イベント番外
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2月14日。バレンタインデー。
女性がチョコレートをしたためるであろうこの日。
私の手元にはせっかくだから、とブルマさん邸で作らせてもらったチョコレートがある。
…今現在、このチョコの扱いに非常に困っているのだ。
(どうしよう。もう既製品のチョコを渡しちゃったしなぁ…)
誰かにあげるか、自分で食べるか。
うだうだ考えているうちにビルス様の星に戻って来てしまい、選択肢は4択になってしまった。
ビルス様か、ウイスさんか、予言魚さんか、自分か。
(やっぱりビルス様かな?立場的に。)
いや、でもさすがに既に渡しておいて、もう一度、しかも今度は手作りだなんて…
「……意味深すぎるよね…。」
広間のテーブルには帰り際にブルマさんからお土産で貰ったチョコレートが積み上げられている。
(ここに紛れ込ませておけばいいかな。)
せっかく作ったのだから、誰かに食べてもらいたい気もするし。
この中なら恐らくビルス様の手に渡るだろう。
まぁ、100%義理であろうこのチョコレート達と同じ括りにされてしまうのは、少しだけ寂しく感じてしまうけど。
「……って、このチョコだって義理だよ…。」
なんで寂しくなってるんだ私…。
頭を振って妙な思考を追いやる。
山積みになっているチョコレートに紛れ込ませようとした時、そのパッケージが目に入った。
「あ…。」
そうだった…どうして忘れていたんだ。
ブルマさんはカプセルコーポレーションのご令嬢。
当然贈られるチョコレートなんて、その辺で買えてしまうようなものである筈がない。
見える範囲で確認しても、そこに並ぶのは超高級ブランドのチョコレートばかりだった。
「……やめておこう…。」
途端に自分の持っているそれが貧相でちっぽけな物に見えてくる。
きっとここにある分だけでビルス様も満足されているだろう。
これは自分で消費することにしよう…。
「食べたいチョコレートでもあったの?」
声のした方に振り向くと、マグカップ片手にビルス様がこちらに歩いて来ていた。
さっきから何となく感じていた鼻腔をくすぐる甘い匂いの元は、てっきりここにあるチョコレートだと思っていたが、ビルス様の持っているマグカップからだったらしい。
近くまで来たビルス様は私が手に持っている物に気付き、目を細めて凝視している。
「あっ…!違います!ここから取ったとかではなくて、これは私が用意したものでして…。」
硬い顔つきのままテーブルにマグカップを置く。
「…誰に。」
「あー…さっきまでビルス様にどうかと思っていたのですけれど…」
「いる。」
「あっ…ちょ、ちょっと待ってください…!」
私の持っているチョコに伸ばされた手を体を捩ってかわす。
「あの、実はこれ既製品ではなくて私が作ったものなんです。なのでブルマさんに頂いたものの方が…。」
「いる。」
手のひらを出してさっきと同じ言葉をもう一度ハッキリと言った。
「ボクのなんだろ?なら、いるよ。」
一歩も引かないといった雰囲気に結局根負けして、その手に渋々チョコを乗せた。
目の前で包みを開けて1つ摘み口に放る。
もぐもぐと咀嚼する間必然的に無言の時間が訪れ、その空気に何故か緊張してしまう。
飲み下してふむ、と一息つくビルス様に恐々と口を開いた。
「どうでしょう…?」
「美味しいよ。ただ、あれはブランドって誇るだけの事はあるみたいだね。天地の差だ。」
……手厳しすぎる…。
「まぁ…そうでしょうね…。」
私はパティシエじゃないんだもの…。
分かってはいた。分かってはいたんだけども…!
はぁ…、と落胆の色が隠せない。
「ん。でも、欲しいと思えるのはこっちだね。飽きないや。」
親指についたパウダーを舐めながらしみじみと頷く。
「もっと欲しくなるよ。夢主のは。」
胸のあたりがふわふわする。
嘘やお世辞では無いのだ。
陶酔しているかのように私のチョコを噛みしめるビルス様の顔に。
こそばゆい微かな愉悦に浸り眺めている私に何を思ったのか、ビルス様が身を盾にして手元のチョコを隠した。
「……そっちの山積みになってる方ならいいけど、"これ"はあげないよ?ボクのだから。」
代わりに、と言うようにマグカップを差し出され咄嗟に受け取ってしまった。
「あ、え…?」
渡されたマグカップとビルス様を交互に見てオロオロしている私を余所に最後のチョコレートを摘む。
「いいよ。元々夢主にやるつもりだったものだし。」
また、ふわふわと気分が舞う。
「いらなかったら捨てればいい。チョコ、ごちそうさま。」
「…あ、こちらこそ。」
広間の出口に歩みを進めながらビルス様がヒラヒラと手を振った。
手の中でゆらゆらと揺れながら舞い上がる湯気は、どこか今の自分の心情と似ている気がする。
「……甘い。ココアかな?」
浮き上がっている心が更にじんわりと暖かくなる味に、思わず「ふふっ」っと頬が綻んでしまった。
***
夢主からチョコレートを貰う数分前、ビルスは台所で枠に収まっている小分けチョコレートを睨みつけていた。
『バレンタインに女性からアプローチをかけるのは全世界共通と言うわけではないそうですよ。むしろ、男性からアプローチをかける文化の方が多い様で。』
『ふ〜ん。そんな事より、もう飽きたよ。このチョコレートとか言うやつ。何だか塩気の効いた物が食べたいなぁ。』
『あら、良いんですか?だ〜いチャンスじゃありませんか。』
『……神であるボクが参加なんてするわけ無いだろ。そんな世俗的なイベント。』
『とか言いつつ、ちゃっかり用意しているじゃありませんか。チョコレート。』
『あっ!お前いつの間に!返せっ!!』
『あら、おほほほ!』
そんなやり取りの最中、ウイスからひったくったのがこの目の前のチョコレートである。
「大チャンス…ね。」
渡すのか、渡さないのか。
視界の端でつい先ほど入れたホットミルクがゆらゆらと湯気を立ち込めて、心なしか急かされている気分になる。
「…こんなのに頼らなくてもいつか絶対伝えてやるっての。」
そんな決意とも悪態とも取れる言葉を吐き捨てて、マグカップにバチャバチャとチョコレートを沈めた。
ーーー
Happy Valentine!!
女性がチョコレートをしたためるであろうこの日。
私の手元にはせっかくだから、とブルマさん邸で作らせてもらったチョコレートがある。
…今現在、このチョコの扱いに非常に困っているのだ。
(どうしよう。もう既製品のチョコを渡しちゃったしなぁ…)
誰かにあげるか、自分で食べるか。
うだうだ考えているうちにビルス様の星に戻って来てしまい、選択肢は4択になってしまった。
ビルス様か、ウイスさんか、予言魚さんか、自分か。
(やっぱりビルス様かな?立場的に。)
いや、でもさすがに既に渡しておいて、もう一度、しかも今度は手作りだなんて…
「……意味深すぎるよね…。」
広間のテーブルには帰り際にブルマさんからお土産で貰ったチョコレートが積み上げられている。
(ここに紛れ込ませておけばいいかな。)
せっかく作ったのだから、誰かに食べてもらいたい気もするし。
この中なら恐らくビルス様の手に渡るだろう。
まぁ、100%義理であろうこのチョコレート達と同じ括りにされてしまうのは、少しだけ寂しく感じてしまうけど。
「……って、このチョコだって義理だよ…。」
なんで寂しくなってるんだ私…。
頭を振って妙な思考を追いやる。
山積みになっているチョコレートに紛れ込ませようとした時、そのパッケージが目に入った。
「あ…。」
そうだった…どうして忘れていたんだ。
ブルマさんはカプセルコーポレーションのご令嬢。
当然贈られるチョコレートなんて、その辺で買えてしまうようなものである筈がない。
見える範囲で確認しても、そこに並ぶのは超高級ブランドのチョコレートばかりだった。
「……やめておこう…。」
途端に自分の持っているそれが貧相でちっぽけな物に見えてくる。
きっとここにある分だけでビルス様も満足されているだろう。
これは自分で消費することにしよう…。
「食べたいチョコレートでもあったの?」
声のした方に振り向くと、マグカップ片手にビルス様がこちらに歩いて来ていた。
さっきから何となく感じていた鼻腔をくすぐる甘い匂いの元は、てっきりここにあるチョコレートだと思っていたが、ビルス様の持っているマグカップからだったらしい。
近くまで来たビルス様は私が手に持っている物に気付き、目を細めて凝視している。
「あっ…!違います!ここから取ったとかではなくて、これは私が用意したものでして…。」
硬い顔つきのままテーブルにマグカップを置く。
「…誰に。」
「あー…さっきまでビルス様にどうかと思っていたのですけれど…」
「いる。」
「あっ…ちょ、ちょっと待ってください…!」
私の持っているチョコに伸ばされた手を体を捩ってかわす。
「あの、実はこれ既製品ではなくて私が作ったものなんです。なのでブルマさんに頂いたものの方が…。」
「いる。」
手のひらを出してさっきと同じ言葉をもう一度ハッキリと言った。
「ボクのなんだろ?なら、いるよ。」
一歩も引かないといった雰囲気に結局根負けして、その手に渋々チョコを乗せた。
目の前で包みを開けて1つ摘み口に放る。
もぐもぐと咀嚼する間必然的に無言の時間が訪れ、その空気に何故か緊張してしまう。
飲み下してふむ、と一息つくビルス様に恐々と口を開いた。
「どうでしょう…?」
「美味しいよ。ただ、あれはブランドって誇るだけの事はあるみたいだね。天地の差だ。」
……手厳しすぎる…。
「まぁ…そうでしょうね…。」
私はパティシエじゃないんだもの…。
分かってはいた。分かってはいたんだけども…!
はぁ…、と落胆の色が隠せない。
「ん。でも、欲しいと思えるのはこっちだね。飽きないや。」
親指についたパウダーを舐めながらしみじみと頷く。
「もっと欲しくなるよ。夢主のは。」
胸のあたりがふわふわする。
嘘やお世辞では無いのだ。
陶酔しているかのように私のチョコを噛みしめるビルス様の顔に。
こそばゆい微かな愉悦に浸り眺めている私に何を思ったのか、ビルス様が身を盾にして手元のチョコを隠した。
「……そっちの山積みになってる方ならいいけど、"これ"はあげないよ?ボクのだから。」
代わりに、と言うようにマグカップを差し出され咄嗟に受け取ってしまった。
「あ、え…?」
渡されたマグカップとビルス様を交互に見てオロオロしている私を余所に最後のチョコレートを摘む。
「いいよ。元々夢主にやるつもりだったものだし。」
また、ふわふわと気分が舞う。
「いらなかったら捨てればいい。チョコ、ごちそうさま。」
「…あ、こちらこそ。」
広間の出口に歩みを進めながらビルス様がヒラヒラと手を振った。
手の中でゆらゆらと揺れながら舞い上がる湯気は、どこか今の自分の心情と似ている気がする。
「……甘い。ココアかな?」
浮き上がっている心が更にじんわりと暖かくなる味に、思わず「ふふっ」っと頬が綻んでしまった。
***
夢主からチョコレートを貰う数分前、ビルスは台所で枠に収まっている小分けチョコレートを睨みつけていた。
『バレンタインに女性からアプローチをかけるのは全世界共通と言うわけではないそうですよ。むしろ、男性からアプローチをかける文化の方が多い様で。』
『ふ〜ん。そんな事より、もう飽きたよ。このチョコレートとか言うやつ。何だか塩気の効いた物が食べたいなぁ。』
『あら、良いんですか?だ〜いチャンスじゃありませんか。』
『……神であるボクが参加なんてするわけ無いだろ。そんな世俗的なイベント。』
『とか言いつつ、ちゃっかり用意しているじゃありませんか。チョコレート。』
『あっ!お前いつの間に!返せっ!!』
『あら、おほほほ!』
そんなやり取りの最中、ウイスからひったくったのがこの目の前のチョコレートである。
「大チャンス…ね。」
渡すのか、渡さないのか。
視界の端でつい先ほど入れたホットミルクがゆらゆらと湯気を立ち込めて、心なしか急かされている気分になる。
「…こんなのに頼らなくてもいつか絶対伝えてやるっての。」
そんな決意とも悪態とも取れる言葉を吐き捨てて、マグカップにバチャバチャとチョコレートを沈めた。
ーーー
Happy Valentine!!
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