日常
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「酒盛りするからお前も付き合え。」
「え…。」
「なに?なんか不満なの?」
「いえいえ!」
料理を食べ終えてそう一言発したビルス様に思わず苦い声が出てしまった。
いきなり突拍子も無い事を言い出すのはいつもの事なのだが、いかんせん今回は内容が悪い。
……私はお酒が飲めないのである。一滴も。
「えっと…せっかくですが、私はまだ片付けが残っておりますので…。」
穏便に済ませようと如何にもな理由で遠回しにNOの意思を伝えようと試みる。
「そう。じゃあそれが終わってからでもいいよ。」
「……それですと…とても時間が遅くなってしまいますし…。」
「ボクは先に飲んでるから気にしなくていい。」
「いや、あの、でも…。」
「頑なだな。」
ビルス様の目つきが鋭くなる。
「……ボクの酒が飲めないって言うの?」
「の、飲めます!お付き合いさせていただきます!」
なんてこった…。
……いくら普通に会話できるようになったと言っても凄まれるとやはり怖い…。
理不尽な上司よろしく、かけられた威圧に条件反射で言葉が出てしまった。
ブラック企業顔負けの横柄さだよ…。
「ウ、ウイスさんもご一緒にいかがでしょう?」
「私は予言魚さんとの先約がありますので。」
せめてもの抵抗にウイスさんを巻き込もうと思ったがきっぱりと断られてしまった。ガッテム。
「えっと…では、夜にお持ちしますね…ビールで宜しいでしょうか…?」
「ああ。……キミも好きなやつ飲んでいいぞ。テキーラとシャンパン以外な。」
…自分の分だけオレンジジュースにしよう。
テーブルにお酒と軽いおつまみを並べると、グラスに並々ビールを注がれ、差し出されてしまった。
……取り敢えずビール、と言う文化は神々の間でも暗黙の了解的な何かなのだろうか…。
「あ…ありがとうございます…。」
飲む振りをしてやり過ごそうかと考えていたが、ビルス様がジッとこちらを見ているのでそうもいかなくなってしまった。
「…いただきます。」
グビッと一口飲んでみる。…うぅ、苦い。
「とても、美味しいです。」
たとえ口に合わなくても"美味しい"と言ってしまうのはお国柄の特性だ…。
「そう。」
マズイ…いや、味の方じゃなくて状況が……。
頭がふらふらする…。
たった一口でこれはマズイぞ自分…。
これは料理と水でお酒をやり過ごすしかなさそうだ…。
***
酒盛り初めて1時間後。夢主は机に突っ伏して寝息を立てていた。その様子を眺めてビルスは頬杖をついて舌打ちをする。
(全然ダメじゃないか…。)
『男女の仲はお酒の席で発展しやすいの。お酒が入ると緊張が解れて必然的に会話も盛り上がるわ。』
ブルマがヤムチャにしていたアドバイスをこっそり盗み聞きしていたビルスは早速と試してみたが、夢主がお酒に弱すぎたため会話どころではなくなってしまった。
渋っていたのは単にお酒が好きではないからと思っていたので、とんだ誤算に肩を落とす。
「はぁ…。しょうがない。……おい、夢主。寝るなら自分の部屋で寝ろ。」
「うぅん…。起きてま、ふよ…。」
意識が朦朧としているようで呂律すらしっかり回っていない。
片手をひらひらと上げ、ベシャっとまた机に力尽きる。
「…まふよ……。…おい、立てるか?」
「ん〜……。」
唸るばかりで起きる気配が全くない。
「仕方がない。」と夢主の肩と膝の裏に手を回し持ち上げた瞬間、閉じていた目がパチっと開いた。
目が合ったことでビルスが一瞬固まり、狼狽する。
「お、お、起きてるんなら自分の足で歩っ…!」
「あはは、おひめさまらっこだぁ。」
嬉しそうに笑う夢主に面食らってまた固まる。
やがて少し逡巡した後、夢主を抱えたままソファに腰掛けた。
「……こんな状況…素面ならあり得ないしね。」
そう呟いてご機嫌にケタケタわらっている夢主を膝の上に降ろし、そっと抱きしめた。
まともに会話出来るようになったとは言えまだ少しビルスを恐れている夢主と、夢主に対して素直に接する事が出来ないビルス。
普段のその背景を考えると、この状況はまたとない奇跡だった。
「あはは、あったかい…れすね…。」
「れすねって…。キミ、お酒弱かったんだね。」
「よわくないれす…。よっへないれすもん…。」
「酔っ払ってる奴は皆んなそう言うんだよ。」
「んふふ……。すぅ…。」
不思議な感覚だった。夢主が楽しげに自分と会話をしている。
自身の腕の中で寝息をたてはじめた夢主の顔を見つめ、ビルスの頭にある事がよぎる。
(……今なら、こいつの全てをボクのものにできるんじゃないか?)
心に囁かれた誘惑は瞬く間に大きくなり冷静な思考を蝕んだ。
(第一、明日には覚えてない可能性だってあるんだ。)
薄く開かれた唇に自身のそれを誘われるように重ねてみる。
ほんのりとアルコールの香る口付けは今まで食べたどんな料理よりも甘美なものだった。
それが、徐々にビルスのストッパーを外して行く。
(甘い…。)
さっきよりも、もう少しだけ深く踏み込むと夢主がくぐもった声を出す。
五感を揺さぶられ、のめり込み脱け出せなくなる。
(このまま、今ここでー)
「ふぅ…ん…。」
夢主が一瞬身動いだ事でハッと息を呑む。
腕の中を確認すると、何も知らないようなあどけない表情を浮かべ寝息を立てていた。
そんな夢主を壊れないよう少しだけキツく抱きしめて1度、大きく深呼吸をする。
何故やめるんだ、と訴えるように身体中を叩いていた拍動がようやく治った頃、静かに立ち上がった。
ベッドに寝かせ、気持ちよさそうに眠っている夢主をそっと撫でてから逃げるように部屋を後にする。
(マズイ……。)
自分の理性を抑えきれなくなってきている事をビルスは実感していた。
欲に塗り潰されている中、それでも思い留まる事が出来たのは不意に途方もない虚しさを感じたからだった。
心がそこに無いのなら、その行為に意味はない。
無理矢理手に入れて泣かせたいわけじゃ無い。それでも……
(別にあのまましてもよかったんじゃ…)
未練がましい思いは思考に纏わりつき、遂にはビルスに弱音を吐露させた。
「……もしかすると、夢主の心は手に入らないかもしれないんだから……。」
口をついて出た考えを否定するように頭をふり、テーブルに残っていたお酒を煽る。
「全く……破壊神ともあろう者が情けない……。」
そう弱々しく呟き、未だに残る癖になりそうな程甘い感触を消し去るために次のお酒の栓を開けた。
「え…。」
「なに?なんか不満なの?」
「いえいえ!」
料理を食べ終えてそう一言発したビルス様に思わず苦い声が出てしまった。
いきなり突拍子も無い事を言い出すのはいつもの事なのだが、いかんせん今回は内容が悪い。
……私はお酒が飲めないのである。一滴も。
「えっと…せっかくですが、私はまだ片付けが残っておりますので…。」
穏便に済ませようと如何にもな理由で遠回しにNOの意思を伝えようと試みる。
「そう。じゃあそれが終わってからでもいいよ。」
「……それですと…とても時間が遅くなってしまいますし…。」
「ボクは先に飲んでるから気にしなくていい。」
「いや、あの、でも…。」
「頑なだな。」
ビルス様の目つきが鋭くなる。
「……ボクの酒が飲めないって言うの?」
「の、飲めます!お付き合いさせていただきます!」
なんてこった…。
……いくら普通に会話できるようになったと言っても凄まれるとやはり怖い…。
理不尽な上司よろしく、かけられた威圧に条件反射で言葉が出てしまった。
ブラック企業顔負けの横柄さだよ…。
「ウ、ウイスさんもご一緒にいかがでしょう?」
「私は予言魚さんとの先約がありますので。」
せめてもの抵抗にウイスさんを巻き込もうと思ったがきっぱりと断られてしまった。ガッテム。
「えっと…では、夜にお持ちしますね…ビールで宜しいでしょうか…?」
「ああ。……キミも好きなやつ飲んでいいぞ。テキーラとシャンパン以外な。」
…自分の分だけオレンジジュースにしよう。
テーブルにお酒と軽いおつまみを並べると、グラスに並々ビールを注がれ、差し出されてしまった。
……取り敢えずビール、と言う文化は神々の間でも暗黙の了解的な何かなのだろうか…。
「あ…ありがとうございます…。」
飲む振りをしてやり過ごそうかと考えていたが、ビルス様がジッとこちらを見ているのでそうもいかなくなってしまった。
「…いただきます。」
グビッと一口飲んでみる。…うぅ、苦い。
「とても、美味しいです。」
たとえ口に合わなくても"美味しい"と言ってしまうのはお国柄の特性だ…。
「そう。」
マズイ…いや、味の方じゃなくて状況が……。
頭がふらふらする…。
たった一口でこれはマズイぞ自分…。
これは料理と水でお酒をやり過ごすしかなさそうだ…。
***
酒盛り初めて1時間後。夢主は机に突っ伏して寝息を立てていた。その様子を眺めてビルスは頬杖をついて舌打ちをする。
(全然ダメじゃないか…。)
『男女の仲はお酒の席で発展しやすいの。お酒が入ると緊張が解れて必然的に会話も盛り上がるわ。』
ブルマがヤムチャにしていたアドバイスをこっそり盗み聞きしていたビルスは早速と試してみたが、夢主がお酒に弱すぎたため会話どころではなくなってしまった。
渋っていたのは単にお酒が好きではないからと思っていたので、とんだ誤算に肩を落とす。
「はぁ…。しょうがない。……おい、夢主。寝るなら自分の部屋で寝ろ。」
「うぅん…。起きてま、ふよ…。」
意識が朦朧としているようで呂律すらしっかり回っていない。
片手をひらひらと上げ、ベシャっとまた机に力尽きる。
「…まふよ……。…おい、立てるか?」
「ん〜……。」
唸るばかりで起きる気配が全くない。
「仕方がない。」と夢主の肩と膝の裏に手を回し持ち上げた瞬間、閉じていた目がパチっと開いた。
目が合ったことでビルスが一瞬固まり、狼狽する。
「お、お、起きてるんなら自分の足で歩っ…!」
「あはは、おひめさまらっこだぁ。」
嬉しそうに笑う夢主に面食らってまた固まる。
やがて少し逡巡した後、夢主を抱えたままソファに腰掛けた。
「……こんな状況…素面ならあり得ないしね。」
そう呟いてご機嫌にケタケタわらっている夢主を膝の上に降ろし、そっと抱きしめた。
まともに会話出来るようになったとは言えまだ少しビルスを恐れている夢主と、夢主に対して素直に接する事が出来ないビルス。
普段のその背景を考えると、この状況はまたとない奇跡だった。
「あはは、あったかい…れすね…。」
「れすねって…。キミ、お酒弱かったんだね。」
「よわくないれす…。よっへないれすもん…。」
「酔っ払ってる奴は皆んなそう言うんだよ。」
「んふふ……。すぅ…。」
不思議な感覚だった。夢主が楽しげに自分と会話をしている。
自身の腕の中で寝息をたてはじめた夢主の顔を見つめ、ビルスの頭にある事がよぎる。
(……今なら、こいつの全てをボクのものにできるんじゃないか?)
心に囁かれた誘惑は瞬く間に大きくなり冷静な思考を蝕んだ。
(第一、明日には覚えてない可能性だってあるんだ。)
薄く開かれた唇に自身のそれを誘われるように重ねてみる。
ほんのりとアルコールの香る口付けは今まで食べたどんな料理よりも甘美なものだった。
それが、徐々にビルスのストッパーを外して行く。
(甘い…。)
さっきよりも、もう少しだけ深く踏み込むと夢主がくぐもった声を出す。
五感を揺さぶられ、のめり込み脱け出せなくなる。
(このまま、今ここでー)
「ふぅ…ん…。」
夢主が一瞬身動いだ事でハッと息を呑む。
腕の中を確認すると、何も知らないようなあどけない表情を浮かべ寝息を立てていた。
そんな夢主を壊れないよう少しだけキツく抱きしめて1度、大きく深呼吸をする。
何故やめるんだ、と訴えるように身体中を叩いていた拍動がようやく治った頃、静かに立ち上がった。
ベッドに寝かせ、気持ちよさそうに眠っている夢主をそっと撫でてから逃げるように部屋を後にする。
(マズイ……。)
自分の理性を抑えきれなくなってきている事をビルスは実感していた。
欲に塗り潰されている中、それでも思い留まる事が出来たのは不意に途方もない虚しさを感じたからだった。
心がそこに無いのなら、その行為に意味はない。
無理矢理手に入れて泣かせたいわけじゃ無い。それでも……
(別にあのまましてもよかったんじゃ…)
未練がましい思いは思考に纏わりつき、遂にはビルスに弱音を吐露させた。
「……もしかすると、夢主の心は手に入らないかもしれないんだから……。」
口をついて出た考えを否定するように頭をふり、テーブルに残っていたお酒を煽る。
「全く……破壊神ともあろう者が情けない……。」
そう弱々しく呟き、未だに残る癖になりそうな程甘い感触を消し去るために次のお酒の栓を開けた。