日常
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ある夜、大画面に映し出される大量の選択肢を流し見てビルスは「ん〜。」と唸る。
「どれもイマイチ興味をそそられないなあ。……神チューブも質が落ちたもんだ。」
テーブルに足を乗せて踏ん反り返りながらリモコンを操作する主人に夢主はお茶を入れた。
(神チューブ……。神さまの世界にも動画サイトとかあるんだ……。)
ビルスが流し見ていた投稿動画のありがちなキャッチコピーに目が止まり、思わず読み上げる。
「……全宇宙が涙した感動のラブストーリー…?」
「見たいのか?」
その声に反応したビルスが再生ボタンを押した。
「あ…。」
「そういう訳では…。」という訂正も、流れ出したオープニングと引かれた椅子により入れにくくなってしまう。
いつまでも突っ立っている夢主にビルスが怪訝そうな表情を浮かべた。
「始まるぞ。座らないのか?」
「えっと…では、失礼します…。」
再生された映画は何処にでもある、いい意味での王道物だった。
『僕は君の為なら何だってする…。愛しているよ…。』
『私も…。』
(私は面白いと思うけど…ビルス様はこんなの見てて楽しいのだろうか…。)
画面に顔を向けたまま隣のビルスの表情を窺うと、しかめっ面で睨みつけているのが目に入る。
「…あの、つまらないようでしたら変えて頂いても…。」
「いや、つまらない訳じゃない。ただ…。」
「…ただ…?」
「…客観的に観ると、こうも愚かなもんなのかと痛感しただけだ。」
そう、げんなりと零した。
「恋愛事に現を抜かす連中を、随分と下に見てたんだけどなぁ…。」
お茶をすすってポツリと呟いたビルスに夢主は目を瞬かせる。
「もしかして…ビルス様も、誰かに想いを寄せていたりするのですか?」
視線を寄越し、深淵のような深い瞳で真っ直ぐ自身を見据えるビルスに夢主が慌てて言葉を撤回しようとする。
「あ…すみません!…出すぎた質問を…。」
「夢主は、」
「地球での生活に戻りたいと思っているか?」
「…え?……あ……。」
問いかけの意味を理解するや否や、言葉に詰まり口ごもる。
( 動揺と困惑…か…。)
予想していたはずの反応に落胆しビルスは視線をそらした。
「……いや、いい。今のは忘れろ。」
「………はい…。」
それからどちらとも無言になり、画面から流れる音だけが響く。
(私…なんで、今…。)
何かに思考を巡らせていた様子の夢主がエンドロールを前にして席を立った。
「湯のみ…お下げしますね。…洗い終わったら今日はもう休ませていただきます。映画、とっても面白かったです。ありがとうございました。」
「ああ。」
気配が遠のいたのを感じてから、ビルスは表情を歪め舌打ちをする。
「……まだ、随分と遠いみたいだな…。」
テーブルに乗せていた足を組み替え、画面を滑る文字をぼんやりと眺めた。
***
寝支度を整えてベッドに横になる。
後は眠るだけとなり手持ち無沙汰になると、頭に浮かぶのはやはり先ほど感じたある疑問。
『地球での生活に戻りたいと思っているか?』
「どうして…。」
……あの時、すぐに「はい。」って浮かばなかったんだろう…。
恐怖が思考を支配して、とか、そんな理由じゃなかった。自分の明確な意思で、「ここに居たい。」と口走りそうになった。
何故そんな事を思ったか。
…まだ、もう少し側にいたいと思ってしまったからだ。
誰の…?………
「………やめよう…疲れてるんだ。きっと…。」
それ以上考える事が怖くなり、答えが弾き出される前に布団に潜る。
「あー、明日も早い事だしもう、寝よう。羊でも数えようかな。」
意識を逸らす為に誰に向けたわけでも無く、暗闇に言葉を放つ。
……その夜はなかなか寝付くことが出来ず、数えた羊の数は3桁を優に超えてしまった。
「どれもイマイチ興味をそそられないなあ。……神チューブも質が落ちたもんだ。」
テーブルに足を乗せて踏ん反り返りながらリモコンを操作する主人に夢主はお茶を入れた。
(神チューブ……。神さまの世界にも動画サイトとかあるんだ……。)
ビルスが流し見ていた投稿動画のありがちなキャッチコピーに目が止まり、思わず読み上げる。
「……全宇宙が涙した感動のラブストーリー…?」
「見たいのか?」
その声に反応したビルスが再生ボタンを押した。
「あ…。」
「そういう訳では…。」という訂正も、流れ出したオープニングと引かれた椅子により入れにくくなってしまう。
いつまでも突っ立っている夢主にビルスが怪訝そうな表情を浮かべた。
「始まるぞ。座らないのか?」
「えっと…では、失礼します…。」
再生された映画は何処にでもある、いい意味での王道物だった。
『僕は君の為なら何だってする…。愛しているよ…。』
『私も…。』
(私は面白いと思うけど…ビルス様はこんなの見てて楽しいのだろうか…。)
画面に顔を向けたまま隣のビルスの表情を窺うと、しかめっ面で睨みつけているのが目に入る。
「…あの、つまらないようでしたら変えて頂いても…。」
「いや、つまらない訳じゃない。ただ…。」
「…ただ…?」
「…客観的に観ると、こうも愚かなもんなのかと痛感しただけだ。」
そう、げんなりと零した。
「恋愛事に現を抜かす連中を、随分と下に見てたんだけどなぁ…。」
お茶をすすってポツリと呟いたビルスに夢主は目を瞬かせる。
「もしかして…ビルス様も、誰かに想いを寄せていたりするのですか?」
視線を寄越し、深淵のような深い瞳で真っ直ぐ自身を見据えるビルスに夢主が慌てて言葉を撤回しようとする。
「あ…すみません!…出すぎた質問を…。」
「夢主は、」
「地球での生活に戻りたいと思っているか?」
「…え?……あ……。」
問いかけの意味を理解するや否や、言葉に詰まり口ごもる。
( 動揺と困惑…か…。)
予想していたはずの反応に落胆しビルスは視線をそらした。
「……いや、いい。今のは忘れろ。」
「………はい…。」
それからどちらとも無言になり、画面から流れる音だけが響く。
(私…なんで、今…。)
何かに思考を巡らせていた様子の夢主がエンドロールを前にして席を立った。
「湯のみ…お下げしますね。…洗い終わったら今日はもう休ませていただきます。映画、とっても面白かったです。ありがとうございました。」
「ああ。」
気配が遠のいたのを感じてから、ビルスは表情を歪め舌打ちをする。
「……まだ、随分と遠いみたいだな…。」
テーブルに乗せていた足を組み替え、画面を滑る文字をぼんやりと眺めた。
***
寝支度を整えてベッドに横になる。
後は眠るだけとなり手持ち無沙汰になると、頭に浮かぶのはやはり先ほど感じたある疑問。
『地球での生活に戻りたいと思っているか?』
「どうして…。」
……あの時、すぐに「はい。」って浮かばなかったんだろう…。
恐怖が思考を支配して、とか、そんな理由じゃなかった。自分の明確な意思で、「ここに居たい。」と口走りそうになった。
何故そんな事を思ったか。
…まだ、もう少し側にいたいと思ってしまったからだ。
誰の…?………
「………やめよう…疲れてるんだ。きっと…。」
それ以上考える事が怖くなり、答えが弾き出される前に布団に潜る。
「あー、明日も早い事だしもう、寝よう。羊でも数えようかな。」
意識を逸らす為に誰に向けたわけでも無く、暗闇に言葉を放つ。
……その夜はなかなか寝付くことが出来ず、数えた羊の数は3桁を優に超えてしまった。