ネズユウ
友達のお兄ちゃんって、あたしの友達にもなり得ると思う?
うん、友達のお兄ちゃん。あたしには兄弟がいないでしょ?だから、その人はまるで本当のお兄ちゃんみたいにあたしを可愛がってくれるの。ほんとよ。だから、あたしもついつい甘えちゃう。
けど、最近……うん、最近ね、その人のことを好きになっちゃったみたい。猫背な後姿を見ると、胸がときめくの。流氷が浮かぶ海みたいな冷たい色をした瞳が、あたしの前でだけちょっと優しいのを感じると――これってちょっと自信過剰かな? でも、きっとそうなの。あの人の目があたしを見て優しく微笑んでくれると、あたし、逃げ出したいくらいに、あの人のことが好きになるの。これってきっと恋なんだよね。
でも、あたしとあの人は、まだ友達じゃないの。あたしにとってあの人は友達のお兄ちゃんだし、あの人にとってあたしは妹の友達なの。思えばちょっと迂遠な関係で、好きになるなんておかしいのかなぁ?
でも、走り出した恋はジェットコースターのように止まることを知らないし、加速していくばかり。あの人を想っているとき、あたしは世界で一番幸せな人間だよ。そんなふうに思うくらい、あの人のことが大好きなの。
けど、あの人は、あたしのことをそう思ってくれているかなぁ。妹の友達を、好きになってくれるかなぁ。思ってみればなんだか思い上がり。ちょっと可愛がってもらったくらいで、勝手に有頂天。けど、それでも好きなんだもん。
恋人になりたいなんて我儘は言わないよ。せめて、マリィが間に入ってくれなくても、二人きりでも成立する関係になりたいなぁ。友達になってほしいなぁ。友達だったら、急に「明日遊ぼう」なんて電話をしたっていいでしょ? 「友達のお兄ちゃん」には、こんなこと言えないね。でも、友達だったら言ってもいいんでしょ?
ネズさんの、友達になりたいなぁ。友達だったら、「今日寒いね」でも「眠いね」でも「暑いね」でも、なんでもメール出来るのに。
人の心に踏み入るのはいけないことって言うじゃない。でもね、あたしはそれの全てがいけないことだとは思わないの。
だって、チャンピオンという称号がとても重たくて、期待が痛くて、誰にも会いたくなくて、苦しい。そう思って泣いていた時、電話をかけてきてくれたのがネズさんだったの。あたしは元気なふりをして、はい、何かありました? なんて言ったんだけど、ネズさんは「今どこにいるんですか」って聞いてきて。あたし、その時巨人の帽子でテントを張って、中に引きこもってたんだけど。でもね、ネズさんは走るのが苦手なのに、息が切れるまで走ってあたしのところに来てくれたの。「おれの前では我慢しなくていいよ」って言ってくれた。だからあたし、ネズさんの背中にしがみついて、ん泣いて……それから疲れて寝ちゃっても、ネズさんはずっとそばにいてくれた。それから、「何かあったんですか」って真剣な顔で聞いてくれた。
――嬉しかった。みんな夢を持って遠くに行ってしまって、あたしひとりだけ取り残されたみたいだったから。
だから、ねぇ。ネズさん。あたしもあなたにとってそうでありたいな。ウールーが優しく草を食むように、あたしも、あなたの心の中にある不安だとか悲しさを、優しく食べてあげたいな。それって、友達くらいにお互い信頼し合ってて初めて成立するのかな。だったら。
ああ、あたし、あなたの友達になりたい。
うん、友達のお兄ちゃん。あたしには兄弟がいないでしょ?だから、その人はまるで本当のお兄ちゃんみたいにあたしを可愛がってくれるの。ほんとよ。だから、あたしもついつい甘えちゃう。
けど、最近……うん、最近ね、その人のことを好きになっちゃったみたい。猫背な後姿を見ると、胸がときめくの。流氷が浮かぶ海みたいな冷たい色をした瞳が、あたしの前でだけちょっと優しいのを感じると――これってちょっと自信過剰かな? でも、きっとそうなの。あの人の目があたしを見て優しく微笑んでくれると、あたし、逃げ出したいくらいに、あの人のことが好きになるの。これってきっと恋なんだよね。
でも、あたしとあの人は、まだ友達じゃないの。あたしにとってあの人は友達のお兄ちゃんだし、あの人にとってあたしは妹の友達なの。思えばちょっと迂遠な関係で、好きになるなんておかしいのかなぁ?
でも、走り出した恋はジェットコースターのように止まることを知らないし、加速していくばかり。あの人を想っているとき、あたしは世界で一番幸せな人間だよ。そんなふうに思うくらい、あの人のことが大好きなの。
けど、あの人は、あたしのことをそう思ってくれているかなぁ。妹の友達を、好きになってくれるかなぁ。思ってみればなんだか思い上がり。ちょっと可愛がってもらったくらいで、勝手に有頂天。けど、それでも好きなんだもん。
恋人になりたいなんて我儘は言わないよ。せめて、マリィが間に入ってくれなくても、二人きりでも成立する関係になりたいなぁ。友達になってほしいなぁ。友達だったら、急に「明日遊ぼう」なんて電話をしたっていいでしょ? 「友達のお兄ちゃん」には、こんなこと言えないね。でも、友達だったら言ってもいいんでしょ?
ネズさんの、友達になりたいなぁ。友達だったら、「今日寒いね」でも「眠いね」でも「暑いね」でも、なんでもメール出来るのに。
人の心に踏み入るのはいけないことって言うじゃない。でもね、あたしはそれの全てがいけないことだとは思わないの。
だって、チャンピオンという称号がとても重たくて、期待が痛くて、誰にも会いたくなくて、苦しい。そう思って泣いていた時、電話をかけてきてくれたのがネズさんだったの。あたしは元気なふりをして、はい、何かありました? なんて言ったんだけど、ネズさんは「今どこにいるんですか」って聞いてきて。あたし、その時巨人の帽子でテントを張って、中に引きこもってたんだけど。でもね、ネズさんは走るのが苦手なのに、息が切れるまで走ってあたしのところに来てくれたの。「おれの前では我慢しなくていいよ」って言ってくれた。だからあたし、ネズさんの背中にしがみついて、ん泣いて……それから疲れて寝ちゃっても、ネズさんはずっとそばにいてくれた。それから、「何かあったんですか」って真剣な顔で聞いてくれた。
――嬉しかった。みんな夢を持って遠くに行ってしまって、あたしひとりだけ取り残されたみたいだったから。
だから、ねぇ。ネズさん。あたしもあなたにとってそうでありたいな。ウールーが優しく草を食むように、あたしも、あなたの心の中にある不安だとか悲しさを、優しく食べてあげたいな。それって、友達くらいにお互い信頼し合ってて初めて成立するのかな。だったら。
ああ、あたし、あなたの友達になりたい。