山田三郎と放課後の共犯者
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最近出来た俺のゲーム友達が居る。
名前は山田三郎。
めちゃめちゃ頭良いけどいっつも石みたいに表情動かねえし話しかけた友達は全員口を揃えて
「あいつ性格悪い」
って言ってたし今まで……正直避けてた。
でもまあ話しかけたら結構良い奴だし俺がスマホ持ってるのチクらねえし──まああいつもやってたから言わないだけかもしれない──俺達は多分良好な関係を築けていると思う。
しかし……この状況は例え友達だとしてもその、嫌ではないけど、やばいと思う。ごめんまじで語彙力ない。
「さぶろっ……お前ちょっと場所取りすぎじゃね?」
「はっ?お前のが身長でかいんだから僕の方が狭いに決まってるだろ……?」
「いやいやお前その無駄に長い足が俺の足踏んでんだけど」
「僕だってお前の腕が顔の横にあって窮屈だ」
「おまえな……ごめんて……」
俺達掃除用具入れの中で押し問答をしていた。
「やべえ!!忘れた!!」
「頭脳を?」
「お前サラッとバカにしてんじゃねえぞ!じゃなくて宿題だよ……数学のプリントあったろ?」
「あぁ……あれなら僕も置いてきたよ」
「マジ?仲間じゃん」
「もう終わったし」
「死ね」
時は行きつけのファーストフード店で三郎の持ってきたカードゲームを教えて貰っていた時まで遡る。俺は三郎の至極丁寧な説明に相槌を打ちながら今日のメシについて考えていた。
その時ふと今日はやることがあった気がして、そして宿題に行き着いたわけだが……もう既に日は暮れていたし外は真っ暗だし、忘れ物常習犯な俺はこんな時間に先生に「わすれものしたので教室までいきたいです」なんてかわいいこと言っても怒鳴られること請け合いだ。
「さぶろう……一緒に学校までもどらね……?」
「なんで僕が……」
「頼む!一生の!お願い!」
「一生のお願いそんな所に使うなよ……あー仕方ないなあ行ってあげるよ」
「さっすが三郎!何だかんだ言ってもやっさし~~!」
「舌引っこ抜くぞ」
「ごめんなさい」
そんなこんなで優等生である三郎を盾に先生の目をスルーし、三郎と仲良く教室まで来た俺はプリントを取って廊下に出ようとした。その時。
廊下の先から懐中電灯を持って誰かがこちらに向かってくるのが見えた。
(あ、あの強面は……橋本!?)
「ん!?そこ!!誰かいるのか!?」
あの大声は体育教師である橋本に違いなかった。
なんか分からんけどとにかく理不尽な理由でよく俺を叱る橋本だ。たぶん、いや絶対、こんな状況の俺を見たらキレる。それで卒業までネチネチこのネタを引っ張るぞ……!!
「三郎、引っ込め!」
「はっ!?」
「ばっか声でけえよ……」
俺は状況を理解していない三郎の口を手で塞いで教室を見渡して隠れられそうな場所を探した。教卓の裏、いや照らされたら確実に見つかる。ロッカーの影、以下同文。そうだ、掃除用具入れ!
誰かが殴ったのか知らないが新調されたらしい以前より一回り大きな掃除用具入れの扉を静かに開けてダッシュで入った。わりと広い。
いや待て、三郎結構でかいな?
そして冒頭に戻る。
「……?見間違いかァ?」
(さ、三郎ぜってえ喋んなよ)
(お前もな……!?)
二人で息を潜めて隙間から様子を伺った。左手がなんかすげえあつい…あつい?
ちら、と自分の左手の行き先を見れば三郎の左胸あたりを手のひらで押すように触っていた。これ女の子だったらラッキースケベだなとか、いや思ってない。嘘。ちょっと思った。
左手から三郎の熱と鼓動……までは分からないけどとにかく緊張してるのはわかった。やべ、自分の心臓の音めっちゃ聞こえるな。聞こえてないかな、なんて。
「……なんもいねえか……」
(よっし……!)
足音が遠ざかって俺達は笑顔で顔を見合わせた。隙間から入る月明かりが三郎の顔を照らす。お前そんなに熱かったか?めちゃめちゃ赤いぞ。
……なんて思っていて気付いた。俺達の顔めちゃめちゃ近い。鼻と鼻がくっつきそうだった。
「わり、出るか」
「っあ、わかった……」
「お前大丈夫か?めっちゃ体熱いぞ」
「は……?お前があんな近づくからだろ」
「お前ほっそいもんな、熱とか弱そ。夏には死にかけてんじゃねえの」
「そんなわけないだろ……」
いや、死にそうなくらい三郎はちょっとふらふらしてた。目がぼやっとしてるしもしかしなくてもお前暑いの苦手だろ……
「帰りアイス買ってやるからさ、ほら帰るぞ……こんどは橋本居ませんように……」
「……ハーゲンダッツ」
「たけえよアホ……」
もうすっかり夜だった。恐らく7時くらいだろうか。
「いや~~わりいな三郎付き合ってもらって!」
「別にいいよ。アイス貰えたし」
「おうおう大切に食えよ俺の120円をよ」
「美味しくいただくよお前の金」
「もっと申し訳なさそうに食えよ!!!」
俺はプリントをリュックに突っ込んで三郎と歩いていた。夏とはいえ夜はやっぱり冷え込むな。
「……さっきのちょっと楽しかったな、いつかもう1回やろうぜ」
「は?二度と御免だよ」
「え~~映画みたいで楽しかったじゃん」
「バカは楽でいいね」
「お前も共犯だろ~~~?」
三郎の頭を弱めに拳でぐりぐり押してやれば「痛いよ」と俺を睨んだ。さっきも思ったけど結構可愛い顔してるなこいつ。
そんな掛け合いをしていたらもう三郎と別れる場所まで来ていた。こんな夜中まで三郎と歩くこと無かったからなんか新鮮な気分だ。
「じゃ、また明日な!」
「……ん、じゃあね」
「おう」
夜だからきっと見えていないだろう。
いやそうだと願いたい。
だってあんなに近くにいたら暑いし、先生に見つかりそうだと思ったら別に悪いことしてなくたって緊張するだろ。仕方ない。というか、あんなとこに手をやるあのバカが悪いだろ。それにそれに、それに…
「……なんなんだよ」
スプーンで乱雑にすくったアイスを口に放り込んだ。
不整脈はまだ治らない。
名前は山田三郎。
めちゃめちゃ頭良いけどいっつも石みたいに表情動かねえし話しかけた友達は全員口を揃えて
「あいつ性格悪い」
って言ってたし今まで……正直避けてた。
でもまあ話しかけたら結構良い奴だし俺がスマホ持ってるのチクらねえし──まああいつもやってたから言わないだけかもしれない──俺達は多分良好な関係を築けていると思う。
しかし……この状況は例え友達だとしてもその、嫌ではないけど、やばいと思う。ごめんまじで語彙力ない。
「さぶろっ……お前ちょっと場所取りすぎじゃね?」
「はっ?お前のが身長でかいんだから僕の方が狭いに決まってるだろ……?」
「いやいやお前その無駄に長い足が俺の足踏んでんだけど」
「僕だってお前の腕が顔の横にあって窮屈だ」
「おまえな……ごめんて……」
俺達掃除用具入れの中で押し問答をしていた。
「やべえ!!忘れた!!」
「頭脳を?」
「お前サラッとバカにしてんじゃねえぞ!じゃなくて宿題だよ……数学のプリントあったろ?」
「あぁ……あれなら僕も置いてきたよ」
「マジ?仲間じゃん」
「もう終わったし」
「死ね」
時は行きつけのファーストフード店で三郎の持ってきたカードゲームを教えて貰っていた時まで遡る。俺は三郎の至極丁寧な説明に相槌を打ちながら今日のメシについて考えていた。
その時ふと今日はやることがあった気がして、そして宿題に行き着いたわけだが……もう既に日は暮れていたし外は真っ暗だし、忘れ物常習犯な俺はこんな時間に先生に「わすれものしたので教室までいきたいです」なんてかわいいこと言っても怒鳴られること請け合いだ。
「さぶろう……一緒に学校までもどらね……?」
「なんで僕が……」
「頼む!一生の!お願い!」
「一生のお願いそんな所に使うなよ……あー仕方ないなあ行ってあげるよ」
「さっすが三郎!何だかんだ言ってもやっさし~~!」
「舌引っこ抜くぞ」
「ごめんなさい」
そんなこんなで優等生である三郎を盾に先生の目をスルーし、三郎と仲良く教室まで来た俺はプリントを取って廊下に出ようとした。その時。
廊下の先から懐中電灯を持って誰かがこちらに向かってくるのが見えた。
(あ、あの強面は……橋本!?)
「ん!?そこ!!誰かいるのか!?」
あの大声は体育教師である橋本に違いなかった。
なんか分からんけどとにかく理不尽な理由でよく俺を叱る橋本だ。たぶん、いや絶対、こんな状況の俺を見たらキレる。それで卒業までネチネチこのネタを引っ張るぞ……!!
「三郎、引っ込め!」
「はっ!?」
「ばっか声でけえよ……」
俺は状況を理解していない三郎の口を手で塞いで教室を見渡して隠れられそうな場所を探した。教卓の裏、いや照らされたら確実に見つかる。ロッカーの影、以下同文。そうだ、掃除用具入れ!
誰かが殴ったのか知らないが新調されたらしい以前より一回り大きな掃除用具入れの扉を静かに開けてダッシュで入った。わりと広い。
いや待て、三郎結構でかいな?
そして冒頭に戻る。
「……?見間違いかァ?」
(さ、三郎ぜってえ喋んなよ)
(お前もな……!?)
二人で息を潜めて隙間から様子を伺った。左手がなんかすげえあつい…あつい?
ちら、と自分の左手の行き先を見れば三郎の左胸あたりを手のひらで押すように触っていた。これ女の子だったらラッキースケベだなとか、いや思ってない。嘘。ちょっと思った。
左手から三郎の熱と鼓動……までは分からないけどとにかく緊張してるのはわかった。やべ、自分の心臓の音めっちゃ聞こえるな。聞こえてないかな、なんて。
「……なんもいねえか……」
(よっし……!)
足音が遠ざかって俺達は笑顔で顔を見合わせた。隙間から入る月明かりが三郎の顔を照らす。お前そんなに熱かったか?めちゃめちゃ赤いぞ。
……なんて思っていて気付いた。俺達の顔めちゃめちゃ近い。鼻と鼻がくっつきそうだった。
「わり、出るか」
「っあ、わかった……」
「お前大丈夫か?めっちゃ体熱いぞ」
「は……?お前があんな近づくからだろ」
「お前ほっそいもんな、熱とか弱そ。夏には死にかけてんじゃねえの」
「そんなわけないだろ……」
いや、死にそうなくらい三郎はちょっとふらふらしてた。目がぼやっとしてるしもしかしなくてもお前暑いの苦手だろ……
「帰りアイス買ってやるからさ、ほら帰るぞ……こんどは橋本居ませんように……」
「……ハーゲンダッツ」
「たけえよアホ……」
もうすっかり夜だった。恐らく7時くらいだろうか。
「いや~~わりいな三郎付き合ってもらって!」
「別にいいよ。アイス貰えたし」
「おうおう大切に食えよ俺の120円をよ」
「美味しくいただくよお前の金」
「もっと申し訳なさそうに食えよ!!!」
俺はプリントをリュックに突っ込んで三郎と歩いていた。夏とはいえ夜はやっぱり冷え込むな。
「……さっきのちょっと楽しかったな、いつかもう1回やろうぜ」
「は?二度と御免だよ」
「え~~映画みたいで楽しかったじゃん」
「バカは楽でいいね」
「お前も共犯だろ~~~?」
三郎の頭を弱めに拳でぐりぐり押してやれば「痛いよ」と俺を睨んだ。さっきも思ったけど結構可愛い顔してるなこいつ。
そんな掛け合いをしていたらもう三郎と別れる場所まで来ていた。こんな夜中まで三郎と歩くこと無かったからなんか新鮮な気分だ。
「じゃ、また明日な!」
「……ん、じゃあね」
「おう」
夜だからきっと見えていないだろう。
いやそうだと願いたい。
だってあんなに近くにいたら暑いし、先生に見つかりそうだと思ったら別に悪いことしてなくたって緊張するだろ。仕方ない。というか、あんなとこに手をやるあのバカが悪いだろ。それにそれに、それに…
「……なんなんだよ」
スプーンで乱雑にすくったアイスを口に放り込んだ。
不整脈はまだ治らない。