ごみ箱
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「お隣よろしいですか?」
カプセルコーポレーション主催のパーティに参加していた夢主は上からかけられた声に顔を上げる。
「えぇ。どうぞ。」
「ありがとうございます。」
隣の席に腰かけた男は見慣れない服装をしていた。
「あなたは皆さんの所へ行かないのですか?」
「こういう、沢山の人混みがどうも苦手で…。」
「そうですか。私も静かな場所で一息つきたいと思っていた所なんです。よろしければ話相手になっていただけませんか?」
綺麗な笑顔でそう申し出た男。
男はウイスと名乗り、豊富な知識や興味深い話で夢主を魅了した。
その話術に夢主もまたいつのまにか心を許し、自身のことをペラペラと男に喋っていた。
男と話すのは酷く楽しい。口から紡がれる話はどれも興味をそそる話題ばかりで、時間を忘れるほどだった。
「もう、夜も遅いですしお送りしますよ。」
普段の夢主ならば、この申し出を瞬時に断った。しかし、容認してしまったのはまだこの男の話を聞きたいと思ったからだ。
暗い帰り道の間も心を躍らせる会話は続く。
刹那に訪れた無言の時間に男が思い出したように口を開いた。
「そういえば夢主さん。」
「何ですか?」
「実はさっきからある言葉が思い出せなくて。」
「んー」と、顔に手を当て何かを考えているような様子を見せる。
「ほら、あれですよ。親切を装って女性を送っていき、途中で隙があれば乱暴を働こうとする危険な男…という意味の言葉。」
「あぁ、『送り狼』ですか?」
ヒュッと夢主が息を呑む。
背中に悪寒が走り、先程まで全く機能していなかった警報が頭の中で一気に鳴り響く。
(なぜ、今そんな話をしたんだろう…?)
顔を凍りつかせながら凝視する夢主に目もくれず「あぁ、そうでしたね。ありがとうございます。」と素知らぬ顔で答える。
夢主の中で不安が湧き、一気に膨れ上がった。
「あ、あの、もうすぐそこなのでここまでで大丈夫ですよ。」
「いえ、もうすぐそこなのでお送りします。」
笑顔で即答する男。
「でも、その、もう遅いですし、ウイスさんも帰ってお休みになられては…」
「お気遣いありがとうございます。ですが、私の種族は睡眠をとりませんので。」
そんな問答を繰り返しているうちにとうとう家の前までたどり着く。
「あ、ありがとうございます…。送っていただいて…。」
「いえいえ。」
しかし、男が踵を返す様子はない。
「なぜ、扉を開けないのですか?」
「………なぜ、ずっとそこに立っているんですか…?」
恐々と振り返った夢主に、緩やかな動作で距離を詰めていく。
その顔には先程までと打って変わって黒い笑顔が浮かんでいた。
……思えば、違和感はあった。
夢主の好みや価値観を最初から全て"知って"いて、その上で話を展開している様だった。
乾いた靴音が夢主の耳に嫌に大きく響く。
「いえ、夢主さんが安心して眠れるよう…隣で寝かしつけてあげようと思いましてね。」
逃げられないよう夢主の肩を抱き、扉に手をかける。
恐怖から体が動かず、言葉も出ない。
「まだまだ、夜は長いですし。」
男が手をかざすとしっかりと戸締りをした筈の鍵がガチャリと音を立てる。
夢主はこれから自分の身に起こることを想像して青ざめ、扉が開いて行く様子をただ呆然と見つめた。
カプセルコーポレーション主催のパーティに参加していた夢主は上からかけられた声に顔を上げる。
「えぇ。どうぞ。」
「ありがとうございます。」
隣の席に腰かけた男は見慣れない服装をしていた。
「あなたは皆さんの所へ行かないのですか?」
「こういう、沢山の人混みがどうも苦手で…。」
「そうですか。私も静かな場所で一息つきたいと思っていた所なんです。よろしければ話相手になっていただけませんか?」
綺麗な笑顔でそう申し出た男。
男はウイスと名乗り、豊富な知識や興味深い話で夢主を魅了した。
その話術に夢主もまたいつのまにか心を許し、自身のことをペラペラと男に喋っていた。
男と話すのは酷く楽しい。口から紡がれる話はどれも興味をそそる話題ばかりで、時間を忘れるほどだった。
「もう、夜も遅いですしお送りしますよ。」
普段の夢主ならば、この申し出を瞬時に断った。しかし、容認してしまったのはまだこの男の話を聞きたいと思ったからだ。
暗い帰り道の間も心を躍らせる会話は続く。
刹那に訪れた無言の時間に男が思い出したように口を開いた。
「そういえば夢主さん。」
「何ですか?」
「実はさっきからある言葉が思い出せなくて。」
「んー」と、顔に手を当て何かを考えているような様子を見せる。
「ほら、あれですよ。親切を装って女性を送っていき、途中で隙があれば乱暴を働こうとする危険な男…という意味の言葉。」
「あぁ、『送り狼』ですか?」
ヒュッと夢主が息を呑む。
背中に悪寒が走り、先程まで全く機能していなかった警報が頭の中で一気に鳴り響く。
(なぜ、今そんな話をしたんだろう…?)
顔を凍りつかせながら凝視する夢主に目もくれず「あぁ、そうでしたね。ありがとうございます。」と素知らぬ顔で答える。
夢主の中で不安が湧き、一気に膨れ上がった。
「あ、あの、もうすぐそこなのでここまでで大丈夫ですよ。」
「いえ、もうすぐそこなのでお送りします。」
笑顔で即答する男。
「でも、その、もう遅いですし、ウイスさんも帰ってお休みになられては…」
「お気遣いありがとうございます。ですが、私の種族は睡眠をとりませんので。」
そんな問答を繰り返しているうちにとうとう家の前までたどり着く。
「あ、ありがとうございます…。送っていただいて…。」
「いえいえ。」
しかし、男が踵を返す様子はない。
「なぜ、扉を開けないのですか?」
「………なぜ、ずっとそこに立っているんですか…?」
恐々と振り返った夢主に、緩やかな動作で距離を詰めていく。
その顔には先程までと打って変わって黒い笑顔が浮かんでいた。
……思えば、違和感はあった。
夢主の好みや価値観を最初から全て"知って"いて、その上で話を展開している様だった。
乾いた靴音が夢主の耳に嫌に大きく響く。
「いえ、夢主さんが安心して眠れるよう…隣で寝かしつけてあげようと思いましてね。」
逃げられないよう夢主の肩を抱き、扉に手をかける。
恐怖から体が動かず、言葉も出ない。
「まだまだ、夜は長いですし。」
男が手をかざすとしっかりと戸締りをした筈の鍵がガチャリと音を立てる。
夢主はこれから自分の身に起こることを想像して青ざめ、扉が開いて行く様子をただ呆然と見つめた。
1/3ページ