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刀剣乱舞 短編


それからというもの、私はことある事に山姥切国広を構った。
馬当番をしている姿を写真に収めては「布のあるまんばちゃんが馬当番するのは最後かもしれないじゃない!」と叫び、食事の時間には「布があるうちにあーんさせて!」と言って手ずから食事を与え、入浴の時間には「布のあるまんばちゃんと布があるうちにお風呂に入りたい」とお願いした。
堀川くんに、お風呂に入る時は流石に布は外してるよと言われた為最後のは達成できなかったが、私はこの数日間であらかたのことを山姥切国広とやり尽くした。
そうして修行出発前夜。私は最後のお願いをしに、山姥切国広の私室を訪ねていた。
「まんばちゃん、いよいよ明日出発だね」
「……そうだな」
「三日間、寂しくなるな。でも、帰ってくるの楽しみにしてるね」
「ああ」
「それでね、まんばちゃん。お願いがあるの」
「……なんだ?」
「極前最後の夜じゃない?つまり布のある最後の夜じゃない。だからね、今日は一緒に寝よう」
そう、私のお願いとは極前最後の夜を一緒に過ごすことだった。
下心なんて、ちょっとしかない。
ただ、彼が三日間留守にする前に、できるだけの時間を共にすごしたい。
「……断る」
「なんでぇ~。お願い!布があるうち!ねぇ!」
「修行から帰ってきてからなら、いくらでも一緒に寝てやる。だから今日は部屋にもどれ」
「今日じゃないと意味ないの!修行前じゃないと意味が無いんだよまんばちゃん」
「……」
「ねぇまんばちゃん。私は布があるうちに、まんばちゃんが極める前に、できるだけ一緒にいたいの。ダメなの……?」
「……あんたは」
「うん?」
「あんたは今までもずっと、俺のことを好きだと、……可愛いと、付きまとってきただろ」
「え、うん。……迷惑だった?」
深刻そうな顔をされて、突然不安になる。
私は山姥切国広が大好きで、できるだけそばに居たくて、行動してきていた。ほかの刀剣男士達にも、主さんは山姥切のことが大好きだねと言われるくらいあからさまに。それはもしかして彼にとっては迷惑な行為だったのだろうか。
「迷惑とかじゃなく、それは、その……俺が好かれているんだと、あんたの刀として山姥切国広が好かれているんだと思っていた」
「……うん?」
間違ってはいない。彼は私の愛刀だ。だが同時に大好きな男性でもあった。
私が彼を大切な刀だと、好きだと思っていることが伝わっていたことは嬉しいが、出来れば男性として大好きなのだということも伝わっていて欲しかった。まぁそれは、修行から帰ってきてから存分に伝えればいい。
「だが、ここ数日、もしかしたら俺の勘違いだったのかもしれないと思い始めたんだ」
「えっ」
この数日は、いつにも増して彼への愛を包み隠さず伝えていたつもりなのに、なぜそんな考えに……?
「あんたはここしばらく、布があるうちに、といつも言っていただろう」
「うん……」
「あんたが好きなのは、俺じゃなくて布なんだろう!?」
「えっ!!?」
思ってもいない問いかけに困惑する。
え、私めっちゃ布が好きな人だと思われてた?
「そ、そんなことないよ!私はまんばちゃんが大好きで!だから!」
「いいんだ!」
「えっ、え……?」
「あんたが布が好きなら俺にだって考えがある!修行で、こんな布置いてきてやる!!」
「まんばちゃん!!?あれだけ修行したって布は手放さないって言ってたのに!?」
「あぁ、言ったさ!けどあんたがそんなに布が好きなら話は別だ!布なんていらない!こんなもの捨ててやるから、ちゃんと俺を見ろ!」
「え……?」
「あんたは俺の布が好きだったかもしれないが、俺はあんたが好きなんだ!だから布のない俺も、好きになってもらうしかないだろう!?」
「待ってまんばちゃん私元々まんばちゃんのこと……!」
「黙れ!!」
「っ!?」
あまりの気迫に気圧されてしまう。
「修行から帰ってきたら、見ていろ。布のない俺を。だから、今は一緒に寝ない」


「帰ってきたら、あんたが俺をちゃんと見て、また好きだと言ってくれたら、いくらでも一緒に寝てやる」
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