日常
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
お盆の上に乗ったお粥と、いつもより静かな寝息を立てているビルス様を見比べ、さて、どうしたものかと思案する。
(起こしていいものなのか……。どうなのか……。)
指示を仰ぎたいが、ウイスさんは今この星に居ない。
私1人で体調を崩されたビルス様のお世話をしなければならないのだ。
………何故そんな状況になったかと言うと、遡る事ほんの数分前。
『こんな時ぐらい帰ってくるだ!!いいだな!!す!ぐ!に!だぞ!!』
そんな怒声を響き渡らせプツンと通信が切れる。
あちゃー、という顔で頭を掻いている悟空さんがウイスさんに向き直った。
「ウイスさん、悪ぃんだけど地球まで送ってくんねぇか?チチのやつ相当怒っててよ。今すぐ帰らねぇといけねぇんだ。」
「んー、困りましたねぇ。今はビルス様が体調を崩されているので、あまりここを離れる訳にはいかないのですが…。」
「そんな事言わずに頼む!」と両手を顔の前で合わせて拝んでいる悟空さんと、お粥を作り終えた私の顔を見比べ「仕方がないですね。」と呟いた。
「夢主さん。今から1時間程留守にします。その間、ビルス様の看病をお願い出来ますか?」
……今更だが、とんでもない役回りが回ってきてしまった…。
唸りながらお盆を抱えて右往左往していると、匂いに反応したビルス様が目を開ける。
「おはようございます。ご気分はいかがですか…?お粥、お作りしましたが食べられそうですか?」
暫くボーッと此方を見つめていたが、ゆらっと上体を起こし「食べる。」と呟いてお粥を受け取った。
いつもと違い、目を伏せ気怠そうにゆっくりと咀嚼する姿は何処か色気の様なものを纏っている。
「……うつるとまた地球に出向かなきゃならなくなるから夢主はもう出ていけ。…そんなに見られてると食べにくい。」
「っ!すみません!そうですね。では、また後で器を取りにきます。」
部屋を出るために寝台から離れようとすると、右腕が引かれる感覚がして後ろを振り返る。
「あ、あの…ビルス様…。」
「…何?」
「…えっと…尻尾が……。」
ビルス様の尻尾が私の腕に巻き付いていた。
それに今気づいたようなギョッとした顔をして瞬時に離す。
…ひょっとして、ビルス様でも心細くなったりするものなのだろうか…?
気まずそうにお粥を食べているビルス様の顎に汗が流れ、滴りそうになる。
「ビルス様。汗が…。少し失礼しますね。」
私は寝台に片膝をついて乗り上げ、ポケットから取り出したハンカチで汗を拭った。
「………。」
「…よし。……ビルス様?」
無言でこちらを観察していたビルス様が、今度はおもむろに食べかけのお粥を寝台の空いているスペースに置く。
ハンカチを持っていた手をグイッと引っ張られて視界が反転した。
上から覆いかぶさったビルス様のこめかみからまた汗が伝い、私の頬に落ちてくる。
「お前は、」
威嚇に似た、何かを押し殺すような声で静かに紡ぐ。
「もっと危機感を持った方がいいぞ…。…ここを何処だと思ってるんだ?今は、…ウイスだって居ないんだろ?」
熱のせいなのか、濁った瞳からはいつも以上に何を考えているのか汲み取ることができない。
押さえつけられた両腕はビルス様の熱が高い事を伝えるようにジンジンと温度を上げる。
「それとも、何もない…って、高を括ってるのか?」
「ちょっと屈辱なんだけど。」と続けるビルス様は無表情だ。
何か、何か弁明をっ…ーー
「えっと…身を守る御守りがあった…ので…その…。」
ビルス様が片手を離し「これか?」と、私が腕につけていたはずの御守りを目の前に見せる。
い、いつのまに…!?
確認する為に自由になった片腕を持ち上げようとすると、またビルス様に押さえつけられた。
「んで?…改めて聞くけど、この状況で何とも思ったり、しないの?」
ビルス様がぐっと顔を近づける。
状況…。…状況…?
身を守る御守りを取られ、身動きを封じられている。圧倒的に強い相手に。
つまり今、私は完全なる生身。ビルス様が少しでも力を入れれば腕が折れてしまうこの状況。
私が今すべきことは…い、命乞い…だろうか…?
そう考え青ざめていると、いきなりゴツン!と頭突きをされた。
あまりの衝撃に視界を回していると今度は柔らかい感触と共にガチっと前歯に何か固いものがぶつかる。
衝撃で切れたのか口の中に薄く血の味が広がった。
…い、今…何が…起こったんだろう…?
グルグルと回る脳がやっと落ち着いて来たかと思うと身体が浮遊感に襲われた。
見上げるとビルス様に小脇に抱えられている。
部屋の外に出て、私を抱えていた方の手を前触れなく離したので、ベシャッと落下した。…痛い…。
ビルス様は手に持っていた御守りをカエルのように這いつくばっている私に放り、一言。
「うつれ。」
バターン!!と目の前の扉が閉ざされた。
な、何だったんだ…?今の…。しかも、最後のは…呪い…?
一先ず私は用意した冷たいデザートを取りにその場を後にした。
***
(うつっちまえばいいのに…。)
よたよたと離れていく夢主の気配を背にビルスも寝台に戻り、横になる。
唇に僅かに残る血を舐めとり、少しだけ上がったように感じる熱に片手で顔を覆った。
( この胸に巣食う想いごと…。)
そんな事を考え、ふぅーっと熱のこもった息を吐きだす。
「………お前が1番素直だな…。」
自分の後ろでゆらゆらと揺れる尻尾にぼやき、襲ってきた睡魔に抗う事なく身を委ねた。
(起こしていいものなのか……。どうなのか……。)
指示を仰ぎたいが、ウイスさんは今この星に居ない。
私1人で体調を崩されたビルス様のお世話をしなければならないのだ。
………何故そんな状況になったかと言うと、遡る事ほんの数分前。
『こんな時ぐらい帰ってくるだ!!いいだな!!す!ぐ!に!だぞ!!』
そんな怒声を響き渡らせプツンと通信が切れる。
あちゃー、という顔で頭を掻いている悟空さんがウイスさんに向き直った。
「ウイスさん、悪ぃんだけど地球まで送ってくんねぇか?チチのやつ相当怒っててよ。今すぐ帰らねぇといけねぇんだ。」
「んー、困りましたねぇ。今はビルス様が体調を崩されているので、あまりここを離れる訳にはいかないのですが…。」
「そんな事言わずに頼む!」と両手を顔の前で合わせて拝んでいる悟空さんと、お粥を作り終えた私の顔を見比べ「仕方がないですね。」と呟いた。
「夢主さん。今から1時間程留守にします。その間、ビルス様の看病をお願い出来ますか?」
……今更だが、とんでもない役回りが回ってきてしまった…。
唸りながらお盆を抱えて右往左往していると、匂いに反応したビルス様が目を開ける。
「おはようございます。ご気分はいかがですか…?お粥、お作りしましたが食べられそうですか?」
暫くボーッと此方を見つめていたが、ゆらっと上体を起こし「食べる。」と呟いてお粥を受け取った。
いつもと違い、目を伏せ気怠そうにゆっくりと咀嚼する姿は何処か色気の様なものを纏っている。
「……うつるとまた地球に出向かなきゃならなくなるから夢主はもう出ていけ。…そんなに見られてると食べにくい。」
「っ!すみません!そうですね。では、また後で器を取りにきます。」
部屋を出るために寝台から離れようとすると、右腕が引かれる感覚がして後ろを振り返る。
「あ、あの…ビルス様…。」
「…何?」
「…えっと…尻尾が……。」
ビルス様の尻尾が私の腕に巻き付いていた。
それに今気づいたようなギョッとした顔をして瞬時に離す。
…ひょっとして、ビルス様でも心細くなったりするものなのだろうか…?
気まずそうにお粥を食べているビルス様の顎に汗が流れ、滴りそうになる。
「ビルス様。汗が…。少し失礼しますね。」
私は寝台に片膝をついて乗り上げ、ポケットから取り出したハンカチで汗を拭った。
「………。」
「…よし。……ビルス様?」
無言でこちらを観察していたビルス様が、今度はおもむろに食べかけのお粥を寝台の空いているスペースに置く。
ハンカチを持っていた手をグイッと引っ張られて視界が反転した。
上から覆いかぶさったビルス様のこめかみからまた汗が伝い、私の頬に落ちてくる。
「お前は、」
威嚇に似た、何かを押し殺すような声で静かに紡ぐ。
「もっと危機感を持った方がいいぞ…。…ここを何処だと思ってるんだ?今は、…ウイスだって居ないんだろ?」
熱のせいなのか、濁った瞳からはいつも以上に何を考えているのか汲み取ることができない。
押さえつけられた両腕はビルス様の熱が高い事を伝えるようにジンジンと温度を上げる。
「それとも、何もない…って、高を括ってるのか?」
「ちょっと屈辱なんだけど。」と続けるビルス様は無表情だ。
何か、何か弁明をっ…ーー
「えっと…身を守る御守りがあった…ので…その…。」
ビルス様が片手を離し「これか?」と、私が腕につけていたはずの御守りを目の前に見せる。
い、いつのまに…!?
確認する為に自由になった片腕を持ち上げようとすると、またビルス様に押さえつけられた。
「んで?…改めて聞くけど、この状況で何とも思ったり、しないの?」
ビルス様がぐっと顔を近づける。
状況…。…状況…?
身を守る御守りを取られ、身動きを封じられている。圧倒的に強い相手に。
つまり今、私は完全なる生身。ビルス様が少しでも力を入れれば腕が折れてしまうこの状況。
私が今すべきことは…い、命乞い…だろうか…?
そう考え青ざめていると、いきなりゴツン!と頭突きをされた。
あまりの衝撃に視界を回していると今度は柔らかい感触と共にガチっと前歯に何か固いものがぶつかる。
衝撃で切れたのか口の中に薄く血の味が広がった。
…い、今…何が…起こったんだろう…?
グルグルと回る脳がやっと落ち着いて来たかと思うと身体が浮遊感に襲われた。
見上げるとビルス様に小脇に抱えられている。
部屋の外に出て、私を抱えていた方の手を前触れなく離したので、ベシャッと落下した。…痛い…。
ビルス様は手に持っていた御守りをカエルのように這いつくばっている私に放り、一言。
「うつれ。」
バターン!!と目の前の扉が閉ざされた。
な、何だったんだ…?今の…。しかも、最後のは…呪い…?
一先ず私は用意した冷たいデザートを取りにその場を後にした。
***
(うつっちまえばいいのに…。)
よたよたと離れていく夢主の気配を背にビルスも寝台に戻り、横になる。
唇に僅かに残る血を舐めとり、少しだけ上がったように感じる熱に片手で顔を覆った。
( この胸に巣食う想いごと…。)
そんな事を考え、ふぅーっと熱のこもった息を吐きだす。
「………お前が1番素直だな…。」
自分の後ろでゆらゆらと揺れる尻尾にぼやき、襲ってきた睡魔に抗う事なく身を委ねた。