パラライズ【フィディオ・アルデナ】
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ジャパンエリアのとある場所で二人は密かに寄り合っていた。朝は垣根の隙間から溢れんばかりに漏れはじめて、白い光がこうこうと男女を照らしている。朝がくる。夜が沈んでいく。きっと変わらない朝が来てしまう。二人は少しの面積だけ触れて口吻を交わした。ふたりは、大理石のように美しかった。
「次の試合は俺たちが勝ってみせるよ」
「うん。きっと勝ってみせて」
「はは、君も薄情な奴だね」
恋に落ちてしまったのよ。平気な顔でななみは微笑む。フィディオは持ってきた一輪のチューリップを差し出した。恋に浸した色をしている。少女の頬の色をしている。その血色のいいくちびる色をしている。香りはあまり無い。それはフィディオの誠実さを表しているように見えた。
そして、どこから取り出したのかうすいビニールの袋を。中には不思議な色のクッキーが何枚かぶつかり合って音を立てている。フィディオはそれを自分で開けてしまうとそのうちの一枚を優しくななみの口にほうり込んだ。フィディオの指はそのやわらかなくちびるに触れ、男はいたく満足そうに笑った。
「作ったんだ。珍しいだろう」
「何のクッキー?」
「秘密」
とても濃い蜂蜜の味がすると思った。誤魔化すような。けれどそれよりもっと深い何かの本質が隠れていると思った。まるで蜜瓶へ漬け込んだように甘い。けれど。ななみはもっと別の意味があるのだと思った。
朝がやって来る。早く戻らなければいけない。ななみは名残惜しさにチューリップの花弁を小さくかじった。気付いた。花粉がついてない。きっとフィディオがおしべごと取ってしまったのだろう。唖然と目を開く少女の前で、イタリアの男は残念そうにうすく笑った。きっとフィディオは、チューリップを食べて欲しいのだ。葉脈一本として残さずに。
「君が気付いてくれたようでほんとうに良かった!」
男は、含み笑いをしてななみを抱き締める。執着のキスをした。朝がくる。夜はもう沈んでしまう。ななみの心臓に絡み付いて引っ掻き回す愛の花。熱く熱く放さないキス。弾けたように崩れたななみは喉の奥になか指を突っ込んで、惨めにクッキーを吐き出そうとした。酸っぱい胃液はアスファルトの道にぼたぼたとこぼれ落ちた。胃液にまみれたななみの顔は朝日に照らされてきらきら輝いている。
フィディオはただ少女を抱き締め、恍惚として微笑んだ。朝は、すぐそこまでやって来ていた。
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ジャパンエリアのとある場所で二人は密かに寄り合っていた。朝は垣根の隙間から溢れんばかりに漏れはじめて、白い光がこうこうと男女を照らしている。朝がくる。夜が沈んでいく。きっと変わらない朝が来てしまう。二人は少しの面積だけ触れて口吻を交わした。ふたりは、大理石のように美しかった。
「次の試合は俺たちが勝ってみせるよ」
「うん。きっと勝ってみせて」
「はは、君も薄情な奴だね」
恋に落ちてしまったのよ。平気な顔でななみは微笑む。フィディオは持ってきた一輪のチューリップを差し出した。恋に浸した色をしている。少女の頬の色をしている。その血色のいいくちびる色をしている。香りはあまり無い。それはフィディオの誠実さを表しているように見えた。
そして、どこから取り出したのかうすいビニールの袋を。中には不思議な色のクッキーが何枚かぶつかり合って音を立てている。フィディオはそれを自分で開けてしまうとそのうちの一枚を優しくななみの口にほうり込んだ。フィディオの指はそのやわらかなくちびるに触れ、男はいたく満足そうに笑った。
「作ったんだ。珍しいだろう」
「何のクッキー?」
「秘密」
とても濃い蜂蜜の味がすると思った。誤魔化すような。けれどそれよりもっと深い何かの本質が隠れていると思った。まるで蜜瓶へ漬け込んだように甘い。けれど。ななみはもっと別の意味があるのだと思った。
朝がやって来る。早く戻らなければいけない。ななみは名残惜しさにチューリップの花弁を小さくかじった。気付いた。花粉がついてない。きっとフィディオがおしべごと取ってしまったのだろう。唖然と目を開く少女の前で、イタリアの男は残念そうにうすく笑った。きっとフィディオは、チューリップを食べて欲しいのだ。葉脈一本として残さずに。
「君が気付いてくれたようでほんとうに良かった!」
男は、含み笑いをしてななみを抱き締める。執着のキスをした。朝がくる。夜はもう沈んでしまう。ななみの心臓に絡み付いて引っ掻き回す愛の花。熱く熱く放さないキス。弾けたように崩れたななみは喉の奥になか指を突っ込んで、惨めにクッキーを吐き出そうとした。酸っぱい胃液はアスファルトの道にぼたぼたとこぼれ落ちた。胃液にまみれたななみの顔は朝日に照らされてきらきら輝いている。
フィディオはただ少女を抱き締め、恍惚として微笑んだ。朝は、すぐそこまでやって来ていた。
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