主人公は東雲学園に通うごく一般的な二年生。見た目も中身も平凡だけどなぜかみんなから好かれる。乙女ゲームのように色んなキャラと絡んでいい感じになって、結ばれたり結ばれなかったり。
真澄くんと夏祭り
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りんご飴を手にした真澄くんは子どもみたいに目を輝かせていた。
「ん〜っ、甘っ! ……七緒くんも一口食べる?」
「え、いいの?」
差し出された飴に恐る恐るかじりつくと薄い飴のコーティングがパリッと割れて、りんごの甘酸っぱさが口に広がった。
「うまっ……! けど、めっちゃ食べにくいな」
「でしょ? 口の周りベタベタなるんだよね〜」
そう言いながら自分の口元を親指でそっと拭う仕草がやけに色っぽくて、視線を逸らすのに必死だった。

続けて買ったたこ焼きを熱々のままハフハフ言いながら分け合う。
「んーっ、やけどしたぁ……!」
「だから言ったのに。ほら、水」
ラムネ瓶を渡すと真澄くんは小さく「あんがと」と呟いて口をつけた。自分から渡したとはいえ、俺の飲みかけを躊躇なく飲んでくれるから危うく勘違いしそうになる。真澄くんの距離の近さは今に始まったことではないのに。
夜風が吹き抜けて、浴衣の袖が揺れる。すぐそばにいるのに届かないその横顔を見ていたら不意に胸が締めつけられた。
「ん? なーに? オレの顔じろじろ見て」
「……っ! や、なんでもないよ。髪が……綺麗だなって思ってただけで」
「なははっ、なにそれぇ〜」
そんなふうに屋台を満喫しているうちに、辺りが暗くなり、空に一番星が輝き始めた。
──ドーンッ!
大きな音とともに、夜空に色鮮やかな花が開いた。
「わあっ……!」
真澄くんが子どものように顔を上げて歓声をあげる。ぱっと明るく照らされた横顔はまるで花火そのものの輝きで目が離せなかった。
「ね、七緒くん」
花火の音に紛れて聞こえた声は少しだけ真剣で。
「オレ、こうやって一緒に花火見るのずっと楽しみにしてたんだ。二日間あるお祭りのうち、一日をオレにあててくれてあんがとね」
「そんな……っ」
胸の奥が熱くなる。それはむしろ俺のセリフだったのにこんな言葉をかけてくれるなんて……。夏祭りの誘いを快諾してくれたときどれほど嬉しかったか、あの舞い上がった感情は今でも鮮明に蘇ってくる。俺は思うままに手を伸ばしてその白い手に触れた。
「俺もだよ。真澄くんと来れて……本当に良かった」
「ん」
控えめに握り返してくれた手がもあたたかくて。夜空を彩る光の下、俺たちはしばらく言葉もなく並んでいた。