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「渋沢さん、その代名詞はwhoよりも好ましい単語があります。それと三人称のsをつけ忘れていますよ！」
「今どれが喋ったんですか？ 先生のせいでケアレスミスしてると思うんですけど･･･」


　かえって集中できない環境を作り出してるのはこのひとだ、殺せんせー。目の前に時折ぶれながらうねる触手生物はなぜか三体いて、そのぶん気苦労も三倍になっているような気がする。居残りをしている教室内の殺せんせーすべてを計算すればかなりの量だ。一体くらい売ってもバレないんじゃないかってくらい。

中間テストに向けてやけに気合いが入った殺せんせーの指導は思っていたより分かりやすかった。隣の赤羽が彼の殺せんせーを撃ったりすると他の殺せんせーまで変形してかなりいい迷惑だったがやはり頭がいいらしく先生に勧められて先の範囲までやっている。私は心配性が災いしてテスト範囲を繰り返し解いた。

明確に勝負をしたことはないけど恐らく赤羽は私より頭が良い。二年生のとき聞いた成績もかなりなものでちょっと引いた。素行が最悪なおかげで先生には手を焼かせていると思うが成績面ではなんら心配もないのだろう。私も悪くはないが相当の努力を要する。

　いい子でいなきゃ。先生に手をかけさせる子じゃダメだ。いい子でいなきゃ。先生に迷惑かけないようにしなきゃ。でないと、でないとまた怖いことが起きてしまう。不吉でよくないことが起きてしまう。


「どれも満遍なくできてますが国語の伸びが良いですねえ」
「ほんとは苦手だったんです。暗記とかのほうが得意で」
「渋沢さんA組では成績どの辺だったの？」
「そんなに良くないよ。クラスでも浅野たちより下だった」


突然話しかけられて内心驚いたけど普通に返すことができた。心のざわめきを誤魔化すように鞄の中からシャー芯を探す。思ったより見つからず焦っていると不意にスマホの画面が点灯した。マナーモードにしているから音は鳴らないがメッセージが来たらしいその通知に、私の心は激しく動揺させられてしまった。

どうしよう。･･･とりあえず勉強してる場合じゃないよ！ 早く行かないと。私は殺せんせーに一言断りお礼を言って居残り勉強を抜けることになった。立ち上がると同時に立ちたがるのは赤羽業。どうしてなんだ。こんなときにまで。


「どこ行くの？」
「本校舎」
「じゃあ俺も着いてこっかな」
「･･･勝手にすれば」



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