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Gatto che corre nel cielo notturno

「"Ambasciator non porta pena."」
 パオロから依頼の詳細を聞き、ヴィンチェンツォは思わずそう呟いた。
「ルカのことか、アイツには話していない。」
「そうだろう。知っていればルカが仲介に立つはずがない。」
 眉間に皺を寄せ、受け取った資料を見返したヴィンチェンツォは深いため息をついた。



「あいつは結局自分で手を汚すことはせず、ただ上澄みを啜るだけの腑抜けだった訳だ。」
 パオロと別れ帰宅したヴィンチェンツォは、ソファに腰掛けると彼と対面してからずっと抑えていた苛立ちを声にして吐き出した。
「体裁だけとは言え、カサノ家のボスが聞いて呆れる。」
 そう。カサノ家の現ボスはヴィンツェンツォだ。
 しかし、血縁関係を重視するマフィアの世界、血の繋がりのないヴィンツェンツォをボスにすることは「カサノ家は他人に任せないと回せない程一族の結束が弱い」ことを意味する。その為、外向きはパオロがカサノ家のボスを務めていた。
 だが、お察しの通りパオロはボスの器ではない。カサノ家の皆がそれを理解していた。行動力、知力、人柄、全てにおいてヴィンツェンツォが勝っている。よって、ヴィンツェンツォは「影のボス」としてカサノ家を守っていた。
 いつまでたってもカサノ家の放蕩息子で居続けるパオロにヴィンツェンツォも辟易していたが、他でもないルカからの頼みだ。やるからには最善を尽くすと決めたのだ。
 とは言ったものの、こんなにも気が乗らない案件は久しぶりだ。
 ソファに寝転がり思わず、
「ミンソン以来か・・・。」
 と、7年前の最悪なデートを思い出してしまった。
「あれに比べればまだマシかもしれないな。」
 ハッと息を吐きだすと、肩の荷が少しは降りたのか、ヴィンチェンツォは口の端を少しだけ緩めた。



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