男塾に来てから早2週間。優次もこの男塾に慣れてきた。
しかし、度重なる悪魔の襲撃は、自分だけでなく、愛天使となった桃や富樫をも疲れさせる。
（桃や富樫には悪いと思っているが、だからと言って……）
そう。現在優次は、登校日であるにも関わらず、爆睡している桃と富樫を起こしにわざわざ自分の部屋から来たのである。
桃・富樫と同室の松尾・田沢・椿山の三人は、桃たちを何度も起こそうとしたが、全く起きないというのだ。
「桃～富樫～、起きてくれ～」
「お前らが起きんかったら、わしら全員廊下行きじゃ～」
「頼むよ～」
これほどまでに三人が懇願しているにも関わらず、二人は一向に起きる気配を見せない。
（仕方ねえ……）
優次はまず桃に近づく。そして桃の耳元に小さな声で話す。
「起きないか」
声があまりにも小さすぎて三人には聞こえなかったが、確かに桃が起きた。
「えっ！？お、おい富樫！起きろ！」
「なんだよ……！？優次！？なんでここに！？」
「お前らが心配だったからだよ……それに、ここ最近俺がお前らを酷使させちまったって責任もあるし……」
優次は最後のセリフを濁しながら言う。
「な、なんじゃ？優次」
「なんだか嫌な予感がするのう」
「お、おれも……」
松尾達は優次の様子を不安視していた。
「い、いかん！遅刻じゃ～！」

案の定、6人は遅刻、廊下に立たされてしまった。
「なんなんだよ……」
優次は虚しさを吐く。

教室内
「おい鬼ヒゲ。桃たちはどうした」
クラスのムードメーカーの虎丸が発言をする。
「あ～ん？あいつらか～。今日は遅刻してたから廊下じゃ」
教官の鬼ヒゲが現在の桃たちの状況を話す。
「そうなんですか？普段はそんなことないんですよね？」
ミッシェルが言う。
「はいはい、そんなどうでもいいことは終わりじゃ。続けるぞ」

優次達の廊下に立たされるの刑が終わったのは昼食になってからだった。
「腹が減ったぞー！」
「と、虎丸は空腹でも元気だな……」
優次は虎丸の元気さについていけないようだ。
「それにしてもどうしたんじゃお前ら！特に桃と富樫は寝不足だなんて！」
「ははは……ちょっとな」
（愛天使業で忙しいなんて……な）
（すまない……俺がお前達を酷使している自覚はあるんだ……）
言葉を濁す桃に対し、申し訳ないと思う優次であった。