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日常

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主人公の名前

ウイスさんに神の言語辞典を借りたいと頼むと、「あれは、ビルス様が悪いです。わかる言葉で伝えなければ何の意味も成しません。…もう少し、待って差し上げては?」と良く分からない助言をされた。
そのうち落ち着いて機嫌も治ると言われたが、やはり気になって仕方がない。

「なんせ、あの怒り様だもんなぁ…。」

顔を赤くして響き渡らせた怒声は今も耳の奥に残っている。
何か機嫌の取れるもの…と、考えているとウイスさんがご機嫌にブルマさんに話しかける。

「そういえば、この近くの広場でお祭りなるものが開催されるようですね。美味しいものもた〜くさんあるんだとか。」

「え?えぇ。夜からだからまだ時間はあるけどね。」

夢主さん。折角ですからビルス様をそのお祭りに誘ってみてはいかがです?機嫌も直ぐ良くなると思いますよ。」

なるほど…お祭りか。それなら出店も沢山出るだろうし聞いただけでビルス様は喜びそうだな。
ん、待て、誘う…?

「……私も一緒に回るという事ですか…?」

「そうですよ。」

当然でしょう?と言ったウイスさんの返答に目眩がする。

「…私と一緒に回ってもビルス様は楽しめ無いのでは…。」

「そんな事はありませんよ。機嫌を取りたいんでしょう?頑張ってください。」

……と、笑顔で送り出されてしまった…。
送り出されてしまったのだが、私はビルス様が何処にいるのかなんて見当もつかない。気や気配なんて分からないんだもの…。

「ビルス様…何処にいるんだろ…。」

「何?」

「ひゃあ!!!!」

呟いた言葉に返事が返ってくると思っていなかったので、大きな声が出てしまった。

「そんなお化けみたいな反応しないでよ。」

「す、すみません。唐突だったもので…。」

ムッとした顔のビルス様が壁に背をもたせかけて立っていた。
本当に心臓に悪い…。

「んで?ボクに何か用があったんじゃないの?」

こっちを見ずに先を促すビルス様におずおずと話す。

「えっと…。今日の夜にお祭りがあるそうなのですが、あの…ご一緒にいかがですか…?」

「一緒に…?」

ビルス様が少し驚いたように振り向いた。

「出店も出るそうなので、美味しいものも沢山あると思いますよ。」

ほう、と考えた後に「行く。」と呟いた。





それなりに規模の大きいお祭りだったのでお客さんも沢山いたが出店の数も沢山あり、然程並ばずに済んだ。
ビルス様は屋台の食べ物を片っ端から回り、それはそれは謳歌している。

「これは美味いじゃないか!!夢主も食べてみろ!おい!このフワフワしたやつもう一本だ!」

「あはは…ありがとうございます…。」

断れないので頂くが、正直見ているだけでお腹が一杯だ…。
差し出された綿あめを受け取り改めて屋台を見渡していると、射的の景品に並んでいるぬいぐるみに目が止まる。
可愛いな。残念ながら射的は得意では無いので諦めるしか無いが…。
そう思っていると隣にいたビルス様が射的のお姉さんに声をかける。

「一回だ。」

「はいよ!」

的確な弾道で並んでいたお菓子の箱を次々と倒していく。
周囲のギャラリーも「おぉー!」と歓声を上げた。

「あと1発。撃つ?」

猟銃を模したコルクガンを片手でくるりと回し銃床の部分を差し出した。
それに慌てて両手を左右に振る。

「私は射的があまり得意では無いので…。」

「ふぅん。」と気の無い返事を返しパンッ!と最後の1発のコルクを飛ばす。
目を細め銃を構えるその表情が少しかっこよく見えて目が離せなかった。
「おぉ!!!」と言う歓声と拍手の音にハッと我に返る。

「凄かったねぇ!!あれをたった1発で!」

「コルクで落ちるものなんだなぁ!」

どうやら、私が見惚れている間にビルス様は何か凄いものを落としたらしい。流石。
景品を袋に詰めてもらい、その中をガサゴソと漁っている。

他に回ってない屋台はあるかなとキョロキョロしていると、頭にポスッと何かが乗っかる感覚がする。
どうやらそれは、先程私が見ていたぬいぐるみだったようでビルス様が私の頭に押し付けていた。

「隣のやつを狙ったら、たまたま取れた。お前の部屋は質素だからな。これでも飾っておけ。」

「あ、ありがとうございます。」

何でもない言い方でぬいぐるみを押し付けた後、「次はあれをやるぞ。」と金魚掬いの屋台を指差す。

「んで?この魚は食べられるのか?」

「いや、これは鑑賞用の魚でして…。」

「やって行くかい?お二人さん!最高記録はこの水槽の金魚全部掬って行った兄ちゃんだ!!」

屋台のおじさんが快活な物言いで煽るように言う。

「へぇ…負けられないな。」

ビルス様がしゃがんでポイと器を受け取る。
隣にいた私も「嬢ちゃんもどうぞ!」と手渡された。








時間はあっという間に過ぎ、帰路を歩むお客さん達の中に、私とビルス様も紛れる。
意外にも祭りの中でビルス様が1番熱中したのが金魚掬いだった。

「くっそ!後もう少しで全部掬えたのに!!」

悔しそうに嘆くビルス様を苦笑いをしながら宥める。

「それでも、とても凄いですよ。私なんかとは比べものにならないくらい沢山取っていましたし。」

…いや、むしろ比べる事すらおこがましいのだろうけど…。

夢主は下手すぎて勝負にならなかったからね。全部掬ったやつはこの祭りの常連なのか…?結果的に勝ち逃げされた気分だ。」

忌々しそうに呟くビルス様に内心冷やっとする。

「じょ、常連だとしたら、次の勝負は来年ですかね。来年は私も少しは勝負になるように練習しておきます。」

そう言うと、ビルス様が驚愕した顔でこちらを見て固まっている。
え、なんか変な事言っただろうか…?

「いま……。」

「は、はい…?」

しかし、その先は何も言わず「やっぱり食べ足りない!」と叫び、踵を返して行った。
え、えぇ……。まだ食べるのか…。

「ちょ、…ちょっと待ってくださいよぉ…。」

想像以上に情けない声がでた…。正直クタクタなので早く帰りたいが置いて帰ると後が怖い…。
私はどんどん遠ざかる背中を小走りで追いかけた。






***

屋台へと歩みを進めながら、ビルスはともすれば緩みそうになる頬を必死に抑えていた。

『来年は私も少しは勝負になるように練習しておきます。』

夢主の言った言葉を心の中で繰り返し、その意味がもたらす前提を何度も咀嚼する。

だって、だってそれはつまり、

「…キミが想像した"来年"にはボクが居る事が前提なんだろう…?」

口に出した事でビルスはとうとう笑みを堪え切れなくなる。
後ろから追いかけてくる気配を感じとり、顔を見られないように屋台へと向かう足取りを早めた。
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