日常
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「これはこれはビルス様!ようこそおいでくださいました!ささっ!こちらへどうぞ!!」
……確かに、置いていかないと約束してくださった。
だが……
「きゃー!ビルス様!ようこそ!」
「あんまりくっつかないでくれる?食べ物に香水の臭いがつくだろ。」
「も、申し訳ございませんビルス様!!!お前たち、少し下がれ!」
……こんなとんでもない場違い感に襲われる状況と比較するなら留守番でよかった…。
「……はぁ……。」
完治されたビルス様は頻繁に地球や他の星に出向いては、その度に私を同行させるようになった。
地球はまだいいのだが、他の星に出向くと私まで接待のようなものを受けてしまうので居心地がとても悪い…。
「……ビルス様、やはり私もウイスさんと同じように座席の後ろで待機を……。」
「お待たせいたしました…!!どうぞお召し上がりください!!」
ふかふかソファで不機嫌そうに踏ん反り返っているビルス様の目の前に次々と料理が運ばれてくる。
……必然的に、同じテーブルの席に案内された私の前にもだ…。
「夢主。」
「はい…なんでしょう…?」
ビルス様が人差し指をクイックイッと動かし、『こっちに来い』というジェスチャーをする。
「ビルス様ぁ!お飲み物お注ぎいたしましょうかぁ?」
席を立って近づこうとした私に、すかさずビルス様の隣に座っていた女性が鼻にかかった声を出した。
「そういうのいいから。……おい、こいつらを下がらせろ。」
「は、はいっ!お前たち!下がるんだ!!」
女の人たちが部屋を出て行き、空いたスペースに私を座らせる。
彼女たちが出て行く時に私を睨んだのは、恐らく気のせいではないだろう…。
「ああいう連中は無駄にプライドが高いんだ。お前が気にする必要はない。」
ビルス様が入れてくださったフォローに「そうなんですね…。」と苦笑いした。
眼前に広がる食事を前にどうこうするわけでもなく、ただひたすらぼーっと眺める。
「…い、如何なさいました…?な、何かご不満な点がございましたか…?」
バクバクと食べていくビルス様とは対照的に、料理に手を付ける様子を見せない私にオーナーの方が恐る恐る聞いた。
「あ、いえ!違います!!どれもとても美味しそうですよ!!その…彩り豊かで…。」
そう、彩りが豊かすぎるのだ…。
着色料でも付いているのでは無いかと思わせるほどの蛍光色に食欲が一切湧かない…。
「ただ…お腹が空いていなくてですね…。」
最大限オブラートに包み、やんわりとお断りする。
すると、コトンと目の前に果実が盛られているグラスを置かれた。
自然な動作で寄越した張本人の方に視線を移すと、素知らぬ顔で他の物を食べておられる。
「あ、ありがとうございます。」
呆気に取られつつビルス様にお礼を述べると、オーナーがハッとした顔でシェフ達に命令した。
「すぐに甘いデザートをご用意しろ!大変申し訳ございません、気が回らず…!」
「いえ…何だか、すみません…気を遣わせてしまって…。」
……何度も言うが、こういう扱いに全く慣れない。
そんなにへこへこされると物凄く申し訳ない気分になってくる。
(私は神の類いでもなんでもないし…。)
そう考えながら1粒つまんで放り込んだ果実の美味しさに思わず目を見開いた。
美味しい!なんだこの味は!!
口当たりのいい甘さに、とろける様な風味がふわふわと優しく口の中に広がるではないか!!
……なんだか三流の食レポみたいになってしまったが、とにかく食べたことのない美味しさだった。
「気に入ったか?」
ビルス様がニッと笑いながら言う。
「はい!とても美味しいです!驚きました。こんなに美味しい果物があるなんて!」
つい目を輝かせてそう言うと、ビルス様が満足気に続けた。
「この星の特産でな。惑星スイッツのパフパフの実は宇宙でも名高いんだ。」
「夢主も気に入るんじゃないかと思ってね。」と、まるで私の為に連れてきてくださったかのような口ぶりに胸の辺りがじんわりと暖かくなる。
「お待たせいたしました!特製ケーキにございます!!」
「おお!これこれ!」
パフパフの実がふんだんに使われたケーキを前にビルス様がルンルンとフォークを手に取る。
「ビルス様もお好きなんですね。」
「ああ。最近は特にな。この果実の放つ香りが……。」
そこで言葉を切り、何かに思い至った様子でこちらを見てそのまま私の首元に鼻先を寄せた。
その状態でしばらく香りを聞いた後、そっと首筋に舌を這わせる。
「…っ!?ど、どうされました…?」
「っ!!!な、何でもない!おい!ウイス!酒を調達してさっさと帰るぞ!!」
動揺しながらケーキを一口で平らげ、部屋を飛び出して行ってしまった。
「やれやれ。結局置いて行っちゃいましたね。」とウイスさんが零すまで、私はじんじんと脈打つ首の熱にただ呆然とするしかなかった。
***
(……そうか、さっきはキッツい香水の匂いで気がつかなかったけど…)
鼻の奥に蘇るパフパフの実の香りにビルスは小さく笑い舌舐めずりをする。
(夢主の持つ匂いに似てるから、か……。)
夢主を思い浮かべたことで不意に約束が頭をよぎり、足を止める。
「……いや……今、顔を合わせるのは気まずいだろ……。」
後ろをじーっと睨みつけ逡巡した後、やがてばつが悪そうに頭をかき元来た道を引き返していった。
……確かに、置いていかないと約束してくださった。
だが……
「きゃー!ビルス様!ようこそ!」
「あんまりくっつかないでくれる?食べ物に香水の臭いがつくだろ。」
「も、申し訳ございませんビルス様!!!お前たち、少し下がれ!」
……こんなとんでもない場違い感に襲われる状況と比較するなら留守番でよかった…。
「……はぁ……。」
完治されたビルス様は頻繁に地球や他の星に出向いては、その度に私を同行させるようになった。
地球はまだいいのだが、他の星に出向くと私まで接待のようなものを受けてしまうので居心地がとても悪い…。
「……ビルス様、やはり私もウイスさんと同じように座席の後ろで待機を……。」
「お待たせいたしました…!!どうぞお召し上がりください!!」
ふかふかソファで不機嫌そうに踏ん反り返っているビルス様の目の前に次々と料理が運ばれてくる。
……必然的に、同じテーブルの席に案内された私の前にもだ…。
「夢主。」
「はい…なんでしょう…?」
ビルス様が人差し指をクイックイッと動かし、『こっちに来い』というジェスチャーをする。
「ビルス様ぁ!お飲み物お注ぎいたしましょうかぁ?」
席を立って近づこうとした私に、すかさずビルス様の隣に座っていた女性が鼻にかかった声を出した。
「そういうのいいから。……おい、こいつらを下がらせろ。」
「は、はいっ!お前たち!下がるんだ!!」
女の人たちが部屋を出て行き、空いたスペースに私を座らせる。
彼女たちが出て行く時に私を睨んだのは、恐らく気のせいではないだろう…。
「ああいう連中は無駄にプライドが高いんだ。お前が気にする必要はない。」
ビルス様が入れてくださったフォローに「そうなんですね…。」と苦笑いした。
眼前に広がる食事を前にどうこうするわけでもなく、ただひたすらぼーっと眺める。
「…い、如何なさいました…?な、何かご不満な点がございましたか…?」
バクバクと食べていくビルス様とは対照的に、料理に手を付ける様子を見せない私にオーナーの方が恐る恐る聞いた。
「あ、いえ!違います!!どれもとても美味しそうですよ!!その…彩り豊かで…。」
そう、彩りが豊かすぎるのだ…。
着色料でも付いているのでは無いかと思わせるほどの蛍光色に食欲が一切湧かない…。
「ただ…お腹が空いていなくてですね…。」
最大限オブラートに包み、やんわりとお断りする。
すると、コトンと目の前に果実が盛られているグラスを置かれた。
自然な動作で寄越した張本人の方に視線を移すと、素知らぬ顔で他の物を食べておられる。
「あ、ありがとうございます。」
呆気に取られつつビルス様にお礼を述べると、オーナーがハッとした顔でシェフ達に命令した。
「すぐに甘いデザートをご用意しろ!大変申し訳ございません、気が回らず…!」
「いえ…何だか、すみません…気を遣わせてしまって…。」
……何度も言うが、こういう扱いに全く慣れない。
そんなにへこへこされると物凄く申し訳ない気分になってくる。
(私は神の類いでもなんでもないし…。)
そう考えながら1粒つまんで放り込んだ果実の美味しさに思わず目を見開いた。
美味しい!なんだこの味は!!
口当たりのいい甘さに、とろける様な風味がふわふわと優しく口の中に広がるではないか!!
……なんだか三流の食レポみたいになってしまったが、とにかく食べたことのない美味しさだった。
「気に入ったか?」
ビルス様がニッと笑いながら言う。
「はい!とても美味しいです!驚きました。こんなに美味しい果物があるなんて!」
つい目を輝かせてそう言うと、ビルス様が満足気に続けた。
「この星の特産でな。惑星スイッツのパフパフの実は宇宙でも名高いんだ。」
「夢主も気に入るんじゃないかと思ってね。」と、まるで私の為に連れてきてくださったかのような口ぶりに胸の辺りがじんわりと暖かくなる。
「お待たせいたしました!特製ケーキにございます!!」
「おお!これこれ!」
パフパフの実がふんだんに使われたケーキを前にビルス様がルンルンとフォークを手に取る。
「ビルス様もお好きなんですね。」
「ああ。最近は特にな。この果実の放つ香りが……。」
そこで言葉を切り、何かに思い至った様子でこちらを見てそのまま私の首元に鼻先を寄せた。
その状態でしばらく香りを聞いた後、そっと首筋に舌を這わせる。
「…っ!?ど、どうされました…?」
「っ!!!な、何でもない!おい!ウイス!酒を調達してさっさと帰るぞ!!」
動揺しながらケーキを一口で平らげ、部屋を飛び出して行ってしまった。
「やれやれ。結局置いて行っちゃいましたね。」とウイスさんが零すまで、私はじんじんと脈打つ首の熱にただ呆然とするしかなかった。
***
(……そうか、さっきはキッツい香水の匂いで気がつかなかったけど…)
鼻の奥に蘇るパフパフの実の香りにビルスは小さく笑い舌舐めずりをする。
(夢主の持つ匂いに似てるから、か……。)
夢主を思い浮かべたことで不意に約束が頭をよぎり、足を止める。
「……いや……今、顔を合わせるのは気まずいだろ……。」
後ろをじーっと睨みつけ逡巡した後、やがてばつが悪そうに頭をかき元来た道を引き返していった。