主人公は東雲学園に通うごく一般的な二年生。見た目も中身も平凡だけどなぜかみんなから好かれる。乙女ゲームのように色んなキャラと絡んでいい感じになって、結ばれたり結ばれなかったり。
真澄くんと夏祭り
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花火は次々と夜空を彩り、やがて大きな連発でフィナーレを迎えた。ざわめく人々の間で俺と真澄くんはしばし無言のまま空を見上げていた。
──いつまでも、この時間が続けばいいのに。そんな願いを抱きながらも、胸の奥で苦い思いが膨らむ。叶わないことを知っているからこそ、余計に。
「帰ろっか。混む前にさ」
真澄くんがそう言って、俺の手を軽く引いた。昼間と同じ仕草なのに今は妙に胸が痛む。
駅からバスを乗り継ぎ、寮へと帰る道すがら。夜風が涼しくて、浴衣姿の真澄くんが少し肌寒そうに腕をさすった。
「お祭り、楽しかったね。……七緒くんのおかげだね」
「俺も……すごく楽しかった」
心の奥に隠した言葉は喉まで出かかったけれど、飲み込んだ。言ってしまえば、きっと壊れてしまう。
寮の門が見えてきたところで、真澄くんがふっと笑った。
「あんがとね、今日一緒に来てくれて。オレさ、友達と夏祭り行くの久しぶりだったんだ〜」
「……そうなんだ」
「うん。だから、すごくいい思い出になったよ」
──友達。その言葉が優しく胸に突き刺さる。真澄くんも俺の心境に気付いたのか、数秒だけ気まずい空気が流れたが、それを払拭するように俺たちはほぼ同時にわざとらしく笑った。
「……じゃ、おやすみ。ちゃんと休んでね」
軽く手を振って真澄くんは先に寮の灯りへと歩いていった。背中が提灯の余韻みたいに揺れて、遠ざかっていく。
俺はしばらくその姿が見えなくなるまで立ち尽くしていた。
届かない気持ちを抱えたまま、胸にぽつんと残る花火の残響だけを頼りに。
夜空に咲いた花火の残像がまだまぶたの奥に残っている。隣にいた真澄くんの笑顔も同じくらい鮮やかに焼きついて離れない。
──好きだ。そう言葉にしてしまえたら、どんなに楽なんだろう。
でも、それを伝えてしまえば、きっと今の関係は壊れてしまう。「友達」と呼んでくれたあの温度を、失ってしまう。
だから俺は、心の奥に鍵をかけるしかない。彼が笑ってくれるのなら、彼が幸せでいてくれるのなら、それでいいと自分に言い聞かせながら。
今日の思い出は、きっと一生忘れない。
夏祭りの夜の光も、彼の横顔も、全部。
叶わない恋だからこそ、美しく胸に焼きついていく。
──おやすみ、真澄くん。
心の中だけで、そっとそう呟いた。
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