「発表会？凄いじゃない！」
　家に帰ったジェナは、チャヨンにピアノ教室でのことをそれは嬉しそうに話した。
「まだいつになるかはわからないけど、そろそろ出てもいい位上手くなったって先生が言ったの！」
　嬉しくて声も動きも大きくなるジェナ。こういう所は母親似だ。
「もうドレスの色は決めてあるの。」
　得意げにジェナは言う。
「紺色。紺色がいい！」
「紺色？ピンクとか黄色とかかわいいわよ。」
「わたしもうお姉さんよ！たまにはしっくにきめたいの。」
　かわいいと言う言葉にムッとしたのか、ジェナは腕を組んで首を振った。
（ファッション誌でも読んだのかしら。でも・・・）
「分かった。どんなデザインがいいか考えとくのよ。」
　チャヨンはパソコンから通販サイトを開くと、ジェナの前に置いて言った。
「初めての発表会だもの、全身お姉さんにならなくちゃね。」
　うん！と、ジェナは食い入るようにサイトを物色し始めた。彼女の真剣な横顔をみたチャヨンは、
（ほんとにあなたそっくりね。）
　そう感じると同時にふと、チャヨンは事務長の言葉を思い出した。チャヨンにとってジェナの顔は毎日見るから当たり前過ぎて今まで気付けなかったのだ。
「発表会、動画を撮っておくわね。」
　ジェナの小さな肩に手を乗せ、チャヨンは言った。
「可愛く撮ってね！」
　振り向いたその笑顔も彼によく似ている。込み上げるものに気付かないように、気付かれないようにチャヨンはジェナの頭を優しく撫でた。 ジェナは嬉しそうに足をバタつかせた。