「今日で約1週間。最近のスパンを考えるとそろそろ起きて来そうですね。」

ウイスがそう呟き料理の品数を増やす。

「前は何十年も寝てたんだろ？ビルス様はよく寝んなぁ！」

早朝の家事、手伝いを終え、朝食にありついていた悟空がふと漏らした。

「お前らがドカドカうるさいから最近は全然寝られなけどな。」

欠伸をしながら広間に入ってきたビルス。「ちゃんと歯は磨きましたか？」というウイスの小言を気にも止めず、皿を抱えて朝食にがっつく。

「毎日、毎日。よく飽きないな。お前ら破壊神にでもなりたいのか？」

「オラただ強くなりてぇだけだって！」

「俺は、こいつに抜けがけされたくないだけだ。」

「それでもボクの眠りを妨げてるのに変わりないしね。…そろそろ本気で破壊しちゃおうかな。」

「じょ、冗談よしてくれよビルス様！」

フンっと鼻を鳴らし、また料理に手をつける。
すると突然キョロキョロと席を見渡し、料理を運んできたウイスを呼び止めた。

「おい、ウイス。夢主はまだ起きて来ないのか？」

ビルスのその言葉に悟空とベジータは顔を見合わせる。
この星には自分達以外にも住人がいたのか、と。
しかし、ウイスは表情を変える事なくビルスに告げる。

「ビルス様。夢主さんはもうここには居ませんよ。」

ガチャン！！とビルスが手に持っていたお皿を落とした。

「………そう、だったな。」

「そうですよ。まだ寝ぼけていらっしゃるようですね。お顔を洗ってきてはいかがです？…酷い顔ですよ。」

「うるさい。」と返事をし、覚束ない足取りで洗面所へ向かった。





今日も今日とて、悟空とベジータは強さを求め修行を重ねる。

「ふむふむ。ほほう。これは楽しみだ。」

「またあいつらの未来を予言してるのか？」

硝子の鉢の中で揺れて、ワクワクと胸を躍らせている予言魚にビルスは「好きだな、キミも。」と呆れながら声をかけた。

「あいつらの未来は見てて飽きない。過去なんかに見向きもせず、常に先の未来の敵を見据えて強さを追い求めてる。」

過去に見向きもしない。その言葉が、嫌にビルスの中に響き、暴れまわる。
『話しかけたのは失敗だったか』と内心ごちつつも、勤めてどうでも良さそうな態度をとる。

「……くだらないな。ふわぁぁ。ボク、もう一度寝るよ。」

「ホントによく寝るな。…そんなにその夢にしがみつきたいのか？」

予言魚の核心をついた物言いに返事もせずビルスは1人寝台のある間へと足を進めた。






長い、長い眠りの中で、それはそれは幸せな夢を見る。

『やぁ、また逢ったね。』

『ビルス様！また逢いに来てくださったんですか！』

夢の中で会う彼女は、いつも眩しい程の笑みを湛えていた。

『ホント、何千年経っても、キミだけは色褪せないね…。』

『ビルス様！今日はどんなお話をしてくれるんですか？』

『そうだな、今日は何の話をしようか。そうだ。最近、ボクの星にサイヤ人が2人来てねーーーー




癖になる程の幸福な時間を噛み締め、幸せそうな顔で夢をみるビルスの目からは一筋の涙が溢れていた。