現れたが、出る事はせずに帰ってしまう迄台所へこもっていた。
数時間滞在したビルスだったが、長く感じた。
背中合わせの時。
そしてまた今日現れたビルス様。
夢主は料理を作って、上に任せると部屋へ。
うつ伏せにベッドへ横たわる。
何がが足りない。
あの日、あの時夢の中感じた…温もりが感じられない。
目の前が歪んでぼやけて…
そんな中乱暴なノック音。
慌ててぬぐい、立ち上がった夢主の目の前、返事の前にドアを開けて入ってきたのはビルスだった。
『…ビ、ルス様…』
「ふぅん。寝不足に体調不良か…」
久しぶりに聞いたビルスの声が鼓膜にヒットして。温かい何かと切なさが胸を閉めてく。
本当は会いたかった人。
それは夢に見る程に...
『開けていいって言ってませんよ』
「そんなの知らない…」
返って来たのは、あの日のビルス様の声と
変わらないワガママでいて、横暴な態度。
出会った頃に惑わされた。
『寝不足に体調不良なのは本当です。』
背を向け窓に立つ夢主。
半年の間に伸びた夢主の髪が肩から落ちる。
「…夢主って…
泣き虫なんだ?」
『何の…』
事と言おうとしたその続きは遮られる、ビルスによって。
夢主を後ろから抱きしめたビルス。
「地球は寒いね」
久しぶりに会って出たセリフは予期せぬものだったがビルスらしい。
夢主の耳元で囁くビルスの腕に落ちるのは温かい雫。
止まらない涙。
『意味分からない…
ビルス様、相変わらずワガママでズルイ…です』
小さく続ける夢主。
いつもワガママでいて横暴。
人に言わせてばかりで本音を隠して。
それでも…
『「逢いたかった…」』
同時に出た言葉に夢主は驚き、ビルスは吹き出した。
『おかしくなんてありませんよ!』
夢主が振り向き、ビルスを見上げる。
ビルスはと言うとニンマリ笑っていて。
悔しいが、会いたかった笑顔。
『寂しかったんですからね。
勝手に連れて行って、勝手に地球に帰して。
ビルス様、逢いたかったならどうして…』
「ああ、そう。
逢いたかった?
…ボクそんな事言ったっけ?」
『今言いました!逢いたいならどうして前…』
「出てこなかったのは夢主じゃないか。
ボクの大好物の料理だけよこしてさ。」
“全部食べたよ”甘くズルイ言い方で。
ズルイ神様の言い訳一つ。
ここで許せば、負けだ。
だけど、言い返しても答えを用意している。
不器用でいて、夢主には上手な神様
勝てやしない。
この人には一生敵わない。
「今さ、ベジータに願い玉集めさせてる」
『ドラゴンボールを?』
覗き顔を上げる夢主へ、ビルスは目を泳がせ、ふっと息を吐いた。
「先に居なくなる。
あの日夢主が言っただろ。
だから…手放しだ方が良いと思ったんだ。
ボクはキミが居なくなっても生きてく…」
『だって…本当です…
私は…先に死んでしまいます、から…』
目を泳がせていたビルスが真っ直ぐ見るものだから夢主は少し言葉に詰まる。
真っ直ぐ見つめて、フッとビルスが笑う。
それはずっと見たかった柔らかな顔。
本当は知ってる、優しい人。
三年間ただのんびりと見て来たわけじゃない。
気まぐれでワガママな破壊の神は本当は優しい人だと。
離れていた半年余りは長くて、ビルス様の星にいた時より長く感じた。
それはお互い様の様で。
ビルスにも気が遠くなる長い時だった。
だけどビルスは言わない。
ずっと逢いたかった本当は優しい神様。
「夢主と離れて…考えたんだ。
ボクなりにね。」
『ビルス様…?』
「ボクと同じ時を過ごして欲しい。
永い時…残酷かもって思ったけれど。
願い玉で、同じ時を願って。
永くても夢主となら、楽しいと思うんだ」
永い永い時、退屈な日々に現れた夢主。
最初は興味となにか。
その何かは興味を追い越して、温かい気持ちに変えた。
温かい、優しくなれる気持ち。
言葉にすると“好き”と言う感情。
だけど、同じ時は過ごせない。
時を奪う事も出来ない。
なら一層、手放せばいいと。
背中合わせの二人。
「ボクより先に居なくならないで…夢主。」
最後甘く解かれる本音、破壊神の願い事。
いつだったか、神に願い事、願い等はないと言っていたビルス。
『ビルス様、一緒に居ても…いいの…?
あっ、いても良いのですか?』
「聞き返さないでよ。
返事は?」
『………、』
「はいって言わなきゃ…
キスするぞ」
背中合わせに二人、見ていた世界は違う景色だと思っていたけれど。
ビルス様と私、同じ景色、同じ思いだったの?
“二人ずっと一緒に居たい”
夢主は笑うと口を紡ぐ。
精一杯の仕返し、一度無理やり連れ出した癖に手放した。
ワガママで意地悪な神様へ。
「なんて、はいでもなんでもさ。
答えなくても、するつもりだけどね!」
ビルスは意地悪く笑って夢主の唇へ口を押し当てた。
柔らかな甘い初めての口付けに夢主が頬を染める。
だけど、何処かで感じた感覚の様な…
初めては実は少し前に。
手放すと決めたあの日、小さな温もりの正体。
眠る夢主にビルスは唇を落とした。
それはビルスの秘密。
「ずっと一緒に居よう…ボクの星で」
やっと出た小さな本音。
これから一緒に過ごしてく、大好きなキミと二人
キミと小さな星で。
ずっと離れず側にいて。
好きと言う優しく甘い感情。
始まるストーリーは甘いモノ。
二人、ビルス様の星で。
(二人とは心外ですね、私も居るのですが)(ウイスさん?)(でも良かったです、貴女が居なくなってどれだけ罪の無い星が破壊されたか…)(うるさい!余計な事言うなウイス)(ほっほっほ…顔が赤い様ですよ、ビルス様)(お前を破壊してやろうか)
Happy end?
~fin~
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