眠い隼人の癖(一人称視点)

 ぱちぱち。隼人の瞬きが多くなってきた。膝を抱えて座り、目を閉じては少し開けてまた閉じる。ああ眠そうだ、そろそろいつものあれが出るかな。

「んぅ……」

 ぐりぐり。ほらやっぱりな、膝に顔を擦り付け始めた。昔からそうなんだ、眠くなると布地に顔を擦る癖がある。
 しょうがない、部屋まで連れてってやるか。なんて笑みを含めながら口を開いた。けど──

「藤咲、眠ィのか?」

 俺が言うより先に蘇芳が動いた。
 驚いた……俺以外に隼人の癖に気付く奴がいたなんて。でもそっか、蘇芳は隼人のルームメイトだもんな、ずっと一緒に過ごしてりゃ癖の一つや二つ見抜けるようになるもんだ。

 隼人も隼人で随分蘇芳に心を開いているらしく、今にも擦り寄って肩を借りてしまいそうな雰囲気だ。だけど隼人の目が薄く開いて俺の方を見た時、白い腕がこちらに向けて伸ばされた。

「ん……」

 当然のように小さな声を漏らす。急にきた眠気がもう限界なのか、俯いて額を膝に付けたまま。

「しょうがねぇなー」

 言葉とは裏腹に体は待ってましたと言わんばかりに動いた。子供のように抱っこをせがむ隼人を横抱きにすれば、早速腕の中で寝息が聞こえてくる。

「隼人を部屋まで運んでく。お前らも点呼の時間までには部屋に戻れよー」

 寮の代表生徒っぽいことを言い残した俺はすぐ背を向けて、大人気ない優越感を隠しながら談話室をあとにした。


【完】
1/1ページ
スキ