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日常

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主人公の名前

頭が痛い…。これはいわゆる風邪だ。体調不良だ…。

「連日かいている冷や汗のせいだろうか…。」

なんていう冗談を口に出して現実逃避する位には私は弱っていた。
あー…起き上がるのもしんどい…。どうやってウイスさんに報告しよう…。もしもーし、ウイスさんですかー…。私今日、風邪引きましたー…。
その時、部屋をノックする音が聞こえ、「失礼しますよ。」とウイスさんが入ってきた。
マジでか。

「おはようございます…。すみません…。今日ちょっと体調が悪くて…。」

「やはり熱が出ているようですね。大丈夫ですか?」

やはり?予想していたってこと?私は何か流行り病にでもかかっているのか…?
それとも先程のテレパシーが本当に通じていたのだろうか…?

「予言魚さんと賭けをするのは無理がありましたね。」

……賭けの対象にされていたのか…。
そんな事を考えているうちに意識が朦朧としてくる。

「おや、ビル……ま。お………ござい…す。」

「なん…?夢主……つ、どうか……のか?」

話し声を聴きながら私の意識はゆっくりと沈んでいった。


***

「えぇ。実は夢主さんが風邪を引いてしまったようです。」

「風邪?そんなの、お前の能力で直せるだろう。」

「私の能力は外傷の治癒や蘇生であり、ウイルスには対応しておりません。直ぐに完治したいのであれば、一度息の根を止めて…」

「ダメに決まってるだろうっ!!!」

即座に怒鳴ったビルスに「おほほ、そんなに必至になって怒らなくても、冗談ですよ。」と笑って返した。
そんなウイスをジトッと睨みつけ、やがてため息を吐いて言った。

「…地球へ行くぞ。その方が手っ取り早い。」

苦しそうに眠っている夢主を抱き抱えて外へ出る。

「では、夢主さんをこちらへ」

「…なに?」

両手を差し出すウイスにビルスは思わず、夢主を抱く力を強くした。

「移動するときビルス様は片手しか使えませんでしょう?私は両手開いておりますので、私が抱えた方が安定するかと。」

宇宙空間を翔けるにはウイスの体に触れていなければならない。

ウイスの言うことはもっともだ。
もっともなのだが…

「………いや、いい。ボクが抱えるよ。」

ビルスはふわっと中に浮き、胡座をかくと、膝の上に夢主を乗せ、赤ん坊を抱く様に支えた。
割れ物を扱う様な一連の行動をウイスは微笑ましそうに見ていた。

「さ、早く行くぞ。」

「はい。」

コツンと杖を鳴らした次の瞬間には、吹き抜ける風の音だけが残っていた。






「…おい、ウイス。」

「なんですか?」

「……後、どれくらいでつく?」

「まだ、出発してからそう経ってませんよ。」

「あ、そう。」

内心、ビルスは一刻も早く到着してほしかった。
勿論、夢主の病状を心配してと言うのもあるのだが…

(心臓に悪い…)

本音はそこだった。
頬は赤く染まり、悩ましげな表情で苦しそうに呼吸をしている。

「どうしました?先程からそわそわして。」

「べっ…!別にそわそわなんかっ!!」

「ん…ぅ〜……」

夢主が苦しそうに眉を潜めたのをみてビルスはハッとしたように口を噤んだ。

「あまり大きな声を出されますと、夢主さんがかわいそうですよ。」

「…お前…!」

「心配せずとも後5分程で到着しますよ。ちゃんと支えてあげてくださいね。なにせ、相手は病人なんですから。」

「ぐぬぅっ……!!」

何もかもお見通しと言わんばかりの涼しげな横顔を、ビルスは恨めしく思い睨みつけた。




***

目が覚めると、見慣れない天井が目に入った。はて、ここはどこだろうか…?
首だけ動かして周囲を見回しているとガチャリと扉が開く音がした。

「目が覚めたのか?」

ビルス様がお盆を手にもって部屋へと入ってきた。

「あ、ビルス様。おはようございます…。あの、ここは一体…?」

「地球だよ。ウイスがウイルスは治せないって言うから連れてきたんだ。」

枕元のテーブルにお盆を置く。いい匂い。お粥だろうか。

「薬を打ったからもう大分マシだろ。今はもう夜だ。全く風邪くらいで丸一日寝込むなんて、人間って脆いよね。」

「す、すみません…。」

やれやれと言った風な口ぶりに思わず謝ると、ビルス様は苦い表情をして頭を掻いた。

「いや…間違えた…そうじゃなくて…。………とりあえず食べろ。お腹が空いただろ。」

ため息をついて、お粥を手渡してくれた。

「ありがとうございます。」

まだ少しぼーっとするが今朝より大分調子がいい。寝てる間に処方してくれた薬がよく効いているのだろう。

「今日はもう地球に泊まる。ボクはもう寝るから。」

「おやすみなさい。」


ビルス様はスタスタと歩いていたが、扉の前で一度立ち止まり、

「………早く治せよ。」

と、小さく呟いて出て行った。
今のは『お大事に』と言う事だろうか…?

「心配…してくれているのかな…?」

いや、家事をする人が居なくなるからか…と思い至り私は残りのお粥を平らげた。
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