「では、今から貴方に舞空術をお教えいたします。まず、気というものはご存知ですか？」

「存じ上げません。」

「そうですか。ではまずその説明からいたしましょう。」

想定内と言うような反応を返し、淡々と未知の世界の話をしていく目の前の人を見て、私は内心でため息をついた。
飛ぶ？宙に浮く？何の力も持たない人間が？
………できるわけがない。

気と言う物の存在はまぁ、見てしまったので実在するのかもしれないが、それはあくまで貴方達が神であるからこそなせる技なのだ。
一介の人間ができるなんてそんなのありえない。

「…と、ここまでは理解出来ましたか？」

「え、…はぁ…まぁ…。つまり、体の中に流れるエネルギーの様なものでしょうか？」

「まぁ、取り敢えずはその感覚でいいでしょう。」

細かに説明されたところで実際こちらがやるときはフィーリングに頼るしか手はないのだろう…。

「では、手を出してください」

「あ、はい…。」

言われた通り手を差し出すと同じように手をかざされ、そこから眩しい光が放たれた。
光が収まるとクルッと背を向け、「では、行きましょうか」と先を歩いて行った。

「あ、あの何処へ…？」

「習うより慣れろ、ですよ。今ので貴方の気を少しだけ解放しましたので、実際に飛んでコツを掴みましょう。その為の最高のロケーションへ、です。」

歩みを止めず顔だけこちらに振り返り笑みを浮かべているウイスさんを走って追いかける。
向かう先は階段の上なのだが、激しく嫌な予感しかしない…。