「私の勝ちですね。何に致しましょうか。」

（ば、罰ゲームを設けた瞬間に負けた…。）

午後のティータイム。
夢主はウイスと共にちょっとしたゲームをしていた。
連勝続きで気が大きくなっていた所でウイスに提案された『負けた方は何か罰ゲームをしましょう』という餌にまんまと飛びついた数分前の自分を恨み、肩を落とす。

方や、ウイスは愉快そうに暫く考えた後、何かを企んでいるような笑みを浮かべて言った。

「では、目を閉じてください。」

「え、何をするんですか…？」

「それを言ってしまったら面白く無いじゃありませんか。」

意地の悪い笑顔が更に黒く煌めく。
嫌な予感しかしないが、しかし所詮夢主は敗者の身、言われた事に従う他なく、渋々と目を閉じた。

「私が良いというまで開けないで下さいね。」

ゆっくりと何かが近づいてくる気配がする。

（…え、ま、まさか、）

予想した考えにあたふたし、緊張から服の裾をギュッと握った。
目を瞑った事で自分の鼓動がより大きく耳に響く。
その間にも徐々に気配は近づき、顔の前でまたゆっくりとその動きを止めた。
いよいよかと夢主がぐっと息を詰める。

すると、おでこにピンッと軽い衝撃が走り夢主は思わず目を開けた。
目の前にウイスの手のひらがあり、ショートしていた思考が遅れて何が起こったのかを導き出す。

「でこ、ぴん…？」

「おや、残念そうですね。」

ウイスが楽しげにクスクスと笑う。

「何を、されると思ったんですか？」

流し目で微笑まれ、夢主の顔がカァと赤く染まる。

「か、片付けてきます！！」

ドタバタと食器を抱えその場から一目散に逃げ出した。

「おやおや、そんなに慌てて片付けなくても。」

その後ろ姿を見送りながらウイスは満足げに笑い、残りの紅茶を飲み干した。