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レオン・クラウンドールは今、数少ないピンチに瀕していた。そう、それは最大のピンチと言っても構わないだろう。
「はーい、では、事前説明があった通り、四人グループを作ってくださいね〜。男女混合は認めませんよ〜」
未だ幼馴染であるミコト以外に自身のクラスメイト、そして、同じ科の同級生と殆どと言っていい程に馴染めていないこの現状において、それはあまりにも無慈悲な指示だった。
「……終わった」
そんなレオンの、心の底から出た一言だった。
教師からの無慈悲な指示が出て暫く。レオンは視線だけで周りを見る。既に過半数の生徒は四人グループを組み終えているようでワイワイとしていた。もちろんそれは自身の幼馴染であるミコトも同様に。ぱちりと視線があったミコトからは明らかに心配そうな表情をされる。
いや無理だよ。助けてくれ。
視線でそう助けを求めるも返ってくるのは無理という言葉がはっきり見える視線のみ。
もうヤダ。このままさりげなくバックれてもいいかな。そう思いながらため息を付くと、トン、と肩を叩かれる。
誰だよ、と半ば八つ当たり交じりに振り返ると、そこに居たのは片目を眼帯で隠した青髪の生徒と、金髪の小さな生徒、そして白髪の背の高い生徒の3人組だった。
「なぁ、誰かと組む予定ある?」
「……別にない、けど」
「ならさ、俺たちと組まねぇ?うちさ、あと1人足りねぇんだよ」
ざわ、とどよめき始める周りを無視して、笑いながら手を差し出す青髪の生徒。ちらりと一緒にいる2人を見るが、特に敵意や悪意といったものや異論も無いようで、目があった白髪の生徒は青髪の生徒同様に笑いかけてくる。金髪の生徒の方は人見知りなのか、白髪の生徒の後ろに隠れてはいるものの、気になるのかちらちらとレオンの方を見ていた。
一瞬レオンはどうするか悩んだが、別に他に組む相手もいない。だとすれば答えは1つ。
「じゃあ……よろしく」
「おぅ、よろしくな!」
差し出された手をおずおずと握り返せば青髪の生徒は笑いながらそう言った。
そんな騒動があった後。グループが組み終わった為、各々自己紹介や交流の時間ということになり、ガヤガヤとした賑やかな空間に変わる。それはレオン達も例外ではなく。4人は向き合って自己紹介を始める。
「自己紹介……っていっても、多分僕の事は、皆知ってる…よね?」
「まぁ、有名人だしなアンタ。レオン・クラウンドール。【ドリーミングプロダクション】所属の看板タレントで、約1000人が入学するこの学園で首席入学。生まれはあのクラウンドールで、容姿端麗、成績優秀。出来ないことの方がないんじゃないかって位に何でもできるとんでもねぇ奴」
「ほ、本人を目の前に言うんだね…!?」
「へぇ。そんな風に言われてるんだ僕…まぁいいけど」
特に興味無さげにそういうレオン。金髪の生徒は、白髪の生徒の後ろでオロオロしながらレオンに尋ねた。
「えっ、い、いいんですか…!?」
「うん。普段から色々あることないことは言われてるから、慣れてる」
「は〜、有名人ってのは大変だなぁ」
尚もオロオロし続ける金髪の生徒の壁にされている白髪の生徒は関心しながらレオンを見る。青髪の生徒はそんな様子を笑いながら、軌道がズレそうになっている話題を修正するかのように、自己紹介を始めた。
「兎に角、俺たちの自己紹介をすべきだよな。俺はリン。クラスはAクラス。で、こっちのでかいやつがアルフレッド」
「どーも。アルでもなんでもいいぜ。同じくAクラス所属だ」
「こんだけでかいくせに動物にとにかく好かれてるから、動物の群れ見かけたらコイツって思えばいいぜ」
「へぇ、今度探してみようかな」
動物、そのワードを聞いてレオンは初めて表情を僅かに動かす。白髪の生徒─アルフレッドはその様子に気付いたのか、話題を広げ始めた。
「お、もしかして動物、好きなのか?」
「うん。森とか作る上で大事な存在だからね。あと普通に好きなのもある」
「そうかい。じゃあ今度、俺んとこによく来るやつ紹介してやろうか?」
「それは是非」
嬉しいそうに会話の花を咲かせ始める2人に青髪の生徒─リンは態とらしく咳払いを1つする。そして、最後の1人の生徒を紹介し始めた。
「意外な共通点繋がったとこで、そいつの紹介も済ませとくな。アルの後ろに隠れてるちっこいのがスピカ」
「あっ…えっと…スピカ、です…クラスは2人と一緒でAクラス…です…」
「この通りだいぶ人見知りだが、慣れると親鳥についてくる小鳥みたいにくっついてくるから」
「こ、小鳥…!?」
「なんだよ、別に間違っちゃねぇだろ?」
「ダッハハ!確かに間違っちゃねぇなぁ!」
「ちょっと、2人とも…!?」
本当に小動物を彷彿とさせるようにぷくぷくとさせる金髪の生徒─スピカ。リンもアルフレッドも楽しそうに笑いあうその様子は昔からの仲を示していた。それこそ幼馴染を連想させる程に。
「リンにアルフレッド、スピカね。うん、覚えた。……そういえば3人とも家名がないんだね」
突然のレオンの発言。途端、わぁわぁと言い合っていた3人はピタリと言葉を止める。暫くして苦笑いを浮かべたリンが口を開いた。
「アンタ、いきなりぶっこんでくるのな…」
「あ、これ聞いちゃダメなやつ?」
「いや、別に駄目ってわけじゃねぇけどよ…まぁ、人は選べよ?俺たちは気にしねぇけど、人によっては気にする話題だぞ、これ」
「そうなんだ。気をつけるよ」
「……アンタ、なんかどっかズレてんのな…で、なんだ、家名の話だったか?まぁ特に隠すつもりもねぇから話すけど、俺たち3人共孤児院出身なんだよ」
「そうなんだ」
「……それだけ?」
「え、うん」
あまりにも想定外の反応に、3人は思わず目をパチクリとさせる。だって今までこんな反応をされたことなど、一度もないのだから。
やがて、リンがハハ、と笑いながらも心の中で3人全員が思っていたことを口に出す。
「普通は孤児だって分かると同情するとか、アンタみたいな有名な家名のやつらとかは馬鹿にするか何かしらしてくるんだけどな…本当に変わってるな」
「それはよく言われる」
「なんだ、既に言われてんのかい」
「うん。というか、少なくともバカにするのは違うでしょ、僕から聞いたことなんだし。それに、同情したところでさ、何が変わるのって話。同情されるのも疲れるじゃん。あと、普通に僕自身がバカにされたり同情されたりするのに疲れてるから、同じかなって」
「…アンタも色々大変なんだな」
「まぁね。僕が振っといてなんだけど、この話はそろそろ終わっていいでしょ。みんな何の魔術が得意なの?」
今までのどんな人物とも違うレオン。反応も、態度も、考えも。
リンとアルフレッドは顔を見合わせると、やがて耐えきれなくなったかのように2人揃って笑い始めた。
「やっぱ最後の一人をあんたにして正解だったよ!」
「そう?」
「あぁ!お前最高に面白いな、レオン!」
「な!」
「面白い……?変人とか、変わってるとかじゃなくて?」
分からない、といった顔で首を傾げるレオンに笑いっぱなしのリンとアルフレッド。
スピカもレオンに対して多少なりとも心は開いたのか、アルフレッドの後ろからおずおずと出てきて、レオンの方をちらちらと見る。
彼の長い前髪に隠れて分かりづらかったが、2人より少し大きな目は、自身や2人より幼いのであろう印象を与えた。
「あ、あの…、得意魔術…ですよね…?僕は一応、全ての属性の魔術が使え、ます…」
「全属性?凄いね」
「い、いえ!その……まだ慣れてなくて…あ、足を引っ張るかもしれない、です……」
「あぁ、足の引っ張りに関しては多分僕が1番だからそこまで気にしなくても大丈夫だよ」
「で、でも…レオンさんは首席で…」
「筆記はね。魔術に関しては誰よりも下。だって魔術使えないし」
「………………………ん?今なんつった?」
あまりにも自然に彼から発せられたその言葉に、笑っていた2人はピタリと止み、スピカは目を丸くした。
思わず3人は耳を疑う。いやいやまさか聞き間違いだろう、そう願って。
だがその願いも虚しく、レオンはあっけらかんと告げる。
「僕、魔術が一切使えないんだよね。初歩の魔術すら使えないよ」
「……マジで言ってる?」
「これが冗談に聞こえる?」
「あの…レオンさん…嘘はついてない…ですよ……本当みたいです…」
開いた口が塞がらないとはまさにこの事を言うのだろうか。リンは後にそう思う程、声も出ない程に驚く。アルフレッドも、目が点になりながらも念押しかの様に確認するが、本当のようで。
シン、と静まり返た空間を最初に破ったのはリンだった。
「いや、正直魔術系で1番足引っ張るのは俺かな、なんて思ってたけど…クラウンドールって強い魔力持ってる家系じゃなかったか?」
「実際、姉はそうだよ。でも僕は魔術の才能は全くない。そのかわり…」
レオンはそこで1度言葉を区切ると、パチンと指を弾いた。すると、ひらひらとどこからか花びらが舞い降りてくる。周りを見るが、術式が展開された様子はない。
「魔法が使える。といっても、まだまだ扱いが下手だって師匠によく怒られるけど」
「………正直、なんで首席取ったやつが魔術科にって思ってたけど…こりゃ確かに少なくとも特魔科ではないわな」
「うん、特魔科は魔術に対する授業が多いからね。そんな訳で、魔術系の課題は迷惑しかかけないと思う」
「ハハ、堂々としてんなお前!やっぱり面白いよ!」
「元々迷惑しかかけん前提のやつがここにいるから大丈夫だろ。なぁ、リン?」
「うるせぇわい」
アルフレッドとリンの掛け合いにレオンは首を傾げる。そこでそうだ、と思い出したと言わんばかりにリンは説明しだした。
「こん中で魔術の扱いが上手いのはアルだけなんだよ。スピカはさっき言ったみたいにまだ魔術に慣れてない。俺はそもそも初歩の魔術、というより身体強化の魔術以外まるで使えねぇ」
「ご、ごめんなさい……」
「まぁオレもオレで人並みだけどな。あまり期待しないでくれ」
そこまで聞いたレオンは成程、と1人納得すると、自身の中で出たらしい答えを口に出した。
「つまり…魔術系の授業はほぼほぼ補習確定って感じかな」
「多分な!悪いが付き合ってくれよな!」
「それはもちろん」
あまりにも正直すぎる結論に、アルフレッドは再び大爆笑し、リンは笑いながらレオンの背をバシバシと叩く。スピカはオロオロしながら謝りだし、レオンは気にしてないと返す。そんな賑やかな交流は、授業の終わりのチャイムが鳴り響いても尚、続いていくのだった。
「はーい、では、事前説明があった通り、四人グループを作ってくださいね〜。男女混合は認めませんよ〜」
未だ幼馴染であるミコト以外に自身のクラスメイト、そして、同じ科の同級生と殆どと言っていい程に馴染めていないこの現状において、それはあまりにも無慈悲な指示だった。
「……終わった」
そんなレオンの、心の底から出た一言だった。
教師からの無慈悲な指示が出て暫く。レオンは視線だけで周りを見る。既に過半数の生徒は四人グループを組み終えているようでワイワイとしていた。もちろんそれは自身の幼馴染であるミコトも同様に。ぱちりと視線があったミコトからは明らかに心配そうな表情をされる。
いや無理だよ。助けてくれ。
視線でそう助けを求めるも返ってくるのは無理という言葉がはっきり見える視線のみ。
もうヤダ。このままさりげなくバックれてもいいかな。そう思いながらため息を付くと、トン、と肩を叩かれる。
誰だよ、と半ば八つ当たり交じりに振り返ると、そこに居たのは片目を眼帯で隠した青髪の生徒と、金髪の小さな生徒、そして白髪の背の高い生徒の3人組だった。
「なぁ、誰かと組む予定ある?」
「……別にない、けど」
「ならさ、俺たちと組まねぇ?うちさ、あと1人足りねぇんだよ」
ざわ、とどよめき始める周りを無視して、笑いながら手を差し出す青髪の生徒。ちらりと一緒にいる2人を見るが、特に敵意や悪意といったものや異論も無いようで、目があった白髪の生徒は青髪の生徒同様に笑いかけてくる。金髪の生徒の方は人見知りなのか、白髪の生徒の後ろに隠れてはいるものの、気になるのかちらちらとレオンの方を見ていた。
一瞬レオンはどうするか悩んだが、別に他に組む相手もいない。だとすれば答えは1つ。
「じゃあ……よろしく」
「おぅ、よろしくな!」
差し出された手をおずおずと握り返せば青髪の生徒は笑いながらそう言った。
そんな騒動があった後。グループが組み終わった為、各々自己紹介や交流の時間ということになり、ガヤガヤとした賑やかな空間に変わる。それはレオン達も例外ではなく。4人は向き合って自己紹介を始める。
「自己紹介……っていっても、多分僕の事は、皆知ってる…よね?」
「まぁ、有名人だしなアンタ。レオン・クラウンドール。【ドリーミングプロダクション】所属の看板タレントで、約1000人が入学するこの学園で首席入学。生まれはあのクラウンドールで、容姿端麗、成績優秀。出来ないことの方がないんじゃないかって位に何でもできるとんでもねぇ奴」
「ほ、本人を目の前に言うんだね…!?」
「へぇ。そんな風に言われてるんだ僕…まぁいいけど」
特に興味無さげにそういうレオン。金髪の生徒は、白髪の生徒の後ろでオロオロしながらレオンに尋ねた。
「えっ、い、いいんですか…!?」
「うん。普段から色々あることないことは言われてるから、慣れてる」
「は〜、有名人ってのは大変だなぁ」
尚もオロオロし続ける金髪の生徒の壁にされている白髪の生徒は関心しながらレオンを見る。青髪の生徒はそんな様子を笑いながら、軌道がズレそうになっている話題を修正するかのように、自己紹介を始めた。
「兎に角、俺たちの自己紹介をすべきだよな。俺はリン。クラスはAクラス。で、こっちのでかいやつがアルフレッド」
「どーも。アルでもなんでもいいぜ。同じくAクラス所属だ」
「こんだけでかいくせに動物にとにかく好かれてるから、動物の群れ見かけたらコイツって思えばいいぜ」
「へぇ、今度探してみようかな」
動物、そのワードを聞いてレオンは初めて表情を僅かに動かす。白髪の生徒─アルフレッドはその様子に気付いたのか、話題を広げ始めた。
「お、もしかして動物、好きなのか?」
「うん。森とか作る上で大事な存在だからね。あと普通に好きなのもある」
「そうかい。じゃあ今度、俺んとこによく来るやつ紹介してやろうか?」
「それは是非」
嬉しいそうに会話の花を咲かせ始める2人に青髪の生徒─リンは態とらしく咳払いを1つする。そして、最後の1人の生徒を紹介し始めた。
「意外な共通点繋がったとこで、そいつの紹介も済ませとくな。アルの後ろに隠れてるちっこいのがスピカ」
「あっ…えっと…スピカ、です…クラスは2人と一緒でAクラス…です…」
「この通りだいぶ人見知りだが、慣れると親鳥についてくる小鳥みたいにくっついてくるから」
「こ、小鳥…!?」
「なんだよ、別に間違っちゃねぇだろ?」
「ダッハハ!確かに間違っちゃねぇなぁ!」
「ちょっと、2人とも…!?」
本当に小動物を彷彿とさせるようにぷくぷくとさせる金髪の生徒─スピカ。リンもアルフレッドも楽しそうに笑いあうその様子は昔からの仲を示していた。それこそ幼馴染を連想させる程に。
「リンにアルフレッド、スピカね。うん、覚えた。……そういえば3人とも家名がないんだね」
突然のレオンの発言。途端、わぁわぁと言い合っていた3人はピタリと言葉を止める。暫くして苦笑いを浮かべたリンが口を開いた。
「アンタ、いきなりぶっこんでくるのな…」
「あ、これ聞いちゃダメなやつ?」
「いや、別に駄目ってわけじゃねぇけどよ…まぁ、人は選べよ?俺たちは気にしねぇけど、人によっては気にする話題だぞ、これ」
「そうなんだ。気をつけるよ」
「……アンタ、なんかどっかズレてんのな…で、なんだ、家名の話だったか?まぁ特に隠すつもりもねぇから話すけど、俺たち3人共孤児院出身なんだよ」
「そうなんだ」
「……それだけ?」
「え、うん」
あまりにも想定外の反応に、3人は思わず目をパチクリとさせる。だって今までこんな反応をされたことなど、一度もないのだから。
やがて、リンがハハ、と笑いながらも心の中で3人全員が思っていたことを口に出す。
「普通は孤児だって分かると同情するとか、アンタみたいな有名な家名のやつらとかは馬鹿にするか何かしらしてくるんだけどな…本当に変わってるな」
「それはよく言われる」
「なんだ、既に言われてんのかい」
「うん。というか、少なくともバカにするのは違うでしょ、僕から聞いたことなんだし。それに、同情したところでさ、何が変わるのって話。同情されるのも疲れるじゃん。あと、普通に僕自身がバカにされたり同情されたりするのに疲れてるから、同じかなって」
「…アンタも色々大変なんだな」
「まぁね。僕が振っといてなんだけど、この話はそろそろ終わっていいでしょ。みんな何の魔術が得意なの?」
今までのどんな人物とも違うレオン。反応も、態度も、考えも。
リンとアルフレッドは顔を見合わせると、やがて耐えきれなくなったかのように2人揃って笑い始めた。
「やっぱ最後の一人をあんたにして正解だったよ!」
「そう?」
「あぁ!お前最高に面白いな、レオン!」
「な!」
「面白い……?変人とか、変わってるとかじゃなくて?」
分からない、といった顔で首を傾げるレオンに笑いっぱなしのリンとアルフレッド。
スピカもレオンに対して多少なりとも心は開いたのか、アルフレッドの後ろからおずおずと出てきて、レオンの方をちらちらと見る。
彼の長い前髪に隠れて分かりづらかったが、2人より少し大きな目は、自身や2人より幼いのであろう印象を与えた。
「あ、あの…、得意魔術…ですよね…?僕は一応、全ての属性の魔術が使え、ます…」
「全属性?凄いね」
「い、いえ!その……まだ慣れてなくて…あ、足を引っ張るかもしれない、です……」
「あぁ、足の引っ張りに関しては多分僕が1番だからそこまで気にしなくても大丈夫だよ」
「で、でも…レオンさんは首席で…」
「筆記はね。魔術に関しては誰よりも下。だって魔術使えないし」
「………………………ん?今なんつった?」
あまりにも自然に彼から発せられたその言葉に、笑っていた2人はピタリと止み、スピカは目を丸くした。
思わず3人は耳を疑う。いやいやまさか聞き間違いだろう、そう願って。
だがその願いも虚しく、レオンはあっけらかんと告げる。
「僕、魔術が一切使えないんだよね。初歩の魔術すら使えないよ」
「……マジで言ってる?」
「これが冗談に聞こえる?」
「あの…レオンさん…嘘はついてない…ですよ……本当みたいです…」
開いた口が塞がらないとはまさにこの事を言うのだろうか。リンは後にそう思う程、声も出ない程に驚く。アルフレッドも、目が点になりながらも念押しかの様に確認するが、本当のようで。
シン、と静まり返た空間を最初に破ったのはリンだった。
「いや、正直魔術系で1番足引っ張るのは俺かな、なんて思ってたけど…クラウンドールって強い魔力持ってる家系じゃなかったか?」
「実際、姉はそうだよ。でも僕は魔術の才能は全くない。そのかわり…」
レオンはそこで1度言葉を区切ると、パチンと指を弾いた。すると、ひらひらとどこからか花びらが舞い降りてくる。周りを見るが、術式が展開された様子はない。
「魔法が使える。といっても、まだまだ扱いが下手だって師匠によく怒られるけど」
「………正直、なんで首席取ったやつが魔術科にって思ってたけど…こりゃ確かに少なくとも特魔科ではないわな」
「うん、特魔科は魔術に対する授業が多いからね。そんな訳で、魔術系の課題は迷惑しかかけないと思う」
「ハハ、堂々としてんなお前!やっぱり面白いよ!」
「元々迷惑しかかけん前提のやつがここにいるから大丈夫だろ。なぁ、リン?」
「うるせぇわい」
アルフレッドとリンの掛け合いにレオンは首を傾げる。そこでそうだ、と思い出したと言わんばかりにリンは説明しだした。
「こん中で魔術の扱いが上手いのはアルだけなんだよ。スピカはさっき言ったみたいにまだ魔術に慣れてない。俺はそもそも初歩の魔術、というより身体強化の魔術以外まるで使えねぇ」
「ご、ごめんなさい……」
「まぁオレもオレで人並みだけどな。あまり期待しないでくれ」
そこまで聞いたレオンは成程、と1人納得すると、自身の中で出たらしい答えを口に出した。
「つまり…魔術系の授業はほぼほぼ補習確定って感じかな」
「多分な!悪いが付き合ってくれよな!」
「それはもちろん」
あまりにも正直すぎる結論に、アルフレッドは再び大爆笑し、リンは笑いながらレオンの背をバシバシと叩く。スピカはオロオロしながら謝りだし、レオンは気にしてないと返す。そんな賑やかな交流は、授業の終わりのチャイムが鳴り響いても尚、続いていくのだった。
